【チャンピオンズC】芝GI馬タイムフライヤー ダートでも「勝利描ける」松田国英師の“二刀流理論”

2019年11月25日(月) 18:02

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タイムフライヤーを管理する松田国英調教師(撮影:大恵陽子)

ホープフルSで芝GIを勝利したタイムフライヤーがダートに矛先を変え、チャンピオンズカップに挑みます。管理する松田国英調教師は過去にクロフネやベルシャザールを芝から転向させてダートGIを制覇。スピード重視の芝とパワーが要求されるダートは一見、別物のように感じますが、ハイレベルのレースになるほど芝馬の持つ“ある特性”がダートで生きると松田師は語ります。松田師が考える「芝馬でダートGIを勝つ理論」とはどのようなものなのでしょうか。

(取材・構成:大恵陽子)

ポイントは関節の可動域

――いきなり本題に入りますが、なぜ芝で活躍していた馬をダート、それもGIで活躍させることができるのでしょうか?

松田国英調教師(以下、松田師) デビューの頃の関節の構造として、芝馬は柔らかくてスナップが利くので、肩関節やいろんな関節の可動域が広くて柔らかいです。そのため、歩幅が大きくなります。対してダート馬は球節などが硬く、可動域が狭いため、どうしても上に持ち上げて走ろうとします。それでもダートの条件戦は勝てるんですが、オープンや重賞、GIになるとスピードが要求されるので、しなやかさや関節の可動域に基づく歩幅の大きさも必須になります。そうなるとダートより芝で通用していた馬がGIの場合には有利になると想定できます。

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ホープフルSで2歳の頂点に立ったタイムフライヤー(撮影:下野雄規)

――そういった理論に基づいて、クロフネやベルシャザールなど芝・ダート両方で活躍する馬を輩出してきたんですね。

松田師 日本ダービーで5着くらいにくる馬だと秋に重賞で通用し、2〜3着だとGIで通用すると思います。ただ、それぞれに事情があって、NHKマイルCを勝ったクロフネの場合は、アグネスデジタルがいたので天皇賞・秋の出走枠に入れませんでした。年が明けたらドバイでレースをしたくて、フェブラリーSを使うことは決めていました。

 ベルシャザールの場合は日本ダービー3着ですから、芝で通用するだけの力はあるでしょうが、種子骨を骨折しました。普通であれば難しかったかもしれませんが、さすが社台ファームは長い時間をかけて復帰させてくれました。芝ではオーバーワークになってしまうスピードが出て、馬に無理をかけてしまう部分がありますが、ダートの場合は8cmの砂があってスピードが出にくいです。種子骨に無理をかけたくないので芝を使わずダートにいきました。

 ベルシャザールのお父さんはキングカメハメハですし、クロフネもフレンチデピュティなので血統の裏付けもありました。

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ジャパンカップダートでGIを制したベルシャザール(C)netkeiba.com

――それぞれいきさつは異なるものの、クロフネもベルシャザールも武蔵野Sを叩いてジャパンカップダート(チャンピオンズCの前身)を勝ちました。そしてタイムフライヤーも同じく前哨戦に武蔵野Sを選びました。

松田師 武蔵野Sの1600mは使い勝手がいいんです。スタート後、向正面の直線が長くてゆっくり行って、ワンターンで最後も長い直線。息をつくったり、コントロールのチェックをするのに最適なんです。チャンピオンズCと似た距離の2100mや1800mじゃないの? って思うかもしれないですが、・・・

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