2019年11月15日(金) 18:00
1番人気が予想されるダノンプレミアム(c)netkeiba.com、撮影:高橋正和
向こう正面2コーナーのポケットからスタートする京都芝・外回りの1600mコースは、そのまま700m余りの直線を走るタフなコース。このコースで行われるG1はなかなかペースが緩みません。向こう正面の半ばから11秒6前後のラップを刻み続け、そのまま直線でも11秒6を刻み続けた馬がゴール前で先頭付近にいると考えて良いレースでしょう。
しかし、ただ単に11秒6を刻み続けただけでは勝ち負けにならないのが、マイルCSがG1である所以(ゆえん)。そこからさらにゴール前でひと伸びできる馬、それを可視化する方法が、ラップタイムには存在するのです。
■マイルCS勝ち馬の、ラスト1ハロン加速ラップ実績 1987年1人気1着ニッポーテイオー ○ 1988年1人気1着サッカーボーイ ○ 1989年1人気1着オグリキャップ ○ 1990年10人気1着パッシングショット○ 1991年4人気1着ダイタクヘリオス ○ 1992年2人気1着ダイタクヘリオス ○ 1993年1人気1着シンコウラブリイ ○ 1994年1人気1着ノースフライト ○ 1995年4人気1着トロットサンダー ○ 1996年1人気1着ジェニュイン ○ 1997年2人気1着タイキシャトル ○ 1998年1人気1着タイキシャトル ○ 1999年1人気1着エアジハード ○ 2000年13人気1着アグネスデジタル ○ 2001年4人気1着ゼンノエルシド ○ 2002年11人気1着トウカイポイント ○ 2003年5人気1着デュランダル ○ 2004年1人気1着デュランダル ○ 2005年3人気1着ハットトリック × 2006年1人気1着ダイワメジャー ○ 2007年1人気1着ダイワメジャー ○ 2008年4人気1着ブルーメンブラット○ 2009年1人気1着カンパニー × 2010年13人気1着エーシンフォワード× 2011年5人気1着エイシンアポロン ○ 2012年4人気1着サダムパテック ○ 2013年2人気1着トーセンラー ○ 2014年8人気1着ダノンシャーク ○ 2015年4人気1着モーリス ○ 2016年3人気1着ミッキーアイル × 2017年4人気1着ペルシアンナイト ○ 2018年5人気1着ステルヴィオ ○
上記一覧のとおり、過去32年のマイルCS勝ち馬延べ32頭のうち28頭(88%)は、該当年マイルCS以前に“ラスト1ハロン加速ラップ”での勝ち鞍、もしくは重賞で4着以内の好走実績を持っていました。速い遅いは関係なく、
11.9-11.6-11.5 12.5-12.7-12.6
などのように、最後の1ハロンで加速するレースラップです。
“ラスト1ハロン加速ラップ”というのはかなり珍しいもので、全体の0.5%程度しか存在しません。そういった中で
1990年10人気1着パッシングショット○ 2000年13人気1着アグネスデジタル ○ 2002年11人気1着トウカイポイント ○ 2014年8人気1着ダノンシャーク ○
といった人気薄での勝ち馬までもがこの条件をクリアし、マイルCSを制しているという点特筆すべきものだと思います。
それを踏まえて、今年のマイルCSに登録している馬の“ラスト1ハロン加速ラップ実績”を掲載しておきます。勝ち鞍、もしくは重賞5着以内の実績を持っている馬が“○”。天皇賞(秋)2着で人気が確実視されるダノンプレミアムが“×”となっているのが注目点。3走前のマイラーズCではラスト1ハロン11秒1の脚を見せていますが、それでもラスト3ハロンラップは「10.9-10.3-11.1」。最後に加速してはいないのです。
■2019年マイルCS出走予定馬の、ラスト1ハロン加速ラップ実績 アルアイン ○ インディチャンプ ○ エメラルファイト × カテドラル × クリノガウディー × グァンチャーレ × ダイアトニック × タイムトリップ × ダノンキングリー ○ ダノンプレミアム × フィアーノロマーノ × プリモシーン × ペルシアンナイト ○ マイスタイル × モズアスコット ○ レイエンダ ○ レッドオルガ ×
■プロフィール 岡村信将(おかむらのぶゆき) 山口県出身、フリーランス競馬ライター。関東サンケイスポーツに1997年から週末予想を連載中。自身も1994年以降ほぼすべての重賞予想をネット上に掲載している。1995年、サンデーサイレンス産駒の活躍を受け、スローペースからの瞬発力という概念を提唱。そこからラップタイムの解析を開始し、 『ラップギア』 と 『瞬発指数』 を構築し、発表。2008年、単行本 『タイム理論の新革命・ラップギア』 の発刊に至る。能力と適性の数値化、できるだけ分かりやすい形での表現を現在も模索している。
1995年以降、ラップタイムの増減に着目。1998年、それを基準とした指数を作成し(瞬発指数)、さらにラップタイムから適性を判断(ラップギア)、過去概念を一蹴する形式の競馬理論に発展した。 『ラップギア』 は全体時計を一切無視し、誰にも注目されなかった上がり3ハロンの“ラップの増減”のみに注目。▼7や△2などの簡単な記号を用い、すべての馬とコースを「瞬発型」「平坦型」「消耗型」の3タイプに分類することから始まる。瞬発型のコースでは瞬発型の馬が有利であり、平坦型のコースでは平坦型に有利な流れとなりやすい。シンプルかつ有用な馬券術である。
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