園田で破竹の連勝劇、ヒダルマが12連勝をかけ重賞・摂津盃へ!

2019年08月13日(火) 18:00

馬ニアックな世界

▲園田で破竹の11連勝と勢いに乗るスクリーンヒーロー産駒のヒダルマ

「夏は上がり馬」「夏は格よりデキ」。夏競馬にはさまざまな格言がありますが、“上がり馬度”が地方競馬ナンバー1と言っても過言でない馬が園田・姫路競馬にいます。JRAから転入後、無敗の11連勝中のヒダルマ(牡4)。

今週16日(金)、重賞・摂津盃に出走予定で、これを勝てば兵庫では初めての12連勝馬(※)となります。記録のかかった摂津盃を前に、ヒダルマとはどんな馬なのか、またなぜ地方競馬で連勝馬が多く生まれるのか、「ちょっと馬ニアックな世界」を覗いてみましょう。

※サラブレッド導入以降

12連勝=ディープインパクト級?

 昨年10月、JRA未勝利のヒダルマが園田競馬場で転入初戦を迎えました。JRA時代は15戦中7戦で地方騎手を背に迎えるなど地方競馬と繋がりがあった同馬。転入初戦は2番手から3コーナー手前で余裕の手応えで先頭に並びかけると、直線で後続を突き離して初勝利を挙げました。

 続く2戦目はクラスも距離も前走と同条件。JRAでは1つ勝てばクラスが必ず1つ上がりますが、地方競馬は一概にはそうとは限らないのです。園田・姫路競馬で導入されているのは「ポイント制」。賞金のようなもので、1〜5着に入着するとポイントが与えられます。どれだけのポイントを持っているかによってクラス分けがされ、1勝しただけでは昇級しない場合もあります。(さらに言えば、2カ月に1回のクラス再編成により、降級も発生します)

 これが地方競馬で連勝馬が多く生まれるカラクリ。限られた頭数で、より白熱したレースを展開するための工夫でもあるのです。

 JRAで“無敗の連勝”というと、ディープインパクトのような最強馬のイメージを抱きますが、地方競馬では連勝したからといって必ずしもオープン馬というわけではないのです。実際、ヒダルマも下から2番目のC2クラスで2勝→C1で2勝→B2で2勝→B1で2勝→A2で2勝と、各クラスで2勝ずつ挙げ、10連勝を遂げてようやくオープン級のA1A2混合戦へ出走となったのでした。

 JRAでも地方競馬でも共通するのは、クラスが上がれば道中のペースは速くなり、受けるプレッシャーは強くなります。そのため、前走のA1A2戦ではさすがに簡単にはいかないと思われました。

 ヒダルマは逃げの手に出たのですが、すかさず実績上位馬が序盤からピッタリとマーク。道中はずっと半馬身外からプレッシャーを受け続けながらも、4コーナーでは追いすがる相手に対して余裕の手応えで、9馬身差で完勝しました。

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▲初のA級戦への出走も、終わってみれば9馬身の圧勝!

 これには管理する柏原誠路調教師も「思った以上に着差を広げて、嬉しい驚きでした。斤量が56kgで出走できましたし、先行できたことがよかったですね」と笑顔。

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▲「嬉しい驚きでした」と笑顔の柏原誠路調教師

 この先行力はヒダルマの強み。すべてのレースで逃げか4番手以内につけて勝っています。そしてもう1つ、スタートから出して行ってもスッと折り合えることも強みだと、主戦の川原正一騎手は話します。

「すぐに折り合いがつくのでレース運びのしやすい馬なんです。逃げなくてもいいし、折り合いがついて走り方も息の入れ方も上手。だから距離が延びても持つと思うんです」

 これまでの11連勝はすべて1400m戦でしたが、摂津盃は1700m。4コーナー奥から馬場を1周する1400mと、向正面スタートで馬場を1周半する1700mではレースの流れも大きく変わります。特に1700mでは最初のコーナーまでが短く、ホームストレッチではペースがぐっと落ちやすいため、口を割ってスタミナをロスする馬もいます。その点、ヒダルマはすぐに折り合えるため、以前から陣営は距離延長を考えており、前走で11連勝を達成した直後も距離延長の話が出ていました。

 このタイミングでの距離延長について柏原師はこう説明します。

「以前、ドリームコンサートというオープン馬が在厩していた時、重賞に向けて大切に使いすぎて2カ月レースを空けたことがあるんです。でも、結果はダメでした。それを踏まえて月に1回くらいはレースに使って息をつくった方がいいのかなと考えています。

 同時期の能検(模擬レース)を叩いて9月6日の重賞・園田チャレンジC(1400m)というローテーションも考えましたが、暑い午前11時前後に実施の能検よりも、少しでも涼しいナイター開催という点もいいなと思って摂津盃を選びました。先行できるのがこの馬の強み。前走は逃げましたが、ボーっと走っていたので気合いを入れたと川原騎手の話です」

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▲柏原調教師「ドリームコンサートを管理した経験を踏まえて、月1回ペースで出走させています」

 それに対して川原騎手は「最近はスタートから出して行っています。オープン戦になるので、それなりの対策をしているんです。前走と前々走だけ直線で気を抜かせずにレースをしましたが、目一杯の競馬はさせていません。使いながら良くなっています。あとは枠順や運ですね」

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▲川原騎手も状態には自信を感じている様子

 昨年の摂津盃覇者・タガノヴェリテ、西日本ダービー馬コーナスフロリダ、ダートグレードで何度も好走しているカツゲキキトキトにアタマ差まで迫ったメイショウオオゼキなど実績馬が多く出走予定の摂津盃。上がり馬か実績馬か、タイトルはどの馬の頭上に輝くでしょうか。

 当日はnetkeibaニュースで地方重賞レースなどを撮影している稲葉訓也カメラマンの写真教室もあります。以前、ナイター競馬撮影のポイントをnetkeibaコラムでも教えていただきましたが、当日はどんな話が聞けるでしょうか!? 先着順での受付とのことですので、ご興味のある方はぜひ!

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▲ベテラン川原騎手を背に、次走はいよいよ重賞挑戦!

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大恵陽子

競馬リポーター。競馬番組のほか、UMAJOセミナー講師やイベントMCも務める。『優駿』『週刊競馬ブック』『Club JRA-Net CAFEブログ』などを執筆。小学5年生からJRAと地方競馬の二刀流。神戸市出身、ホームグラウンドは阪神・園田・栗東。特技は寝ることと馬名しりとり。

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