2017年09月08日(金) 18:00
◆歴史を変えるスケールは秘めているはず
昨年から重賞に昇格。本番の「秋華賞」を1着、2着したのはこの紫苑S出走馬だった。ただ、1着ヴィブロス(紫苑S2着)、2着パールコード(紫苑S5着)の快走によって紫苑Sがランクアップしたのはいいが、それが重賞になって賞金が約2倍になり、優先出走権が3着までとなって遠征してきた「関西馬」だったのは、ちょっと複雑。
いまどき関西馬も関東馬もないが、クイーンSの札幌への移設により、オープン特別として紫苑Sが組まれるようになったのは2000年からのこと。あれ以来もう18年、紫苑Sをステップに秋華賞に挑戦した馬の中から、秋華賞で連対できた関東馬は1頭も出現していないのである(3着は1頭いる)。
なぜか。理由ははっきりしている。関東所属馬が弱いというより、適鞍を求めてどんどん遠征競馬をしていないから、ここで権利を取って、「では秋華賞に行こう」となった関東馬は、昨年の勝ち馬ビッシュ(オークス3着)、3着フロンテアクイーン(オークス6着)が象徴するように、関西圏への遠征競馬が初めてとなるケースが多いからである。結果として、経験不足の軟弱な死角が露呈される。
関東馬は紫苑Sでよほど強いレースをしないと、権利をとったくらいでは、「紫苑S組の関東馬は、秋華賞では連対できない」。そういうデータをまた重ねることになりかねない。歴史を変えないといけない。
春は素質だけで連勝した印象のあるホウオウパフューム(父ハーツクライ)は、寒竹賞2000mを、前半のペースがほとんど同じだった翌週の「京成杯」より、1秒0も速いタイムで楽勝している。だが、まだひよわさがありすぎたのと、大事にオークスに的を絞った作戦が裏目。あの時期の若い牝馬なので、予定の体調に持っていけなかった。フローラS→オークスは調子下降だったろう。巻き返したい。
秋になって体は大幅に良くなり、もうひよわくない。ここで秋華賞の優先権を確保し、初の「紫苑S→秋華賞」のステップを成功させる秋の変身を期待したい。そのくらいのスケールは秘めているはずである。
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柏木集保
1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。
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