2017年02月02日(木) 12:00
◆大目標を手元に引き寄せるための強い思念
言いたくない事が誰にでもある。心の奥底に強い圧力をかけて、しまっておく。声に出せばたちまちに色褪せてしまう。それに人に伝えようとすれば、あまりにも平凡すぎて伝わってはいかないだろう。それによって自分が立つところのもの、それによって生かしめられているところのもの、誰にでもそうした思念はある。願望もその中に入る。こうしたい、こうなればと、誰の眼にふれずに存在するから、その思いは熾烈に燃える。これらが自分に係わりのないところで、しかもしっかり見えるかたちで確認できたら、別な意味で心が動く。この身では適わぬことが少しずつ適っていく、それが分かるのは格別ではないか。
大きな目標を前に、それに近づこうと戦う姿を見せてくれる競馬。一戦一戦、その実現に立ち向っていく馬を見ていくのは興趣がある。根岸ステークスで確実に一歩前進できたカフジテイクは前走のチャンピオンズCでは11番人気だった。この段階では、こうありたいの願望はまだひそかにだった。それまで6勝のうち5勝が1400米、チャンピオンズCの1800米という距離がどうかという懸念があったのだが、直線大外から鋭く追い込んで4着にまで伸びてきたことで、根岸ステークスでは1番人気になっていたのだ。東京の長い直線なら、あの末脚はさらに生きる。多くの願望は現実味をおびていた。めざすフェブラリーSに出るためには、勝たねばならない。
初めて手綱を取る福永騎手には、強い思念があった。いつもより前で戦いたい、それを実行することで、大目標を手元に引き寄せる。心の奥底に強い圧力をかけて、レース前はあまり口外しなかった。そしてレース、スタートが悪くいつもどおりの後方からの競馬になっていた。幸い持ち味を出せてきっちり差し切ったが、思いどおりではなかったと、その戦いぶりを振り返ったのだ。負担のかかる競馬だったので、本番ではその辺を矯正できたらと課題を明言したことで、自らの決意の固さを明きらかにしたのだ。湯窪調教師は「どうせ出遅れるだろうから」と笑いながらも、そう述べるだけ直線一気の再現に期待が大きいことを感じ取れた。東京は4戦3勝の関西馬、この馬にどう寄り添うか。
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長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。
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