2005年11月23日(水) 23:50
本命馬が敗戦を喫するとき、穏やかな気分ではいられないことがよくあります。その勝利を信じる思いが強ければ強いほど、尾を引きます。同一GIを3回も続けて勝つことがどれほど難しいか、それは常識なのかもしれないのですが、いつか打ち破る名馬が出現するのを願うのも、競馬でしょう。チャンピオンが負ける方に賭けた方々は、どんな思いなのか聞かせてほしいですね。今度のデュランダルについて。
以前、メジロマックイーンが春の天皇賞3連覇を阻まれたとき、ライスシャワーを疎ましく見たものでした。しかし、そのライスシャワーが2年後に同じ舞台で2勝目を挙げたとき、心の中が熱くなってしまいました。人間の気持ちの複雑で勝手なことを知らされたものです。大レースであればあるほど、こうした繰り返しは続くのでしょう。走り続ければ、いつまでも勝ち続けることは少なく、いつかは苦い敗戦を迎えるというのが勝負の世界ですが、人の心は、そうした現実を避けようとしていきます。勝つか負けるかの二者択一にこうした危ない賭けをするのも競馬ですが、たまにしかないとわかっていても、この性分は変えられません。
今年は、ディープインパクトがきっちり勝ち進み、すっきりした思いにさせてくれています。望みは断たれてはいません。有馬記念では、精一杯応援しているでしょう。
かつて、テイエムオペラオーがジャングルポケットにゴール前差され、GI・8勝目という大記録が消されたことがありました。レースが終って引き揚げてくる地下馬道で、ジャングルポケットの渡辺栄調教師が語った、"どっちでも良かったんだよ"というひと言、今でも頭にこびりついています。人の情をいうものを強く感じたのです。もちろん、ほんの瞬間のつぶやきでしたが、これも真実なんだと思いました。競馬は人生とは何かを教えてくれるもの、確かにそうなのでしょう。
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長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。