2017年06月14日(水) 12:00
◆そうそうたる顔ぶれのタイトルホルダーたち
5日間の開催を通じて、エリザベス女王をはじめとした王族が連日ご臨席になる「ロイヤルアスコット」が、6月20日から24日まで王室所有のアスコット競馬場で開催される。
5日間で8つのG1を含む18の重賞競走が組まれており、見逃せないレースばかりなのだが、なかでもことさらに豪華な顔触れになりそうなのが、2日目(21日)のメイン競走として施行されるG1プリンスオヴウェールズS(芝10F)だ。
ブックメーカー各社が、3.5-4.33倍のオッズを掲げて1番人気に推しているのが、ユリシーズ(牡4、父ガリレオ)である。昨年秋、サンタアニタで行われたG1BCターフ(芝12F)に遠征し、ハイランドリールの4着になっている馬だから、ご記憶の片隅に留めておいでの皆様もおられると思うが、その名前を聞いて誰もが実績を思い出すような、ビッグネームではない。
デビューしたのは2歳の10月で、ニューバリーのメイドン(芝8F)で6着に終わると、この1戦のみで2歳シーズンを終了。3歳を迎えて2戦目、デビューから3戦目となったニューバリーのメイドン(芝10F)で初勝利を挙げると、続いて駒を進めたのが、3歳馬の最高峰となるG1英ダービー(芝12F10y)だった。すなわち、早い頃から関係者の間では非常に期待に高い馬だったのである。
というのもユリシーズは、07年のG1英オークス馬ライトシフトの3番仔という良血馬であった。英ダービーは大敗したものの、続いて駒を進めたグッドウッドのG3ゴードンS(芝12F)で重賞初制覇。続くG3ウィンターヒルS(芝9F194y)では古馬のチェインオヴィデイジーズに短頭差及ばず2着に終わったが、それでも当初の目論見通りに北米遠征を敢行し、前述したようにG1BCターフで入着を果たして3歳シーズンを終えた。
そのユリシーズが、今季初戦となった、4月28日にサンダウンで行われたG3ゴードンリチャーズS(芝9F209y)を快勝。いよいよ本格化を思わせる競馬を見せたため、並み居るG1勝ち馬たちを差しおいて、本命の座に就くことになったのである。ユリシーズがここも勝てば、欧州古馬路線にニュースター誕生ともなるわけで、彼が期待に応えるパフォーマンスを見せられるかどうかは、今季の欧州古馬路線を占う上でも、大きな焦点となっている。
彼がこのレースで敵に廻すのは、そうそうたる顔ぶれのタイトルホルダーたちだ。ブックメーカーが、4-5倍のオッズを掲げ、ユリシーズと横並びの1番人気か、2番人気に推しているのが、ジャックホブス(牡5、父ホーリング)である。G1愛ダービー(芝12F)に勝ち、G1英ダービーで2着になった3歳時から、管理するジョン・ゴスデン師が「古馬になれば、もっと良くなる」と言明していたのがジャックホブスだ。4歳時はケガでシーズンの半ばを棒に振ったが、5歳初戦となった前走、メイダンのG1ドバイシーマクラシック(芝2410m)を快勝。ゴスデン師の言葉が現実のものとなっていることを、全世界の競馬ファンが知るところとなった。
6-7倍のオッズで3番人気となっているのが、ジャックホブスと同じゴドルフィン所有のクロスオヴスターズ(牡4、父シーザスターズ)である。そして、同馬の母ストロベリーフレッジは、07年のG1英オークス馬ライトシフトの、1歳年下の全妹だから、牝系はユリシーズと同じなのがクロスオヴスターズなのだ。
2歳秋にはG1クリテリウムドサンクルー(芝2000m)2着、3歳夏にはG1パリ大賞(芝2400m)3着と、大魚を逃してきたが、この馬もユリシーズ同様に、4歳春を迎えて本格化。初戦のG3エクスビュリ賞(芝2000m)、続くG2アルクール賞(芝2000m)そして、5月1日にサンクルーで行われたG1ガネイ賞(芝2100m)をすべて白星で通過し、3連勝を飾るとともに念願のG1初制覇を達成したのである。ゴドルフィンが、2頭出しで臨むのか、どちらか1頭に絞ってくるのか、そのあたりを含めて、興味の対象となっている。
この他にも、3月にメイダンで行われたG1ジェベルハタ(芝1800m)、5月28日にカラで行われたG1タタソールズGC(芝10F110y)と、今季になって既にこの路線のG1を2勝しているデコレイテッドナイト(牡5、父ガリレオ)にも、出走の可能性がある。日本馬の参戦がないのがなんとも残念ではあるが、日本の競馬ファンにとっても絶対に見逃せない戦いとなりそうである。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。
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