2018年10月25日(木) 12:00
今週の天皇賞・秋は素晴らしいメンバーが揃った。ワグネリアンが回避し、レイデオロ、マカヒキとの「3世代ダービー馬対決」が流れたとはいえ、見応えのあるレースになるだろう。
3歳春にタフな東京芝2400mでガチンコ勝負をするのは若駒にとって相当厳しい。ゆえに、かつては古馬になっても競走生活をつづけるダービー馬はあまり多くなく、つづけたとしてもピークを保つのは難しい、というイメージがあった。
1990年代は、90年アイネスフウジン、92年ミホノブルボン、95年タヤスツヨシ、96年フサイチコンコルド、97年サニーブライアン、99年アドマイヤベガと6頭のダービー馬が3歳時のレースを最後に引退している。
2000年代は02年タニノギムレット、04年キングカメハメハの2頭。ところが、2010年代は12年のディープブリランテのみ。調教技術と施設、獣医学の進歩によるところが大きいのか、古馬になっても存在感を見せるダービー馬が多くなっている。
それでも、3頭のダービー馬が同じレースに出るのは難しく、2008年のジャパンカップにディープスカイ(2着)、ウオッカ(3着)、メイショウサムソン(6着)が揃ったのが史上初。それと、昨年のジャパンカップにレイデオロ(2着)、マカヒキ(4着)、ワンアンドオンリー(16着)が出た例があるだけだ。
これら2つのジャパンカップで、3頭のダービー馬は馬齢の若い順にゴールし、08年はスクリーンヒーロー、昨年はシュヴァルグランと、ダービーに出走しなかった馬が勝っている。
今年のジャパンカップか有馬記念で、ワグネリアン、レイデオロ、マカヒキの3頭の対決は見られるだろうか。アーモンドアイが出てきた場合、クリストフ・ルメール騎手がレイデオロとどちらに乗るのかといった問題もあって難しいかもしれないが、実現してほしいものだ。
先週、新潟の北陸ステークスでモズワッショイに騎乗し、1年ぶりのメインレース勝利を挙げた藤田菜七子騎手がGIで騎乗馬を得られるかどうかも、この秋の大きな関心事になっている。
北陸ステークスでJRA通算40勝目。自らの歩みがそのままJRA女性騎手最多勝記録の更新となっている。当然、プレッシャーもあるだろうが、足踏みしないのだから、たいしたものだ。「優駿」でインタビューした記事のタイトルは「2年半分の経験値」だった。もうすぐ「石の上にも三年」だ。 自身が騎乗して2勝した3歳牝馬マルーンエンブレムについて話したときの表情や言葉は、アメリカで成功したジュリー・クローン元騎手や、先日のWASJで来日したニュージーランドのサマンサ・コレット騎手に印象が重なった、と言っても褒めすぎではないと思う。
彼女の重賞初騎乗はJRAデビュー16日目、2016年3月20日のスプリングステークス(モウカッテル、9着)だった。そのときはまだ地方でもJRAでも勝ち鞍を挙げていなかった。ちなみに、地方での初勝利は16年3月24日に浦和競馬場で、JRA初勝利は4月10日に福島でマークしている。
その伝で言うなら、重賞勝ちがないうちにGI騎乗のオファーが来たとしても、何ら不思議ではない。
騎乗が決まれば、また大変なニュースになるだろう。
来週木曜日、11月1日には東京・新橋のGate J.で、グリーンチャンネル「草野仁のGate J.+(プラス)」の公開収録が行われ、藤田騎手がゲストとして出演する。昨年出演したときもすごいフィーバーぶりで、すぐに入場整理券がなくなってしまった。今年も同様だろう。
いつも話が長くなってしまうので、今回はこのくらいにしておきたい。
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島田明宏
作家。1964年札幌生まれ。Number、優駿、うまレターほかに寄稿。著書に『誰も書かなかった武豊 決断』『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』(2011年度JRA賞馬事文化賞受賞作)など多数。netkeiba初出の小説『絆〜走れ奇跡の子馬〜』が2017年にドラマ化された。最新刊は競馬ミステリーシリーズ第6弾『ブリーダーズ・ロマン』。プロフィールイラストはよしだみほ画伯。バナーのポートレート撮影は桂伸也カメラマン。 関連サイト:島田明宏Web事務所
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