【無料】“マイ”との出会いから飛躍を遂げた杉浦騎手

2019年03月26日(火) 18:00

馬ニアックな世界

▲とある馬との出会いから飛躍を遂げた杉浦騎手

奥様の名前がついた馬で重賞初制覇を果たした騎手がいます。杉浦健太騎手(兵庫)、26歳。妻・マイさんと結婚したばかりの頃、オーナーから「冠名のタイザンを使って好きな名前をつけていいよ」と言っていただき、名付けたのが「マイタイザン」でした。

兵庫生え抜きの牡馬は杉浦騎手に次々と重賞タイトルをプレゼントし、先々週の名古屋大賞典(JpnIII)ではJRA馬に混じって逃げ粘っての4着でした。「名は体を表す」と言いますが、マイタイザンと妻・マイさんには共通点があるとか。

今回の「ちょっと馬ニアックな世界」はマイタイザンと杉浦騎手夫婦のお話です。

妻の名から命名、生真面目な性格も似たマイタイザン

 マイタイザンがデビューしたのは2015年夏の園田競馬場。

 新馬戦を逃げ切って4馬身差で勝利すると、4連勝で重賞・兵庫若駒賞を制覇しました。杉浦騎手にとってはこれが重賞初制覇。

「その1カ月前の重賞で1番人気8着だったので、『重賞を勝つにはまだまだ早いのかな』と思っていたんです」

 しかし、験担ぎとしてあごヒゲを伸ばし、毎日調教をつけて築いてきた信頼関係を胸に挑んで、勝利を手にしました。

 両手でガッツポーズをつくって引き揚げてきた杉浦騎手。当時は木村健騎手(現調教師)、田中学騎手、川原正一騎手が全国リーディング上位の活躍を見せていた園田において、若手が活躍するのは非常に大変なことでした。同年代の騎手仲間は検量室から飛び出して杉浦騎手を出迎え、彼はハイタッチでそれに応えました。

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▲初重賞制覇を飾り満面の笑みで引き揚げてくる杉浦騎手とマイタイザン

「直線はがんばって追うしかありませんでしたが、先頭でゴールしてホッとしました」

 その後、兵庫ジュニアグランプリ、全日本2歳優駿とダートグレードレースに挑戦しましたが7着、10着。JRAの壁が高く立ちはだかりました。

 それ以降は地方馬同士の戦いに専念し、3歳秋に西日本ダービーを制覇すると、翌年は古馬に混じって摂津盃を制覇。一時期は減っていた馬体が回復するとさらに充実期に入り、逃げてマイペースに持ち込むと、強さを発揮するようになりました。

 5歳の昨年は新春賞、兵庫大賞典、園田金盃と勝って年間6戦5勝。唯一の敗戦は名古屋に遠征した東海菊花賞で、カツゲキキトキトの3着でした。

 そして今年は年明け初戦で名古屋の梅見月杯に遠征。本来なら過去2度対戦して先着できていないカツゲキキトキトが出走予定で、3度目の正直なるか!?だったのですが、同馬は脚元の怪我により回避。キトキトがいないここでは負けられないとばかりに6馬身差で圧勝しました。

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▲名古屋の地でも6馬身差の圧勝。笑顔で写る杉浦騎手とマイタイザン

「プラス11kgでも太目残り感はなくて、追い切りからも一番のデキってくらい状態の良さを感じていました」

 杉浦騎手はそう笑うと、奥様とお子さんと一緒に口取り写真に収まりました。

 2人が結婚したのは2015年春。ちょうどその頃、デビューを控えていたのがまだ名前が付けられていないマイタイザンでした。

「冠名タイザンを使って好きな名前をつけていいよ」とオーナーに言っていただき、厩舎のみんなでたくさんの候補を挙げて大会議。その場で杉浦騎手が出した案は妻マイさんの名前でもあり、「私の」という意味も持つ「マイタイザン」でした。そして、その杉浦騎手案が採用されたのです。

 ちょっと特別な意味を持った馬が昨年は兵庫県競馬の年度代表馬に選出されるまでになりました。

「走るたびに私が緊張する」と苦笑する奥様のマイさん。育児も家事も手を抜かず、きっちりこなす完璧主義の方だそうなのですが、馬の方のマイタイザンも「生真面目すぎるくらい」と杉浦騎手も新井隆太調教師も口を揃えます。

 名は体を表す、じゃないですが、同じ名前を持った者同士、似てくるのかもしれませんね。

 さて、名古屋大賞典で4着と健闘したマイタイザンですが、次走は5月3日兵庫大賞典を予定されています。その後、またダートグレードレースに挑戦するかどうかですが「真面目すぎるので、ゴリゴリに強い馬相手に惨敗してしまうと、心が折れないかという心配もあるんです」と新井師。馬の様子を見ながら慎重に考えていきたいとのことでした。

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▲名古屋大賞典で地方大将格としてJRA勢に挑んだマイタイザン。4着と健闘を見せた

 マイタイザンがデビューした頃から状況は変わり、兵庫リーディングはここ数年、毎年のように変わっています。そして若手騎手が伸びる状況にも少しずつなりつつあり、2015年はリーディング9位だった杉浦騎手は昨年、6位に上がりました。

「マイタイザンで重賞を何度も勝って自信になりましたし、この馬のおかげで周りからの評価も変わりました。すごく感謝しています」

 奥様の名前がついたマイタイザンと共に、杉浦騎手は2019年、さらなる飛躍を目指します。

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大恵陽子

競馬リポーター。競馬番組のほか、UMAJOセミナー講師やイベントMCも務める。『優駿』『週刊競馬ブック』『Club JRA-Net CAFEブログ』などを執筆。小学5年生からJRAと地方競馬の二刀流。神戸市出身、ホームグラウンドは阪神・園田・栗東。特技は寝ることと馬名しりとり。

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