2016年06月10日(金) 18:01
▲アンサンブルライフとともに挑み、結果は13着。自身35回目の挑戦となった東京ダービーに密着(写真:高橋正和)
的場文男騎手の35回目の東京ダービーが終わった。結果は13着。当初逃げるかと思われたアンサンブルライフ&的場騎手は、好位の内で折り合いを付けることに専念した。ここ2戦、前半から掛かっていたことを考えると、距離が2000mに延びる今回は馬の後ろに入れてリラックスさせることに重点を置いたのだろう。
しかし、3コーナー手前で的場騎手の手は動き出し、一気にペースが上がった4コーナーではついて行けなくなってしまった。直線を向いた時には、すでに最後方近くにまで下がっている。それでも、的場騎手は誰よりも豪快なフォームで追い続けた。「俺はまだ諦めていない」。レース前の的場騎手の言葉が聞こえるような、魂のこもった騎乗だった。
東京ダービー当日の大井競馬場は、普段以上の華やいだ雰囲気と、どんなドラマが見られるかというワクワク感に包まれていた。入場人員は13,475人。前半のレースから歓声が上がり、ダービーが近づくごとに興奮が増していった。
東京ダービーといえば、的場文男騎手。これはもう的場騎手本人だけではなく、ファンにとっても大きな大きな夢になっている。場内には的場騎手の勝負服を模したジャンパーを羽織っている方もいたし、「今年こそ…」「35回目の正直…」と、的場騎手の悲願達成を語り合う声も多かった。
パドックで的場騎手がアンサンブルライフに跨ると、「文男!」「がんばれ!」という声と共に拍手が送られた。パドックで拍手が起こるのを見たのは、生まれて初めての経験である。「的場騎手の東京ダービー制覇が見たい」。その気持ちが溢れたのだろう。
▲「文男!」「がんばれ!」パドックに登場すると多くの声援が飛んだ
勝ったのは3番人気のバルダッサーレ。JRAから移籍して来て、今回が南関東初戦の馬だった。この結果の受け止め方については、いろいろな意見があるのではないかと思う。南関東の頂点を目指して戦ってきた馬たちが、移籍初戦の馬に楽々と突き放されてしまったのだから。地方競馬を愛する者の一人として、わたし自身淋しい気持ちも感じている。
レース後的場騎手は、こんな話をしてくれた。
「レースに関しては、あれだけ負けてしまったので何も言えません。勝った馬は本当に強かった。関係者の皆さんには素直におめでとうございますと言いたいです。ただね、中央の500万条件を勝った馬が移籍初戦でアッサリ勝ってしまうというのは、本当にガッカリしました。もっともっと南関東のレベルを上げないと。フリオーソやボンネビルレコードのような馬たちがいれば、こんな風には使いに来れないですよ。もっとレベルを上げないと…」
35回目の東京ダービーは、ご自身のことよりも南関東全体に対する危機感の方が大きかったようだ。さすが大井の帝王。この負けをバネにして、これからも大きな夢を見せてくれるだろう。
■的場文男騎手の東京ダービーに完全密着
勝ったバルダッサーレは、本当に強いレースをした。前半は後方待機だったけれど、向正面で吉原寛人騎手が引っ張り切れないといった感じでグイグイ上がって行き、4コーナーでは馬なりでタービランスに並び、直線は7馬身もの差を付けて圧勝した。
「(先頭に立つのが)早いのはわかっていたけれど、手応えが違い過ぎました。まさかここまで強いとは…」。騎乗した吉原騎手も、管理する中道啓二調教師も驚くほどの強さだった。
▲南関移籍初戦で圧勝したバルダッサーレ。吉原寛人騎手は14年ハッピースプリント以来、二度目のダービー制覇となった(写真:高橋正和)
しかし、昇級初戦は上手く流れに乗れず8着に敗退。時期的にも、次のレースで勝たなければ東京ダービー出走は消滅する。そうして挑んだラストチャンス、11番人気の低評価を覆して勝利を掴んだ。
オーナーサイドのお話では、「勝った1時間後に登録を抹消して、NARに登録しました。ギリギリだったんですけど、南田厩舎の皆さんが快く送り出してくれたお蔭です。本当に感謝しています」ということだった。こうして無事に中道厩舎にやって来たバルダッサーレは、現在は厩務員としてがんばっている御神本訓史元騎手を背に追い切りを重ね、最高の状態で東京ダービーに出走した。
この後は馬の状態を見ながらになるが、当然『ジャパンダートダービー』を目指すことになるだろう。ダート転向から4戦3勝。まだまだ未知の強さを秘めているバルダッサーレ。JRAの強豪に対して、今度は地方代表として立ち向かう番だ。東京ダービーの続きは、7月13日『ジャパンダートダービー』へと舞台を移して争われる。
※次週は的場騎手ご本人に東京ダービーを振り返って頂きます。
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