待ちに待った重賞初制覇

2018年02月13日(火) 18:00


◆信頼関係によって達成された“大あっぱれ”な記録

 地方競馬の重賞は、交流レースで他地区からの遠征馬が多数というような場合でもない限り、力関係がはっきりしていることが多く、予想が難しいということはあまりないのだが(だからといって馬券が当るかどうかはまた別)、2月8日の園田ウインターCは地元限定重賞にもかかわらず、ものすごく予想に悩んだレースだった。

 悩んだ理由は、実績上位馬同士が近走で勝ったり負けたりだったから。本命にしたハタノキセキは3番人気で、向正面からまくってきて4コーナー手前で先頭に並んだときは、よしよし、と思ったのだが、そこから抜け出したのは、えっ!と思うような馬だった。

 勝ったのは、単勝59倍の9番人気、ドリームコンサートだった。

 たしかに2016年10月以来勝ち星から遠ざかっているので、その人気も当然といえば当然なのだが、勝たれてしまえば、なるほどというところもある。

 ドリームコンサートは、2015年末に中央準オープンから転入し、2戦目のJpnIII兵庫ゴールドトロフィーで4着と好走を見せた。昨年のこのレースがトウケイタイガーの2着で、それも含めて名古屋や金沢に遠征しての1400m戦の重賞で2着が計4回。いずれどこかで重賞を勝つだろうと思われていた馬だったのだが、忘れ去られようかという9歳になっての重賞初制覇となった。

 園田競馬場のレースでは1400m戦が圧倒的に多く組まれているのだが、なぜか古馬重賞はJpnIIIの兵庫ゴールドトロフィー以外、2005年に重賞格上げとなった園田チャレンジC(姫路開催の場合は姫路チャレンジC)しかなく、それゆえ1400m戦を得意とするオープンクラスの古馬は、名古屋や笠松に遠征するケースがよく見られる。そうした状況で昨年1400mの園田ウインターCが新設された。結果的には、ドリームコンサートのために用意された舞台だったともいえる。

「いずれどこかで重賞を勝つだろうと思われていた馬だった」と書いたが、それ以上に、このドリームコンサートで、いつか重賞を勝つだろうと思われていたのが、管理する柏原誠路調教師だった。

 柏原調教師は2003年12月が厩舎としての初出走で、年度でいえば現在15年目、暦年でいえば今年で足掛け16年での、待ちに待った初めての重賞タイトル。2013年には兵庫の調教師リーディングとなったのみならず、2011、13、15年にはNARグランプリの最優秀勝率調教師賞も受賞している。

 レースはスカパー!の中継で見ていたのだが、重賞の表彰式では、普段は勝利ジョッキーインタビューしかやらないところ、騎手の前に柏原調教師のインタビューもやってくれた竹之上アナウンサーも“あっぱれ”だった。柏原調教師は、「勝ってからだんだん緊張してきました。みなさんから、おめでとうと言われて、嬉しさも倍、最高です」と、恥ずかしそうに答えていた。

ドリームコンサート

重賞初制覇となったドリームコンサートと、柏原誠路調教師(左から2人目)/写真:兵庫県競馬組合

 調教師にとっても、馬にとっても“大あっぱれ”なわけだが、勝利に導いたのは58歳の川原正一騎手。年齢では大井の的場文男騎手が61歳の今年、佐々木竹見さんの日本記録を間もなく超えようかということで注目されているが、58歳の川原騎手の活躍も素晴らしい。2013年には267勝を挙げて地方全国リーティングを獲得。137勝を挙げた昨年も兵庫リーディングは4位。JpnIIIのかきつばた記念(トウケイタイガー)や兵庫ダービー(ブレイヴコール)など重賞5勝という活躍もスゴイとしか言いようがない。

 ちなみに昨年、柏原調教師が挙げた56勝のうち、じつに42勝が川原騎手だった。そうした信頼関係によって達成された、さまざまに“あっぱれ”な重賞初勝利の記録だった。

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

関連情報

新着コラム

コラムを探す