2018年12月01日(土) 12:00
自分の予想はさておき、先週のジャパンCを振り返らないわけにはいきませんね。それにしてもタイヘンなタイムが出たものです。
あれだけの速さで激走したにもかかわらず、その後1週間経ってもアーモンドアイとキセキの脚元に異変が起きていないのは何より。日本馬の速力と馬場管理の見事さに感服しています。
東京芝2400メートルのレースと言えば、日本ダービー、オークス、ジャパンCが代表格ですが、その勝ちタイムの変遷を改めて調べてみました。
1932年、目黒競馬場の不良馬場で行われた第1回東京優駿大競走の勝ち馬ワカタカは、2分45秒2で走りました。第3回から舞台が東京競馬場に移されますが、第5回までの馬場状態は不良かやや不良で、タイムが2分40秒を切ることはありませんでした。
初めて良馬場で行われた1937年(第6回)、ヒサトモが2分33秒3で駆け抜け、それまでのレースレコードを一気に縮めます。その後、1943年(第12回)のクリフジが2分31秒4をマーク。これを破ったのは、1951年(第18回)のトキノミノル(2分31秒1)でした。
それから何度かレコード更新を積み重ね、2分30秒の壁を越えたのが1963年のメイズイ。2分28秒7で走り、61年にハクショウが出した2分30秒2を1秒5も縮めました。
1981年にジャパンCが創設されると、いきなりメアジードーツが2分25秒3の日本レコードで走破。そして、1989年の同レースで、ホーリックスが2分22秒2という驚異的なタイムを叩き出しました。
これが塗り替えられたのは2005年のジャパンC。アルカセットが0.1秒だけ縮めて2分22秒1で走り、10年以上にわたって日本レコードホルダーになっていました。ちなみに、3歳牝馬限定戦のオークスでダービーやジャパンCのレコードが更新されたことはありません。
さて、ここでちょっとおもしろいことに気が付きました。それは、エポックメイキング的なレコード更新があったときは、(当然ながら)従来の最速タイムが大幅に縮められているということ。それと、そういうタイムが牝馬によって叩き出されているケースが目立つということです。
ダービーで2分40秒の壁が越えられたときは7秒7、2分30秒が突破されたときは1秒5も縮められています。また、ジャパンCでは、1987年にルグロリューが2分24秒9をマークした後、前述のホーリックスは2秒7も縮めました。さらに、今回のアーモンドアイは、05年のアルカセットのタイムを1秒5も更新したのです。
で、ここまでに名前が出てきた馬の中で、ヒサトモ、クリフジ、メアジードーツ、ホーリックス、アーモンドアイの5頭が牝馬でした。日本の芝2400メートル戦に関していえば、「歴史は牝馬によって塗り替えられている」? 先週のジャパンCを振り返ったら、そんなふうに思えてきました。
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矢野吉彦
テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。
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