【無料】来月、JRAブリーズアップセール開催

2019年03月13日(水) 18:00

例年以上のハイペースで進む2歳馬たちの調教

 来る4月23日(火)、中山競馬場において「JRAブリーズアップセール」が開催される。それに向け、現在、浦河のJRA日高育成牧場では連日、同セールに上場を予定されている2歳馬たちの調教が行なわれている。

生産地便り

例年になくハイペースで2歳馬の調教が進んでいるようだ

「今年はかなりハイペースで調教が進んでいます。だいたい昨年と比較しても、一ヶ月くらいは進んでいる感じですね。もうかなり速い時計を出している馬もいます」とのこと。

 冬期間の寒さが厳しい北海道では、以前から2歳馬の調教が温暖な本州と比較すると難しいと言われてきた。JRA育成馬にしても、宮崎とここ浦河の2ヶ所で調教を行なっているが、年中温暖な宮崎ではまず気温が氷点下になること自体がほぼない土地なのに比べて、厳冬期が長い北海道では気温差によるハンデがあるのは確かであった。

 だが、そんなことを言ってはいられない事情もある。「やはり、新馬戦の開始が以前と比較するとずいぶん早くなったことと、大手の牧場(とりわけノーザンファーム)の生産馬が、開幕週からどんどん仕上げて出走してくるようになり、しかも結果を残すので、それに合わせてこちらも6月から使える馬を作って行かなければならないわけです」と、現場で調教を見るスタッフが言う。

生産地便り

研修中のBTC36期生たちによる調教も行われた

生産地便り

こちらもBTC36期生たちによる坂路調教の様子

 昨年の6月、新馬戦がスタートしたのは2日(土)の東京と阪神においてであった。それぞれ第5レースに「メイクデビュー」が組まれ、どちらも勝ったのはノーザンファーム生産馬(ジョディー=東京、ジャミールフエルテ=阪神)で、勢いはそのまま翌3日(日)そして、次週の9日、10日も続いた。

 この2週で実施された新馬戦は全部で9レース。うち実に7レースをノーザンファーム生産馬が制した。

「ブリーズアップセールは調教セールですから、実際に走る姿を確認して頂いてセリで馬主に購買して頂くことになり、その意味でも、早い時期からデビューできるというのは大きなセールスポイントになります。もちろん全ての馬がこの流れに乗れるわけではありませんが、なるべく多くの2歳馬が早くから競馬に使えるようにしたいのが我々の目標です」とのこと。

 今年からは、3歳未勝利戦の終了も早まり、9月1日の新潟、小倉、札幌が最後になる。その翌週の7日(土)から始まる中山と阪神の秋競馬ではもう3歳未勝利戦が行われなくなった。以前ならば、秋になっても11月の福島開催などに数多くの3歳未勝利戦が組まれていたことを思えばまさしく隔世の感がある。使い出しが早くなり、且つ3歳夏までに確実にひとつは勝っておかなければ、厩舎に在籍し続けるのも難しくなる。生き残りを賭けた争いがますます厳しくなってきているのは確かだ。

 現3歳世代のJRAブリーズアップセール出身馬のうち、1勝以上の勝ち上がり馬は、次の通り。

イッツクール(父アルデバランII、牡)8戦2勝 *ききょうステークス(OP)
エイティーンガール(父ヨハネスブルグ、牝)6戦2勝 *若菜賞(500万下)
エリーバラード(父アルデバランII、牝)5戦2勝(佐賀交流競走での2勝)
イチゴミルフィーユ(父ヨハネスブルグ、牝)5戦1勝
モンテアーサー(父シンボリクリスエス、牡)2戦1勝
アンビル(父ケイムホーム、牡)7戦1勝
トーセンリスト(父ノヴェリスト、牝)8戦1勝
メイショウクライム(父ケープブランコ、牡)4戦1勝
フローラルパーク(父ヘニーヒューズ、牝)3戦1勝
タムロドリーム(父ジャスタウェイ、牝)4戦1勝
メイスンハナフブキ(父エイシンフラッシュ、牝)4戦1勝
レディードリー(父キンシャサノキセキ、牝)9戦1勝
ヴィクトリアポデル(父アドマイヤムーン、牡)5戦1勝
キチロクタービン(父ロージズインメイ、牡)6戦1勝
ダイヤクイン(父クロフネ、牝)2戦1勝

 上記の他、すでに地方に転じた後、勝ち馬となっている例もあるが、それらについては除外した。JRAに登録がある勝ち馬はこの15頭で、うち2勝馬は3頭、出世頭は現在のところイッツクール(獲得賞金3362万9000円)ということになる。

生産地便り

写真は昨年末に行われたイッツクール(写真右)による育成馬騎乗供覧

 昨年のブリーズアップセールでの上場頭数は68頭。おそらく大半のセール出身馬がすでにデビューできているはずだが、その中で15頭という勝ち上がり頭数は想定内の数字かもしれない。だが、68頭のうちちょうど半分が未だ獲得賞金ゼロのままというデータもあり、またすでに地方に転厩した馬も6〜7頭いる。

 因みに現時点でのJRA3歳世代の登録馬は約4000頭。うちオープンを含む1勝以上の馬が848頭、未勝利馬が2731頭、未だデビューしていない新馬が500頭近くもいる。この数字から推測すれば、68頭中15頭の勝ち上がりはほぼ平均的とも言えるが、今後はどこまで勝ち上がり率を上げていけるか、ということと、その中からどれだけ抜けた馬を輩出していけるか、が課題になりそうだ。

 今年は4月8日(月)に日高育成牧場の展示会が予定されている。そこでどんな期待馬が出てくるのかを見たいと思う。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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