週刊サラブレッド・レーシング・ポスト

2005年02月15日(火) 13:48

 今季の2歳トレーニングセール・サーキットの幕開けを飾る「OBSコールダーセール(2月8日・フロリダ州コールダー競馬場)は、総売上げこそ前年を2.3%下回ったものの、平均価格は前年比0.4%アップの136,890ドル、中間価格は前年比37.1%アップの120,000ドル、昨年33.7%だったバイバックレートが31.0%に下がるなど、きわめて堅調な結果に終わった。

 過去2年続けて100万ドルを超えていたこのセールにおける最高価格馬が、今年は60万ドル。高い方の価格帯がそれほど活況ではなく、それでも平均価格がほぼ前年並みというのは、1月にケンタッキーで開催されたキーンランド・ジャニュアリーときわめて近いマーケットの構造である。市場全体の需要は落ちていないので、高価格帯のプレイヤーたちが市場を離れたわけではなく、彼らがリスキーな投資をやめて、現実的な価格帯に降りてきていると見るのが妥当な分析ではないだろうか。

 その60万ドルという最高価格で購買されたのは、上場番号195番の父ダンスマスターの牡馬。先々週のこのコラムで御紹介した1回目の公開調教で、2ハロンの最速時計をマークした4頭のうちの1頭である。父は、今年の3歳世代が初年度産駒となる若手種牡馬で、現役時代は2歳G2のバシュフォードマナーSに勝利している。購買したのはニューヨークで投資コンサルタント会社を経営するジェフリー・パグリシ氏で、スティーヴ・クレサリス厩舎に入厩予定となっている。

 これまでに確認された、日本人によると見られる購買は2頭。1頭は、上場番号104番の父デラウェアタウンシップの牡馬。父はこの世代が初年度産駒となる新種牡馬で、現役時代は6fのG1フランク・デフランシス・ダッシュや、7fのG1フォアゴーHなどに勝っているスプリンター。直線強い向かい風が吹くという悪コンディションの中で行われた2回目の公開調教で、1ハロン=10秒6の最速時計をマークしている。

 もう1頭は、上場番号180番の父フォレストキャンプの牡馬。こちらの父も今年の2歳が初年度産駒となる新種牡馬で、現役時代は2歳重賞のデルマー・フューチュリティーに勝っている。1回目の公開調教で1ハロン=10秒4の好時計をマークし、即戦力であることをアピールしている。

 北米2歳セール・サーキットはこの後、3月1日にファシグティプトン・コールダーセール、3月15日にバレッツ・マーチセールと、複数の日本人購買者が出向くことが予想される市場が待ち受けている。

 中間の価格帯が強いというのは、販売側にとっては好ましい傾向だが、一方で近年この価格帯での購買が多い日本人にとっては、いささかしんどい市場構造である。今後の市場に日本人バイヤーがどんな戦略で臨むのか、じっくりと取材をしてきたいと思う。

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

新着コラム

コラムを探す