【石橋脩×藤岡佑介】第2回『コズミックフォースでダービー3着! 勝負の決め手は1コーナーにあり』

2018年06月27日(水) 18:01

with 佑

▲コズミックフォースでダービー3着!NHKマイルCとダービーの回顧をお届け

1期上の先輩・石橋脩騎手との対談。先週の桜花賞・オークス回顧に続き、今週はNHKマイルCとダービーの回顧をお届けします。意外にもダービー初騎乗だった石橋騎手。しかし、16番人気のコズミックフォースで3着に食い込む健闘。好走の要因は、短距離のGIよりも激しいという1コーナーのポジション争いを制したことだと言います。気迫あふれるレースを、騎手目線で振り返ります。 (取材・構成:不破由妃子)


「30年以上生きてきて、あの共同通信杯ほど緊張したことはない」

──桜花賞では、好位の内と外を並走するような形だったおふたりですが、NHKマイルCでも一番近い位置で競馬をしていましたよね。

佑介 自分が最後方かと思っていたら、道中でまだ後ろにいることに気付いてビックリしたんですけど、それが脩ちゃん(デルタバローズ9着)だった(笑)。

石橋 ケイアイノーテックはもう少し前で競馬をすると思っていたから、「ここからどうするのかなぁ…」と思いながら真後ろでずっと見てたよ。

佑介 脩ちゃんは予定通りの最後方?

石橋 デルタバローズはけっこう折り合いの難しい馬で、競馬の前のテンションも高くてね。掛かるのをなだめながら我慢させていくだけでは勝てないと思ったから、一発を狙って最初から折り合いを重視して直線勝負のつもりでいた。そしたら前に藤岡がいるからさ。「大丈夫か!?」と思ったよ。ケイアイは有力だと思っていたから。

佑介 人気はあまりなかったですけど、ジョッキーはみんな走ると思っていたと思いますよ。僕も騎乗依頼がくる前から「今年のNHKマイルCはケイアイノーテックが勝つかもな」と思っていたくらいですから。

石橋 それにしても、あの位置からになったというのに全然焦ってなかったよね。道中ジッとしていることも勇気がいることで、経験が少ないジョッキーだったら動いてしまったかもしれない。落ち着いてるなぁと思いながら見ていたら、直線に向いてグーッと上がっていったもんね。僕は僕で必死だったけど、全然追いつけなかった。でもホント、よかったよ。藤岡がGIを勝ててさ。

with 佑

▲「藤岡がGIを勝ててよかったよ」石橋騎手も喜んだ佑介騎手のGI制覇 (撮影:下野雄規)

佑介 ありがとうございます! 脩ちゃんはダービーでも見せ場十分でしたよね。初騎乗というのが意外でしたけど。

石橋 エタリオウ(石橋騎手で青葉賞2着)がボウマンになった時点で、今年も乗れないのか…と思ったんだけど、そのあとすぐにコズミックフォースに乗せてもらえると聞いてね。

佑介 ダービーに乗れるとわかって、さすがの脩ちゃんも興奮したんじゃないですか?

石橋 ものすごくうれしかったけど、興奮したかといえば別に…(苦笑)。

佑介 そうなんですね(笑)。レースでいえば、1コーナーから興奮しましたよ。脩ちゃんはけっこう難しい角度で1コーナーに入っていったから、すごいなと思って。

石橋 1コーナーのポジション争いは勝負どころだと思っていたので。もし引いていたら、見せ場もなにもなかったと思う。

with 佑

▲勝ち馬ワグネリアンに食らいつくコズミックフォース(青帽) (撮影:下野雄規)

佑介 ダービーの1コーナーのポジション争いは、短距離のGIより激しいですからね。みんな取りたいポジションが一緒だから、一瞬でも躊躇しようものなら一気に形勢が不利になる。あのポジション争いは毎年スレスレですよ、ホントに。今年でいえば、民放の中継で「うわぁ〜!!!!」っていうジョッキーの叫び声が入ってました(笑)。脩ちゃんは、それくらいのポジション争いを制したわけで。

石橋 僕はただひたすら取りたいポジションを取りにいっただけなんだけどね。祐一さんは、僕が下がってくると予想していたと思うんだけど、結果的にそうはならなかったから、最後までコズミックフォースがいい壁になってたかな。そもそも最初は(内から)2列目に入れたんだけど、ここにいて外から被せられたら何もできないなと思って、自分で動いていけるように向正面で外目に出したら……

佑介 その後ろに祐一さんが収まったと。

石橋 そうだね。

佑介 たしかに後ろから見ている立場だと、コズミックフォースがあんなに伸びていくとは思わないかも。僕だったら、下がってきたところを内からさばいていこうと考えるかもしれません。

