【横山武史×藤岡佑介】第1回『子供の頃、父・横山典弘騎手はとにかく怖い存在だった』

2019年07月24日(水) 18:02

with 佑

▲共に北海道滞在中の横山武史騎手と藤岡佑介騎手 (撮影:山中博喜)


佑介騎手が開催リーディングに輝いた函館競馬。今週から舞台は札幌へ。ますます熱気高まる北海道から、佑介騎手と共に現地滞在中の横山武史騎手をゲストにお迎えしてお届けします。

武史騎手はデビュー3年目。同期は川又賢治騎手、木幡育也騎手、富田暁騎手、武藤雅騎手。そして、父は横山典弘騎手。そんな武史騎手を、かねてより注目していた佑介騎手。今回の対談では、横山家のヒミツと武史騎手の類まれなるプロ根性が明らかに。

まずは、佑介騎手と武史騎手の出会いから。それは今から遡ること10年以上も前。佑介騎手は当時の武史騎手を一目見るなり、強烈なインパクトを受けたと言います。

(取材・文=不破由妃子)


横山典弘騎手が「一番俺に似ている」と


武史 佑介さん、今日は呼んでいただいてありがとうございます。よく厩舎のみなさんに「お前は喋れば喋るほどボロが出るから、あんまり喋るな」って言われるので、発言に気を付けないと…(苦笑)。

佑介 そんなに気を遣わなくても大丈夫だよ(笑)。

──まずはおふたりの関係性から。所属は東西で離れていますが、佑介さんも武史さんも夏場は北海道。やはり武史さんには1年目から注目していたのですか?

佑介 正直、1年目の武史はあんまり記憶に残ってないんですが、去年の札幌で同じ馬に乗る機会があって、そこからよく話をするようになって。

武史 クリーンファンキーですよね。佑介さんが乗って勝ったあと、僕も同じ馬で勝って。自厩舎(鈴木伸尋厩舎)の馬だったので普段からよく見ていたんですけど、佑介さんが勝ったのを見て、やっぱり巧いなぁと思ったんです。そこからよくお話するようになりましたよね。

佑介 うん。そもそも2年目に入ってからの武史は思い切りの良さが目立っていたので、伸びてきそうだなと思いながら注目してたよ。でもそれ以前に、武史とは10年以上前に会ってるからね。

 ノリさん(横山典弘騎手)が札幌に連れてきたとき、信じられないくらい小さくて、それがすごく印象に残ってる。競馬学校に入学した時点でも、まだめっちゃ小さかったよな。

武史 はい。入学した時点での数字でいうと、競馬学校史上、僕が最低体重、最低身長だったらしいです。それまでは松若(風馬)先輩が記録保持者だったんですけど、僕が更新しました(笑)。3年間で一気に伸びましたけどね。

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▲競馬学校生時代に、父のレースの口取りに参加した武史騎手 (C)netkeiba.com


佑介 だよな。とにかく小さいっていう記憶があったから、ああ、やっぱりジョッキーになったんだなって思った。ノリさんも、札幌に連れてきている頃から「こいつは乗り役になるんじゃないかな。一番俺に似ているような気がする」って言ってたし。いざデビューしたら、ノリさんが「俺に似てる」って言った意味も何となくわかるしね。

武史 「お前は俺と性格が似ているから酒を飲むな。絶対に失敗するから」って言われてます(笑)。

佑介 そうなんだ(笑)。

幼心には難解だった名手の心情


──佑介さんは子供の頃、土日はずっと競馬を観ていたとおっしゃっていましたが、やはり武史さんもテレビにかじりついて観ていた感じですか?

武史 自然と観てましたね。あと、競馬週刊誌を読むのが好きだったり。

佑介 だよな。でも、調教助手の子供とジョッキーの子供はまたちょっと違うんだよね。ジョッキーの子供の場合、お父さんが応援する対象としてテレビに出ているわけで。俺の子供時代は、父の担当馬が出走するとなっても、父がテレビに映るわけじゃなかったからね。そこは大きな差があると思う。

 実際、うちの息子なんか本当によく観てるよ。今日はパパはどこどこの競馬場で乗ってるとか、何番の馬に乗って何番の馬に勝って…とか。あと、「トサカキケイタばっかり勝つね」ってよく言われてた(笑)。

武史 トサカキ…あ、戸崎さんですね(笑)。

佑介 そうそう。ちょっと間違ってるけどまぁいいかと思いながら聞いてたよ(笑)。「パパは1つか2つしか勝たないけど、トサカキケイタは5つも6つも勝つね」とか言うからね。そのたびに、「すみません、頑張ります」って(笑)。

武史 そんなこと言われたら、返す言葉がないですよね(苦笑)。僕の場合、競馬を観るのは好きでしたけど、父とそういう会話をすることはまったくなかったですね。

 たとえばその日、父が勝ったとしたら、家族としては「今日勝ったね、おめでとう!」って迎えるじゃないですか。でも、父の反応は「いや、今日の勝ち方はダメだ」みたいな。

 逆に「今日はダメだったね」っていうと、「いや、今日の乗り方はよかった」とか言うんです(苦笑)。勝ったから機嫌がいいとは限らなくて、そのあたりがちょっとわからなかったです。

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▲武史騎手「勝ったから機嫌がいいとは限らなくて…」 (撮影:山中博喜)


佑介 なるほどねぇ。でも、今となっては、そのときのノリさんが言わんとしたことがわかるでしょ?

武史 そうですね、わかります。でも、当時は本当にわからなかったし、カッコいいとかいうより、とにかく怖い存在で。僕、競馬学校に入るまで、父との会話はすべて敬語でしたからね。物心ついたときから、なぜかそうだったんです。

佑介 俺と逆だな。子供の頃は普通に父親としゃべっていたけど、調教師と騎手という関係になったことで、半敬語みたいな感じになった(笑)。武史の場合は、競馬学校に入ってから敬語じゃなくなったんでしょ? 面白いパターンだよね。

武史 そうかもしれませんね。でも、子供の頃はただただ怖くて。ふたりきりの空間にいるのが本当に苦手で、そうなりそうなときは速攻逃げてました(笑)。

──以前インタビューで、「父はメディアの方には気難しい人間だと思われているそうですね」とお話されているのを拝見したので、てっきり武史さんにとっては“怖い”とか“気難しい”とは真逆のお父さんなのかと思っていました。

武史 いえいえ、そんなことはないです。むしろ、メディアの方たちの気持ちがよくわかります(笑)。

(文中敬称略、次回へつづく)
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JRAジョッキーの藤岡佑介がホスト役となり、騎手仲間や調教師、厩舎スタッフなど、ホースマンの本音に斬り込む対談企画。関係者からの人望も厚い藤岡佑介が、毎月ゲストの素顔や新たな一面をグイグイ引き出し、“ここでしか読めない”深い競馬トークを繰り広げます。

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藤岡佑介

1986年3月17日、滋賀県生まれ。父・健一はJRAの調教師、弟・康太もJRAジョッキーという競馬一家。2004年にデビュー。同期は川田将雅、吉田隼人、津村明秀ら。同年に35勝を挙げJRA賞最多勝利新人騎手を獲得。2005年、アズマサンダースで京都牝馬Sを勝利し重賞初制覇。2013年の長期フランス遠征で、海外初勝利をマーク。2018年には、ケイアイノーテックでNHKマイルCに勝利。GI初制覇を飾った。

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