あっぱれ!新人騎手が1日4勝

2019年07月30日(火) 18:00

あのレジェンドも絶賛する騎乗ぶり

 今年地方競馬でデビューした騎手の活躍について、このコラムでは4月30日付、5月21日付で取り上げた。今年の新人もなかなかに優秀で、その後も順調に勝ち星を伸ばしている。7月26日現在での最多勝は北海道の小野楓馬(おの・ふうま)騎手で17勝。次いで福原杏(ふくはら・まい)騎手が15勝。デビューの日に怪我をして約1カ月ほどブランクがあった兵庫の木本直(きもと・なお)騎手も6月12日に初勝利を挙げ、ここまで4勝を挙げている。

 そしてここに来て赤丸急上昇の注目となっているのが、浦和の福原杏騎手だ。7月24日の地元浦和開催で、なんと1日4勝を挙げる活躍を見せた。翌25日にも1勝を加え、24〜26日の浦和3日間開催では24戦して5勝、2着2回、3着2回。2着の差で惜しくも開催リーディングは逃したが(1位は森泰斗騎手で5勝、2着7回)、激戦区南関東にあって存在感を大いにアピールした。

7月25日浦和第8レースを逃げ切り15勝目

 その4勝は必ずしも人気馬ばかりに乗っていたわけではない。1、3、5、5番人気だった。

「いい馬に乗せてもらって、展開も向いて勝った感じだったので、こんなに勝てちゃっていいのかなって感じでした。人気は気にせず乗っていたので、力を抜いて乗れたと思います」(福原騎手)

 4月30日にデビューして約3カ月、自身で変わってきたと思うところはあるのだろうか。

「あまりないですね。悪くなることのほうが多いです。その中でどう修正するかで低迷することが多かったので、他場に行っても怒られてばかりだったり、迷惑かけてばかりだったり、それで勝てなかったり。やっぱりうまくいかないことのほうが多くて悩みます」と、あくまでも謙虚だ。

「悪くなることのほうが多い」というのは、実際に悪くなっているわけではなく、今まで気づかなかった悪い部分に気づくようになったということだろう。それはスポーツに限らず、悪いところに気づいて、それをひとつひとつ修正していくことによって成長していく。

 約3カ月で15勝という数字についてはどう考えているのだろうか。

「先輩が1年目でもっと勝っていて、まだその半分にも達してないんで、まだ全然です」

 “先輩”というのは、2016年に同じ浦和でデビューした保園翔也騎手のこと。騎手の人数が多い南関東では、以前ほどではないにしても、デビューしたばかりの騎手が所属場以外で騎乗馬を得るのはなかなか難しい。ところが保園騎手は、デビューしたばかりの頃から休みの日にも積極的に浦和以外の競馬場に調教に出かけ、多くの騎乗機会を得ていたことが話題になった。

 その保園騎手の初年度の成績は633戦33勝。一方で、福原騎手はここまで約3カ月で15勝、今年あと5カ月を残していることを考えると、勝利数のペースとしては福原騎手のほうが明らかに早い。今年だけの成績(7月26日現在)を見ても、ここまで約7カ月騎乗した保園騎手は307戦21勝で、勝率は6.8%。一方、福原騎手は前述のとおり約3カ月で15勝を挙げ、勝率でも9.3%と上回っている。

 とはいえ福原騎手は単にそうした数字だけのことを言っているのではないのだろう。4年目ですでに減量を卒業し、若手の中でも所属する浦和以外での騎乗数も多い保園騎手の存在そのものを身近な目標としているに違いない。

「うまくいかないことのほうが多くて悩む」と話す福原騎手

 福原騎手が所属する水野貴史調教師はどう見ているのだろう。

「頭がいいし、慌てないで乗る。注意したところは必ず次のレースで活かせる。このまま天狗にならないようにいければ、伸びていくんじゃないでしょうか」と評価していた。加えて、「あとはウチの馬でもっと勝ってくれれば」と笑っていた。

 なるほど、福原騎手の自厩舎での勝利は、24日の1日4勝の2つ目が初めてだった。とはいえ、所属以外の厩舎の馬でそれだけ勝っているということは、今後さらに勝利数を伸ばせる可能性があるということ。

 そして福原騎手をデビューして間もない時期から絶賛していたのが、地方通算7151勝(ほかに中央2勝)を挙げたレジェンド、佐々木竹見さん。「こんな新人は久しぶりに見る」と聞いていたのだが、あらためてお話をうかがった。

「スタートしてすぐの追い出しがいいし、3キロ減なので前に行こうとする姿勢もいい。普通ならバテてしまうような馬でも3キロ減だともってしまうことがある。特に浦和は直線が短いし、思い切った騎乗がいい。一番いいのは、肘を締めて乗っていること。なかなかデビューしてすぐに、こうは乗れない。

 最後の直線で追い出してから、手綱が緩まないし、姿勢もいい。ムチの持ち替えも大したもの。浦和の若手では保園騎手もうまいけど、(福原騎手には)たくさん乗せてあげて、浦和のリーディングをとらせてあげたい。浦和のリーディングは他場の騎手がとることが多く、浦和の騎手は目立つことが少ないので」

 今年も行われているヤングジョッキーズシリーズでは、福原騎手は8月21日の門別、そして10月9日の地元浦和に出場予定。少し先になるが、同シリーズでの活躍にも注目したい。

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斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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