20回の節目を迎えて

2005年08月09日(火) 19:01

 短い北海道の夏は、各地で様々な祭典が行われる。それもほぼ7月下旬から8月上旬のほぼ2〜3週間に集中しており、それぞれが集客に苦労することになる。

 我が浦河町の場合、8月の第1土日に「シンザンフェスティバル」、そしてお盆に「浦河港祭り」が実施されていて、わずか2週間足らずの間に2つの異なるイベントが行われる「過密スケジュール」になっている。田舎町のことゆえ、両方に関係する人もたくさんいて、8月前半から半ばにかけては仕事にならないとのぼやきを聞かされるほどだ。

 さて、8月6日、7日の土日にわたり、優駿ビレッジ「アエル」に隣接する特設会場にて「第20回シンザンフェスティバル」が開催された。ようやくここ日高も気温が急上昇し、とりわけ6日土曜日には会場付近でも摂氏30度に達するほど。好天に恵まれ、2日間とも多くの来場者で賑わった。

 初日は前夜祭で、午後6時よりスタート。近隣牧場に配慮し、騒音をできるだけ出さないようにと、花火もバンド演奏も自粛しての静かな前夜祭である。この日のメーンは恒例の「馬上結婚式」。以前、この欄でもカップルを募集したことがあるが、これはその名の通り、「馬車で入場し会場に集まった観客に結婚を祝福してもらう」儀式で、今年は東京と横浜の2組が当選し、結婚式を挙げた。

 それに先立って、毎年地元で選出する「ミスシンザン」2人の発表も行われた。任期は1年間。地元浦河町在住もしくは勤務している未婚女性であることが条件で、前任者から舞台上で引継ぎがあり、これから来年夏まで町内のさまざまなイベントに借り出されることになる。だが、もっとも大きな仕事は来年1月に京都競馬場で行われる「シンザン記念」の表彰式にプレゼンターとして参加することである。できることならば写真で紹介したかったのだが、今年の2人は、ともに身長が170ほどで、スタイルがいい。西日本にお住まいの方は、競馬場で直接ご覧になるか、テレビ中継(生出演するはずなので)に注目していて頂きたい。(まだ5ヶ月も先のことだけれど)

 特設会場にはビールケースと板が並べられ、観客は焼肉パーティーにいそしむ。肉はジンギスカン。本州方面でもこのところ羊肉のジンギスカンが流行しているらしいが、北海道で焼肉といえば昔はだいたいこれだった。価格が安く、手軽に入手できることから今でも根強い人気がある。

 観客は、あらかじめ「パーティー券」を購入しておく。当日会場を訪れて、券を係員に提示すると、炭火入りのコンロと鉄板、肉と野菜、割り箸、食器などをセットで用意してくれる仕組みである。好天に恵まれたせいか、今年は例年より来場者が多く、当日券が売り切れるほどの人気となった。肉2人前プラス野菜、ビール3杯で2000円。町内の大手牧場の中には、毎年ここで「懇親会」を行うところもあり、騎乗者として日本にやってきている外国人の姿をたくさん見かける。

 ところで、今年は浦河にあるJRA日高育成牧場が開場40周年にあたることから、フェスティバル会場に歴代の場長が一堂に会し、地元の牧場関係者などと旧交を温めた。

 とりわけ、このシンザンフェスティバルでは、JRAとの関わりを抜きには考えられない。昨年同様、今年も「アンダルシアン、ポニー演技」を東京・馬事公苑より招聘し、翌7日に披露していただいた。地元の人たちは、競馬には通じていても馬の曲芸は普段見る機会がなく、会場に集まった多くの観客の目を楽しませることができた。

 どこのイベントにもあるような、キャラクターショー(今年は、魔法戦隊マジレンジャー)や歌謡ショーなどは、それなりの集客効果があるとはいえ、やはりこの“馬の名前”にちなんだイベントには似合わない。「とことん、馬にこだわったお祭りをやりたい」という基本理念からやや外れたメニューになってしまう。

 20回目を迎えたシンザンフェスティバルは、スタッフや予算の確保などの問題を抱え、来年以降はいくぶん形を変えて行くことになるだろう。

 約1000万円の予算の中で、町からの補助金が4割を占める。協賛金(寄付金)の伸び悩みも深刻で、この種のイベントは、「立ち上げ」よりも「継続」こそが大変だと改めて思う。一部には「20回で打ち切りか?」と囁かれていたこのイベントは、しかし、換言すれば「20回も続いてきた」ことにもなる。

 今後、さらに30回、40回と、歴史を重ねて行くために、どこをどのように変えて行くべきか、課題は多い。だが、フェスティバル終了後の打ち上げでは、「ここで止めてしまうのはいかにも惜しい」という意見が大勢を占めた。馬産地・日高にこんなお祭りが一つくらいあってもいいだろう、との思いが実行委員の中に根強く残っているのである。

 他町のこととはいえ、今年から「新冠・駒祭り」(9月下旬の草競馬)がなくなった。同町では、5月の連休に「ハイセイコーフェスティバル」なるイベントも開催してきたが、こちらも数回実施しただけで中止となった。まさしく「継続こそ力なり」とはよくぞ言いけり、と思う。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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