門別誤審事件から1ヶ月、公式記録の訂正はいまだに「調整中」

2018年12月06日(木) 18:00

生産地便り

今年度の開催は全て終了した門別競馬

「事務方がアホやから競馬でけへん」滞る対応に厳しい声も

 いよいよ今年も残すところあとわずかになったが、去る11月1日に発生した「北海道2歳優駿」の着順誤審事件は、未だに尾を引いたままで、果たして年内に決着がつくのかどうか何とも微妙な状況である。

 この事件は、1着がイグナシオドーロ(阿部龍騎手)、ハナ差の2着にウインターフェル(井上俊彦騎手)の順でゴール板を駆け抜けていたにもかかわらず、決勝審判員が判定を誤り、1着ウィンターフェル、2着イグナシオドーロと誤判断をしてしまい、そのまま確定させてしまったことが事の発端であった。

 誤審が発覚したのは、確定を出してから10分後のことであったという。その頃にはすでに門別競馬場ではウイナーズサークルにて表彰式が始まっており、優勝した(とされる)ウィンターフェルの関係者や主催者側のお偉方などが多数つめかけ、セレモニーが粛々と進行しているさなかであった。もし、仮にこの時、誤審であった即座に訂正発表していれば、おそらくここまで騒動は大きくならなかったであろうとは思う。主催者としては過去(昭和時代)に各地の競馬場で発生した騒擾、混乱を何より恐れたらしく、その日の訂正発表は見送り、翌日になってから改めて誤審であった旨の正式発表をおこなった。

 これが傷口を広げてしまったことは確かで、今日に至るまで、ずっと誤審による「後始末」が続く結果を招いている。

 誤審という前代未聞の不祥事により、主催者は翌日から対応に追われた。まず、翌日夕刻に記者会見を行い、誤審発生の経緯の説明と謝罪、さらには、正しい着順による的中馬券を購入したファンに対する払い戻しにも応じる方向で検討したいと明言した。

 それを受け、どうやら払い戻しに関しては、概ね解決に向かいつつあるのが今日現在の状況だ。ホッカイドウ競馬を主催する北海道庁農政部によれば

「払い戻しについては、HP上での発表通り、年内に目途をつけたいと考えています。ネットで投票された方々に対しては、それぞれの委託発売業者を通じて、支払いを進めるべく手続きを行っております。

 もちろん、これに関しては、現在まで相当数のお叱りを頂戴しました。過去に例のないことだったので、対応が遅れてしまった点に関しては、お詫び申し上げるしかありません」とのこと。

 この誤審事件に関して、事後の問題点としては大きく分けると次の二つ挙げられるだろう。ひとつは、前述したように、「正しい着順による配当金への支払い」であり、もうひとつは「公式記録の訂正」である。

 正しい着順による配当金の支払いに関しては、最優先で取り組んだだけあって、誤審を明らかにしてからは、主催者の対応は早かった。しかし、その一方で、公式記録に関しては、残念ながら今日に至るも、誤審通りの当初確定させた着順のまま、1着ウィンターフェル、2着イグナシオドーロとなっている。

 この点について主催者に問い合わせたが、残念ながら明確な回答は得られなかった。ただ「公式記録をどう扱うかについては関係機関と調整中です。今のところこれしか申し上げられません」とのことであった。

 本来であれば、誤審が明らかになった時点で即座に訂正されるのが正しい処理、解決だと思うが、間違いであったとしても、一度は「確定」を出してしまっている点がネックになっているのかも知れない。

 しかし、その部分についても、主催者には説明責任があるだろう。正しい着順による配当金支払いへの対応と比較すると、こちらの方は事態がなかなか進展しておらず、且つ、どのような「調整」が水面下で進められているのかがまるで見えて来ない。

 もちろん、誤った着順のままで訂正されずに終わることはないと思われるが、ぜひ主催者は、然るべき時期にもう一度、最終報告のための記者会見を開き、この世紀の誤審事件の全貌と、その後の対応のありようについて詳細に語って頂きたいと思う。

 来年度の開催を晴れやかな気分で迎えたいというのが、現場で日々馬に接する厩舎関係者の声でもある。ある関係者が「ベンチがアホやから野球でけへん、と言ったのは江本孟紀さんだが、それに倣うなら、事務方がアホやから競馬でけへん、と言ってやりたくなる」と私に語っていたのが、耳に残る。

 とにかくこの騒動をいつまでも引きずるべきではない。一刻も早くすっきりとした解決を望みたい。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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