2018年11月14日(水) 18:00
先週に引き続き、11月1日(木)に行なわれた「第45回北海道2歳優駿」の誤審について触れたい。
すでに各報道にあるように、誤審の事実が発覚したのは、当該レースの確定10分後のことであったという。かなりの接戦であったことは確かで、ゴールした瞬間はどちらが先着しているのか全く判断ができないくらいの激戦であった。
通常は、ここから決勝審判員がモニター上に映し出された電子スリットで「着順判定」を行ない、合議(ホッカイドウ競馬は男女2人体制でこの業務を行っていた)して「確認」した後「確定」を出す、という流れである。
交流重賞でもあり、判定に長い時間を浪費してしまうのは避けたい、というような焦りがあったのだろうか。大接戦にもかかわらず、確定が出たのは割に早かった。
レース後、引き上げてきたイグナシオドーロの阿部龍騎手とウィンターフェルの井上俊彦騎手が、ためらうことなくそれぞれ1着と2着の枠に入り、馬装を解いたのは前回記した通り。騎乗していた阿部龍騎手やレースを見守っていた角川秀樹調教師などは、半信半疑ながらも「先着しているはず」との思いがあったに相違ない。
馬装を解いた2頭は、そのまま枠から出て、少しの間、一緒に輪になり歩き回って結果を待っていた。すると、ほどなく1着ウィンターフェル、2着イグナシオドーロと結果が発表され、後はウイナーズサークルに移動して口取り、勝利騎手インタビュー、表彰式、関係者による記念撮影といういつもの流れでスケジュールが進んだ。
誤審が判明したのは、表彰式が始まって、おそらく井上騎手のインタビューが行なわれている頃であろう。決勝写真をHP上にアップするべく、その準備を進めている段階で、改めて審判員がその写真を見直し気がついた、というのが主催者側の説明である。
おそらく、誤審であることが判明した瞬間に、業務エリアに居合わせた全員が顔面蒼白になったことと思われる。だが、後日、公開された決勝写真を見ても、これがなぜ誤審を招いてしまったのかと不思議に思えた。
決勝審判員は「1、2着馬の形容が似ていて、顔が重なって見え、錯覚した」と弁明したらしいが、手前のウィンターフェルと、内側のイグナシオドーロでは、そもそも頭部に着けている馬具の色がまるで違う。ウィンターフェルは派手な黄色で統一されており、イグナシオドーロの方は青色である。着順を決める際、この違いを頭に入れながら、鼻先の出ている方がどちらであるかを判断すれば、何ら難しい判定にはならない、ように思えてならない。
一見、騎乗する両騎手の比較だけならば、井上騎手の方が全体的に前に行っている体勢だが、ばんえい競馬(曳く橇の後部で着順判定する)でもあるまいし、騎手や馬の臀部の前後関係などはどうでも良いことだ。あくまで、鼻先の先着している方が勝ちに決まっている。
酷な言い方だが、これは取り返しようのない大チョンボで、しかも、誤審発覚後、正式発表までかなりの時間を要する二重の失態となった。
主催者が誤審であると正式に認めたのは翌日になってから。そして記者会見を開いたのは午後4時のことだ。
未確認情報だが、レース後、結果に納得できないイグナシオドーロ陣営が、決勝写真の開示を主催者に求めたものの、申し出を却下された、などという話も聞こえてきた。まさか、着順を取り違えたままで押し通そうとしたわけでもあるまいが、この「塩対応」にも大いなる疑問符がつく。
レース直後から、SNS上では結果を疑問視する書き込みが相次いだという。翌日になって開かれた記者会見で、主催者は、「正しい着順による配当金も支払う方向で対応したい」とし、また本場や場外にて現金で購入したファンには、発売機の電磁記録と本人からの申告を照合して払い戻しに応じる、と表明している。
それでも漏れてしまうケースは出てくるだろうが、ひとまず馬券購入者にはこのように対応することで幕引きしたいというところであろう。
しかし、その後、明日でちょうど2週間が経過するものの、主催者HPと、地全協HP上のレース結果が、ウィンターフェル1着、イグナシオドーロ2着と正しい着順に訂正されないままになっている。交流重賞であり、高額な賞金なので、両陣営にとって「公式成績」は、今後のローテーションにも影響する大問題になる。
明日はホッカイドウ競馬の最終日である。もう一度、経過報告や今後の方針などについての会見を開くべきだと思うのだが。
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田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。
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