印象的な好騎乗も光り、新たな一面をみせたケイティブレイブ/JBCクラシック

2018年11月05日(月) 18:00

これで12月のチャンピオンズCがますます楽しみに

 初めて京都で行われたJBCシリーズ3重賞(JpnI)は、それぞれ見ごたえ十分、迫力があった。乾いたコンディションのため、京都のダートとしてはそう高速ではなく、さらにはどのレースも厳しい流れになったため、3重賞ともに最後のIハロンは「13秒台」。レベルの高いダートの激戦には大波乱はないとされるが、3つのJpnIはレース順に「4、1、5」「3、2、1」「6、1、5」番人気の決着だった。

 メインのクラシック1900mの中身は、「前半1000m約61秒0-(5秒7)-上がり49秒9-38秒1-13秒2」=1分56秒7。通過ラップと、みんなの脚さばきが鈍った最終1ハロンを調整して1800mにすると、だいたい「1分50秒0」前後だろう。

 勝った5歳ケイティブレイブ(父アドマイヤマックス)は、福永祐一騎手(41)の落ち着いた騎乗がとくに印象的だった。最終コーナーをいつもとは違う4〜5番手で回ってきたのに、1頭だけ自信満々の手ごたえだった。

 中間の好気配も光っていたが、一段とたくましさを増した馬体はデビュー以来最高馬体重の「518キロ」。ここまで制した重賞8つはすべて交流レース(公営競馬場)であり、うち5つが2000m以上というのが死角だったが、鍛えられ筋肉モリモリになった身体は、見方によってはマイラー体型に近くなっていた。現在はJRAの競馬場で行われる、高いスピード能力も必要なレースに対する不安なしの身体つきに変化している。

重賞レース回顧

一段とたくましさを増した馬体で堂々の完勝

 先行して粘り込むだけではなく、追い込んで勝った帝王賞が示すように、鞍上も陣営も、ケイティブレイブの本格化は、戦法の幅につながると考えていたのだろう。

 父アドマイヤマックスも、さらには牝系ファミリーの代表馬のほとんどがスピードタイプであり、なおかつみんなタフな遅咲き型だったことを考え合わせると、ケイティブレイブは先行力を生かして2000m以上の重賞で5勝もしているが、それにはレベルも関係する。本当は1800m前後がもっとも合っているのではないか、とする見方に賛成したい。

 そう考えると、3歳ルヴァンスレーヴ(父シンボリクリスエス)や、古馬チャンピオン=ゴールドドリーム(父ゴールドアリュール。フェブラリーS、チャンピオンズCを含めGI格4勝)が連覇を狙っている12月のチャンピオンズC(中京ダート1800m)は、有力馬がまた増えたのではないかの楽しみがでてきた。

 芝1200mの高松宮記念を制した父アドマイヤマックスから、どうしてケイティブレイブのような馬が出現するのか。たぶん関係ないが、この種牡馬の母方には、種牡馬デターミンを通して伝説のシービスケットの半妹ブラウンビスケットが登場する。

 抜け出した5歳ケイティブレイブには完敗でも、3歳オメガパフューム(父スウェプトオーヴァーボード)はまた一段と強くなっている。前回のシリウスSは走りやすい締まった馬場と、軽ハンデ53キロが有利だったが、今度は定量で、上がり35秒台になるような軽い馬場ではなかった。

 今年1月にデビューして、ダート戦だけに的を絞って【4-2-1-0】。もっとも差があった7月のJDDでも、勝ったルヴァンスレーヴとわずか0秒3差だけで一度も崩れていない。スウェプトオーヴァーボード産駒の多くは短距離型に出るが、大きく幅を広げるエンドスウィープ(その父フォーティナイナー)系らしく、芝の長距離で快走するリッジマンと同様、父の評価を格段に高めている。この馬も12月のチャンピオンズCの候補となった。

 C.ルメール騎手とあって当日1番人気に躍り出た4歳サンライズソア(父シンボリクリスエス)は、内枠で揉まれるのを嫌い、譲らずにハナへ。前半1000m通過61秒0はハイペースというほどではないが、テーオーエナジー(父カネヒキリ)と、途中からちょっとかかったテイエムジンソク(父クロフネ)に接近され、数字以上にきびしい展開だった。直前にまたGI格を勝ったルメール騎手なので、いつも以上にマークもきつかった。ゴール寸前、13秒2の1ハロンで鈍ったのは仕方がない。外枠なら、好位の外で伏兵に行かせたかもしれないが、内で揉まれると大敗もある馬だけに、この3着はやむをえないだろう。

 ノンコノユメ(父トワイニング)、8歳馬ながら元気いっぱいだったサウンドトゥルー(父フレンチデピュティ)は、上がりのかかった流れは不利ではなかったが、広い京都のダートは見た目と違い最後の直線は329mしかない。追い込み一手型には苦しかった。

 アポロケンタッキー(父ラングフール)は、プラス16キロで自己最高に近い574キロ。見映えのする素晴らしい馬体だが、あまりに良く見えすぎたあたり、逆にちょっと余裕残りの馬体だったかもしれない。テイエムジンソクはスランプを脱し、体調は良くなってきたが、それが逆に気負いとなってしまった。

 クラシックの上位6着までの年齢は「5歳、3歳、4歳、6歳、8歳、7歳」。ダートのエース級は、ますます最初からダート専門の馬が多くなった現在、年齢うんぬんは関係なかった。ただ、JBCスプリント1200mは8歳馬が1着、3着。粘って2着のマテラスカイ以外、なんと上位8着まで「6〜8歳馬」ばかりだった。今回のような猛烈なハイペースになると、スタミナ勝負、総合力決着では苦しくとも、短距離ならタフに生き抜いてきたベテランが必死にがんばれるのかもしれない。

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柏木集保

1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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