2017年09月27日(水) 18:00
現在、日高育成牧場には、ホームブレッド馬を含め55頭の1歳馬が入厩している。北翔は父バゴ、母ゴートゥザノースの牡馬なので、牝馬に先立ち、いち早く調教が開始され、9月下旬の段階ですでに騎乗訓練を難なくこなすところまで来ている。
「鞍付けやドライビング、ロンジングなど、基礎的な調教を十分やって、現在は屋内馬場でダグ、軽いキャンターという進度です。問題なく順調に来ていますよ」とのこと。
先に牡馬の馴致を実施し、牝馬は来月初めから開始される。牡馬の馴致が始まるのと同時に、BTC育成調教技術者養成研修に在籍する35期生の半数9名が、ここに実地研修に来ており、連日職員に指導されながら、未調教の1歳馬の馴致を学んでいる。
「研修でいつも乗っている乗馬とは、まるで違うんで、何から何までとても勉強になります」と研修生の1人は語る。「調教していない馬にいろいろなことをじっくり教えて行き、馬が少しずつ成長していく姿が見られるのは得難い経験だと思います。こういう実習を通じて研修生も同じように成長してもらえたら良いですね」とちょうど見学に来ていたBTCの教官が話していた。
北翔は、この日2鞍目の調教であった。上2頭の姉たちも担当していた同じ静内農高出身のAさんが、北翔を担当している。馬房で鞍をつけ、まず、ロンギ場へ。そこで入念にロンジングを繰り返し、うっすらと汗をかかせた後、騎乗して覆馬場に向かう。そして右回り左回りと覆馬場をダグで周回し、僚馬とともに通路を進んで1周800mの屋内馬場に移動する。
まだ速度は出さずに、あくまで馬とのコンタクトを取ることに重点が置かれている。北翔が時々、咳をするのが聞こえてきた。すかさず、「この馬、後で内視鏡入れてみようか」と調教を見守る責任者から騎乗するAさんに声がかかる。場長以下、日高育成牧場は獣医師が揃っているので、診療体制は万全である。
今のところBTC研修生には、ロンジングやドライビングの実習はさせても、騎乗はさせていないとのことであった。しかし、馬が従順でコンディションが良ければ、という条件付きで、この日は初めて、研修生の岩田創君に騎乗する機会が訪れた。馬はセイウンクノイチの2016。父キングズベストの牡馬で、セイウンワンダーの半弟である。他の牡馬に交じって岩田君が騎乗し、800m馬場を1周してきた。初めての経験に岩田君はやや緊張の面持ちだったが、こうして少しずつ研修生にも騎乗させて、経験を積ませる方針だという。
北翔は、屋内馬場での調教の後、ゲートを通過する調教も行なった。騎乗訓練と並行して、調教の前後にゲートをくぐらせるのも大切なメニューである。ゲート幅は4段階あり、最初は広いところから始まって徐々に狭いゲートに進んで行く。最後は、前後の扉を閉めて、中で駐立できるようになるまで繰り返される。
さて、北翔の全姉ハヤブサカノンは、6月にデビューしてから3ヶ月休み、9月18日の中山で芝2000mの未勝利戦に出走し、11頭立て6着と健闘した。鞍上は大井の御神本訓史騎手。最後方から直線よく伸びて、もう少しで掲示板という惜しいレースであった。重馬場ながら優勝したプロトスターとほぼ同じく上がり3ハロンを35秒5で走破しており、勝ち馬とは0.7秒差である。さすがに中央場所の芝2000mとなると、来春のクラシックを目指すような期待馬も出てくるので厳しいメンバーになるが、いずれどこかで勝ち上がれそうな予感がある。
「何とかこの北翔も、早めにデビューしてくれて、札幌あたりで出走してくれるようになると、地元だけに競馬場も盛り上がると思いますよ」と平賀敦場長も期待している。
まずは来春のブリーズアップセールに向け、このまま順調に調教が進んでくれることを願うばかりである。
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田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。
プロフィール
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