2年目ジョッキーの快進撃

2019年07月09日(火) 18:00

ヤングジョッキーズシリーズでの騎乗ぶりにも注目

 7月4日に行われたグランシャリオ門別スプリントを制したのは9歳のメイショウアイアン。昨年、盛岡の絆カップを制したのが8歳での重賞初制覇だったが、それに続いての重賞2勝目が、地元門別での重賞初制覇になった。

 そして鞍上は、デビュー2年目、これが記念すべき重賞初制覇となった落合玄太騎手。それにしても見事な騎乗ぶりだった。

 メイショウアイアンは、中央時代も、門別に移籍してからも、ダートの短距離戦で中団〜後方を追走して直線での末脚勝負というタイプ。昨年夏に門別・田中淳司厩舎に転入し、昨年のグランシャリオ門別スプリント、そして秋の道営スプリントでも、直線で脚は確実に使ったものの、ともに2着と重賞では勝ちきれなかった。

 落合騎手が手綱をとるようになったのは、今シーズン初戦となった4月23日、1200mの特別戦から。12頭立てで3コーナー11番手、4コーナーでも8番手から外目に持ち出して追い込んだものの、勝ったフジノパンサーから2馬身半差で3着。直線でのキレは見事だったが、脚を余したような感じで勝ちきれずというレースぶりは昨シーズンと変わらずだった。

 しかし今季2戦目となったJpnIIIの北海道スプリントCで、おっ!? と思われるレースを見せた。大外16番枠から好スタートを切ると、位置取りを下げすぎずに中団の外を追走。4コーナーでも先頭から3、4馬身ほどの位置につけた。先行勢からメンバー中最速の36秒4という上りで抜け出したヤマニンアンプリメには3馬身離されたが、それでも直線確実に伸びて2着に入った。

 中央時代は準オープンで3着が最高という成績。北海道に移籍後、ダートグレードでは昨年のクラスターCで6着。それが9歳になって、地元の舞台とはいえ中央馬相手のJpnIIIで、しかも鞍上がデビュー2年目の若手だったということでも大いに評価できる2着だった。

 そして落合騎手で臨んだ3戦目が、グランシャリオ門別スプリント。2番枠から好スタートを切ると、下げて7番手あたりの中団を追走。内を回り、直線を向いて外目に持ち出した。残り100mを切って先頭に立ったのは1番人気ショコラブランだったが、メイショウアイアンは最後にぐいっと伸びて差し切った。

 メイショウアイアンがこの2戦で変わったのは、前半で中団あたりまで位置取りを下げても、4コーナーでは先頭を射程圏にとらえられるところまで早めに位置取りを上げていること。それゆえ以前のように脚を余すということもない。レース後、田中淳司調教師は、「スタートは上手な馬なので、テンに出して行って、内々で我慢して、直線はどこか開いたところから外に出してという指示をしていたんですが、そのとおりうまく乗ってくれました」と、思い描いたとおり完璧な騎乗だった。

 冒頭でも触れたとおり、デビュー2年目での重賞初制覇を果たした落合玄太騎手だが、同期ではひと足早く、岩手の岩本怜騎手が重賞勝利を達成。6月2日の盛岡・早池峰スーパースプリントをサインズストームで制した。

同期で一番早く重賞初制覇を果たした岩手の岩本怜騎手(提供:岩手県競馬組合)

 サインズストームは昨年終盤、山本聡哉騎手でB1戦からA級二組の特別戦を連勝。冬休みが明け今シーズンからは岩本怜騎手が手綱を取り、3連勝で人馬ともに重賞初制覇となった。早池峰スーパースプリントでは、近年岩手リーディングトップの山本聡哉騎手に戻すという選択肢もあったようだが、厩舎の意向で岩本騎手のまま臨んでの快挙となった。

 そのレース後、岩本騎手は、「新人賞(プロスポーツ大賞新人賞)は落合くんが獲ったので、悔しいという気持ちはありました。(同期で1年目に)最多勝がとれなかったので、重賞は自分が最初に勝つと言っていたので、有言実行できました」と話していた。やはり同期の活躍は意識しているようだ。

 デビュー2年目の地方騎手では、残念ながら大井でデビューした北野壱哉騎手が体重調整の問題などで騎手免許を返上してしまったが、ほか5名はいずれも全国で存在感を示している。

 7月8日現在での通算勝利数では、岩本騎手がトップで92勝。デビューした昨年は48勝だったが、今年はここまで既に44勝。岩手リーディングで4位につけている。

 次いで落合騎手が72勝。昨年は58勝を挙げ、今年は4月17日の開幕から3カ月弱で14勝。これについて落合騎手は、グランシャリオ門別スプリントの表彰式で、「重賞を勝たせていただいたんですけど、去年に比べると減量が3キロから1キロになってなかなか勝てない日が続いて、悩むことも多いんですけど、去年以上の勢いで勝っていきたいです」と話していた。

 そのほか、兵庫・石堂響騎手が68勝、佐賀・出水拓人騎手が62勝と、いずれも今年、もしくは来年には減量を卒業しそうな勢いだ。さらに大井・吉井章騎手は44勝。南関東で2年目の成績としてはこれもかなり優秀だ。6月から始まっているヤングジョッキーズシリーズでの彼らの騎乗ぶりにも注目してほしい。

 そして実は地方競馬で今年デビューした新人騎手もすばらしい活躍をしているのだが、それはまた別の機会に取り上げることにする。

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斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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