石橋 うん。誰もがそう思っていたと思うよ。

佑介 だから、祐一さんにしてみれば、思った以上にコズミックフォースが引っ張っていってくれたのは、うれしい誤算だったのかもしれませんね。そのおかげで、ギリギリまで脚をタメられたでしょうし。逆に(池添)謙くんにとっては、本当の意味で誤算だった。脩ちゃんが下がってきたところを、内から抜け出そうと思っていたはずですからね。

石橋 そうだろうね。

佑介 直線はさすがに興奮しましたよね? 勝負が決したあとにジリジリ伸びて……っていう3着じゃないですから。

石橋 うん。というより、「これ……もしかして勝っちゃう!? いいの!?」みたいな(笑)。結果的には負けたけど、ホントにエポカドーロはかわせる手応えだったからね。こんなチャンスはもうないかもしれないと思って死ぬ気で追ったよ。

with 佑

▲「こんなチャンスはもうないかもしれないと思って死ぬ気で追ったよ」

佑介 「気迫は必ず馬に伝わる」というのが脩ちゃんのモットーですもんね。

石橋 生き物だからね。それが正解かどうかはわからないけど、やっぱり最後は気持ちなんじゃないかと思っていつも必死に追っているよ。僕の気持ちが伝わったかどうかはともかく、コズミックフォースはよく頑張った。うん、本当によく頑張った。でも、エタリオウも走るねぇ。あの馬は中身がいい。

佑介 大化けしそうな雰囲気がありますよね。僕にとってもそうですけど、今年の春は脩ちゃんにとっても特別なシーズンになりましたね。

石橋 そうだね。ダービーに乗れたこともそうだけど、ラッキーライラックのような有力馬でクラシックを目指したことなんてなかったから……いや、一度あったな(苦笑)。

佑介 ありましたね。2015年のドゥラメンテ。

石橋 でも、GIが始まる前に失敗してしまって…。30年以上生きてきて、あの共同通信杯(2着)ほど緊張したことはないよ。子供の頃から緊張で眠れないなんてことは一切なかったのに、あの共同通信杯の前の日は眠れなかった。

佑介 それはやっぱり、負けられないというプレッシャーから?

石橋 ん〜、どうなんだろう。とにかく、とてつもない馬だと感じていたからね。少々のアクシデントがあっても勝てるとは思っていたんだけど、ゲートにしても返し馬にしても、とにかくいろんな心配要素があった馬で…。騎手になってから、そこまで緊張することなんてなかったんだけど、あのときだけはちょっとおかしかった。その結果が2着。悔やんでも悔やみきれない結果になってしまった。

with 佑

▲この年のダービー馬となったドゥラメンテ、共同通信杯の後にデムーロ騎手に乗り替わりに (撮影:下野雄規)

佑介 もう怖いものはないですね。

石橋 うん。あの緊張を超えることなんてそうそうないから。だから、この春ももちろん緊張感はあったけど、ガチガチになってしまうとかそういうのはなかった。ドゥラメンテで味わったあの緊張と失敗があったことで、気持ち的には余裕を持って臨めたのかもしれない。とはいえ、勝負の世界だから、完璧な競馬をしようと見せ場を作ろうと、1着しか意味がないと僕は思うので。そこはもう悔しさしかないね。

(文中敬称略、次回へつづく)

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

バックナンバーを見る

質問募集

このコラムでは、ユーザーからの質問を募集しております。
あなたからコラムニストへの「ぜひ聞きたい!」という質問をお待ちしております。

「with 佑」とは

JRAジョッキーの藤岡佑介がホスト役となり、騎手仲間や調教師、厩舎スタッフなど、ホースマンの本音に斬り込む対談企画。関係者からの人望も厚い藤岡佑介が、毎月ゲストの素顔や新たな一面をグイグイ引き出し、“ここでしか読めない”深い競馬トークを繰り広げます。

藤岡佑介

1986年3月17日、滋賀県生まれ。父・健一はJRAの調教師、弟・康太もJRAジョッキーという競馬一家。2004年にデビュー。同期は川田将雅、吉田隼人、津村明秀ら。同年に35勝を挙げJRA賞最多勝利新人騎手を獲得。2005年、アズマサンダースで京都牝馬Sを勝利し重賞初制覇。2013年の長期フランス遠征で、海外初勝利をマーク。2018年には、ケイアイノーテックでNHKマイルCに勝利。GI初制覇を飾った。

関連情報

新着コラム

コラムを探す