【追悼ディープインパクト】矢作師、佐々木師、友道師 ダービートレーナーが明かす“父・ディープ”の功績

2019年08月02日(金) 18:01

2005年に無敗でダービーを制したディープインパクト。それから7年後の2012年、ディープブリランテが産駒として初のダービー制覇。計5頭ものダービー馬を世に輩出しました。種牡馬としてのディープインパクトの功績を、産駒でダービーを制した矢作芳人調教師、佐々木晶三調教師、友道康夫調教師が語ります。

(取材・文=大恵陽子)

佐々木晶三調教師「キズナもディープに似て性格がいいんです」

ノンフィクションファイル

▲キズナ(2013年ダービー)を管理 (撮影:大恵陽子)

 現役時代から管理するインティライミで戦ってきて、すごさは身をもって感じていました。「こんな馬、見たことない!」って走り方をしていました。日本ダービーではディープインパクトに勝てる気が微塵もしなくて、緊張はしませんでした。

 直線で内からインティライミが抜け出した時にすぐに外を見るとやっぱりディープインパクトが追い込んできて、「すごい」って笑うしかありませんでした。悔しいという次元ではなかったですね。

「子どもをやりたいな」とずっと思っていました。キズナは体の形はそんなに似ていませんでしたが、オーラをすごく放っていてそういうところは似ていました。

 キズナで挑んだ日本ダービーは負ける気がしませんでした。故障させてはいけないという責任感はありましたが、緊張せず楽しみばかりでした。

ノンフィクションファイル

▲父と同じ武豊騎手を背にダービーを勝利 (撮影:下野雄規)

 担当していた田重田厩務員もみんながワクワクしていましたね。競馬っぷりもディープインパクトに似ていて、プラス力強さがありました。ディープインパクトはヨーイドンでバンッと弾けていましたが、キズナは速い脚を力強くずーっと維持して、だんだん速くなっていくって感じでした。追い込みは似ているけど、少し異なったタイプではありましたね。

 キズナも種牡馬として出世してくれると思います。キズナもディープインパクトに似て性格がいいんです。普段は元気いっぱいなんですが、競馬になるにつれて大人しくなり、無駄なことは一切しません。ゲートの直前でも大人しくなると武豊騎手の話でしたから、それだけレースに集中しているんでしょうね。

 そういうところは産駒が受け継いでくれると思います。今は短い距離で走っていますが、本来はマイル以上の馬だと思うので、秋以降が楽しみです。

友道康夫調教師「ヴィルシーナの勝負根性はまさにディープ譲り」

ノンフィクションファイル

▲マカヒキ(2016年ダービー)、ワグネリアン(2018年ダービー)、ヴィルシーナ(2013、14年ヴィクトリアM)、ヴィブロス(2016年秋華賞、2017年ドバイターフ)を管理 (撮影:大恵陽子)

 マカヒキはディープインパクトより体つきが2回りほど大きくて見た感じは似ていませんが、走るフォームやレース内容は似ていました。日本ダービーでは同じディープインパクト産駒のサトノダイヤモンドとの1、2着でしたね。

ノンフィクションファイル

▲マカヒキのダービーは同じディープ産駒のサトノダイヤモンドとの1、2着 (撮影:下野雄規)

 身体能力もですし、精神力や勝負根性が遺伝しています。武豊騎手が「走ることが好きな馬でした」とコメントしていましたが、そういうのがいい風に産駒に伝わっていると思います。サンデーサイレンス産駒は気性難で大成できない馬もいましたが、ディープインパクト産駒ではそういうことは聞きません。

 ワグネリアンはマカヒキより少しテンションは高いですが、悪いって感じではなく前向きさが出ています。みんな勝負根性があるのがすごいですよね。

ノンフィクションファイル

▲福永騎手の悲願成就となったワグネリアンのダービー勝利 (撮影:下野雄規)

「勝負根性」といえば、ヴィルシーナがまさにそうでした。ゴール直前、最後の我慢の部分は精神力で走っていたような馬でした。そういうところはディープ譲りじゃないかと思います。

 ディープインパクトの死を聞いた時はビックリしました。元々、体調が悪かったことやアメリカから獣医師を呼んで手術をすることも聞いてはいたのですが…まだまだ若いだけに、もったいないですね。

矢作芳人調教師「最もディープに似ているのはラヴズオンリーユー」

ノンフィクションファイル

▲ディープブリランテ(2012年ダービー)、リアルスティール(2016年ドバイターフ)、ラヴズオンリーユー(2019年オークス)を管理 (C)netkeiba.com

 ディープインパクトは種牡馬入りした時、体の小ささが多少問題視されていましたが、私は絶対に成功すると思って注目していました。ディープブリランテは牡馬だしいいと思って、生まれてすぐから見ていました。

 セリではノーザンファームが落札されて、こちらはアンダービッター。すぐに「預からせてください」とお願いしました。体のバランスはディープインパクトなんですが、競走馬としてはあまり似ていなくて、ディープブリランテは大きくて筋肉量が豊富でした。

ノンフィクションファイル

▲産駒として初めてダービー馬となったディープブリランテ (撮影:下野雄規)

 最もディープインパクトに似ているのはラヴズオンリーユーでしょう。ディープインパクトが当歳セリで7000万円しかつかなかったのは小ささからの評価でした。ラヴズオンリーユーも1歳セリではありますが、当時はそれほどいいとは思いませんでした。

 しかし、父のように2歳を迎えてから変わったんです。そういった成長曲線も似ていますし、バネとしなやかさなどすべてにおいてディープインパクトに似ています。乗った人は誰もが褒める背中はその柔らかさとバネからでしょう。少し前に見てきましたが、夏を迎えてさらに成長して、春以上になっています。

 どのようであれ、走る馬を輩出するのがディープインパクトのすごさですね。日本ダービーや海外のレース(ドバイ)といった私の悲願のようなレースを勝たせてくれて、すごさを身をもって感じています。感謝しかありません。

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

netkeibaライター

netkeiba豪華ライター陣による本格的読み物コーナー。“競馬”が映し出す真の世界に触れてください。

関連情報

新着コラム

コラムを探す