【神戸新聞杯】ルメール騎手に騎乗依頼が殺到する理由が垣間見えた一戦

2019年09月26日(木) 18:01

哲三の眼

▲まさに圧勝! サートゥルナーリア、次走は古馬と激突 (c)netkeiba.com

今週はダービー敗戦以来の出走で神戸新聞杯を制したサートゥルナーリア。想像を上回る圧勝・完勝ぶりに、早くもファンの間では“現役最強”を期待する声もチラホラ。鞍上は騎乗停止のため、ダービーで手綱を取れなかったルメール騎手で、その敗戦の不安を一掃する快勝の裏には、サートゥルナーリアの武器・ポテンシャルを最大限に活かしたレース運びがあったと哲三氏は言います。さらに「そりゃいい馬、頼まれますよね」と感服のコメントも!(構成:赤見千尋)

武器を活かし、負担は軽減「そりゃいい馬、頼まれますよね」

 神戸新聞杯では1番人気に支持されたサートゥルナーリアが、2番手から早め先頭で圧巻のパフォーマンスを見せてくれました。クリストフ(ルメール)に関してはいろいろなメディアやSNSでも称賛の声が上がっていて、僕ももちろん「巧いな」と感じた一人です。

 日本ダービーの時には発走前にテンションが上がってしまい、それがスタートの出負けに繋がってしまった可能性がありました。今回は陣営のコメントで「輪乗りについて行こうか」という発言もありましたし、クリストフもこの馬の良さと危うさをしっかりと理解していて、前回でマイナスに働いた要因は補えたのではないかと思います。

 スタートを決めて、今回は2番手の位置取り。まず1コーナーまでに折り合いをつけて、2コーナーの手前では完璧に折り合っていた。スタートしてからここまでの抑え方もさすがで、無理にポジションを下げるようなことはしないし、理に適っている騎乗に見えました。

■9月22日 阪神11R(3番:サートゥルナーリア)

 さらに僕が一番「巧い!」と思ったのはこの後。2コーナーの立ち上がりから番手での位置取りです。単純に考えて、逃げている馬に対して3つの選択肢があると思うんですけど、『1.逃げている馬の真後ろにつける』『2.マクられたくないから半分くらい前の馬に被せておく』『3.1馬身くらいの間隔で前の馬に被せないように走る』、という感じ。

 馬によって、馬場状態、コースなどでどの選択肢がいいかは変わって来ますが、サートゥルナーリアで阪神外回りの2400m、2番手のポジションという条件だったら、多くの人がイメージするのは、『1.逃げている馬の真後ろにつける』ではないでしょうか。

 でも今回、クリストフが選択したのは『3.1馬身くらいの間隔で前の馬に被せないように走る』でした。この選択をしたクリストフは本当にすごいなと。前に壁がないので折り合いをつけるのが不安になるかもしれないし、実際に掛かってしまうかもしれない。

 それでも、サートゥルナーリアのストライドを考えた時、前の馬の直後にずっとつけていると、前の馬のペースでストライドが制限されてしまう可能性があるわけです。サートゥルナーリアはとてもキレイなストライドの持ち主で、一気に加速するというよりは、だんだんとストライドが伸びて行くタイプに見えます。そのストライドをしっかり活かすことを考えたら、前に馬を置かない選択肢が重要なのではないかと。

哲三の眼

▲サートゥルナーリアの武器を最大限に活かしたレース運びに (c)netkeiba.com

 折り合いをつけたいという騎手の思惑よりも、馬自身のストライドで走れることの方が僕は大事だと思っていて、3、4コーナーでスピードに乗せながら早めに前を捉える形になったのも、伸びて来ているストライドを活かすためだと感じました。無駄なブレーキングを掛けさせないところが、とても巧いなと思います。

 今回上がりが32秒台で、そこだけ見たらレース後の疲労は大丈夫? と感じる人もいるかもしれません。でも僕から見ると、道中無駄になることを一切していないし、馬への負担も軽減されているのではないかと。もちろん絶対はないですが、馬へのリスクも少ない騎乗で、「そりゃいい馬、頼まれますよね」と改めて思いました。

 まだまだこれから積んで行かなければならない課題もあると思うけれど、前走ダービー時の負けに繋がった可能性がある部分を潰せたのではないかと。今後は古馬路線に行くようなので、秋の楽しみが増えました。

哲三の眼

▲オールカマーはスティッフェリオ&丸山元気騎手のコンビが優勝(撮影:下野雄規)

 オールカマーは4番人気スティッフェリオが逃げ切り勝ち。丸山(元気)君の騎乗は思い切った逃げというより、今の中山の馬場の特徴をしっかり掴んで結果を出したと思います。狙って勝ちに行ったレースだったと思うし、さらに大きな舞台にも繋がっていくと思うので、ぜひGIを勝って欲しいなと思いました。

今週の注目コンビ

哲三の眼

▲藤岡佑介騎手が18年NHKマイルC以来のGI2勝目を目指す (c)netkeiba.com

 今週の注目騎手はスプリンターズS、ディアンドルに騎乗する(藤岡)佑介です。

 レースセンスの良い馬ですね。スピードもあり現時点でどこまで通用するのか好レースを期待したいと思います。

(文中敬称略)

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佐藤哲三

1970年9月17日生まれ。1989年に騎手デビューを果たし、以降はJRA・地方問わずに活躍。2014年に引退し、競馬解説者に転身。通算勝利数は954勝、うちGI勝利は11勝(ともに地方含む)。

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