2016年10月20日(木) 12:00
人間をどう見るかを問うとき、そこには性善説と性悪説がある。先人の多くは、伝統的に性善説が多く、それが日本を穏やかにしてくれてきた。性善説に立つと、お互いの信頼関係を大切にすることになるから、それがそうさせていて、理想を追い掛ける社会の長所として根づいてきたように思う。互いの長所をみつめる、そこから得られるものは容易に想像がつく。なんでも、互いのいいところを見るようにしていれば、そのうち、うれしいことが生まれてくるのだ。そう確信して競馬にチャレンジするのだが、こちらは一方的に相手を信頼するだけだから、そんなに簡単ではない。そのほとんどが希望的観測にすぎないのだから。
ところが、秋華賞を見て、少し考え方を一歩進めることができた。
勝ったヴィブロスを事前にどう見ていたかなのだが、確かに、毎年上位3着までに入る馬の半分近くは、いわゆる夏の上がり馬で占められているのが秋華賞というレースだが、500万を勝って紫苑S2着ならこの上がり馬に該当するとは言っても、中心馬に据えるだけの自信はなかった。
レース後の福永騎手のインタビューを聞いていて、どれだけこの馬の力を信頼していたかが伝わってきて、この勝利は、そこにこそ勝因があったのだと痛感させられた。ヴィブロスと福永騎手との信頼関係、そこにしっかり心を寄せていたらと、そう思えたのだ。
全姉ヴィルシーナは、三冠牝馬ジェンティルドンナの前に全て2着、中でも秋華賞はハナ差だった。その妹だったらと思うのは当然だが、春はクラシックにも乗れなかったのだからとちょっと躊躇する。ところが、福永騎手は前々走の500万で我慢させる競馬をして突き抜けて勝った中京戦から手綱を取り、前走の紫苑Sで大きな不利をこうむりながらも、素晴らしい瞬発力で2着まで押し上げた自信があったのだった。この自信が、ヴィブロスへの信頼を強め、それこそが勝因とみていいのだ。すでに素質開花の実感を得ていたのだから、そこに思いを寄せていい秋華賞であってよかったのだった。競馬も、性善説をベースにその人馬の理想の姿を描かなければならない。
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長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。
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