【原田和真騎手】松岡正海騎手の後押しを受けて… デビュー8年目でつかんだGI初騎乗 (無料公開)

2019年12月08日(日) 18:02

今週のface

▲デビュー8年目でGI初騎乗のチャンスをつかんだ原田騎手がいまの気持ちを語る (C)netkeiba.com

貧しい子供時代、騎乗馬集めに苦労した日々。様々な苦難がありながらも、「大器晩成」と自分に言い聞かせてきた原田和真騎手に、デビュー8年目にしてGI初騎乗のチャンスが巡ってきました。

美浦所属ながら騎乗するのは栗東・加用正厩舎のプリンスリターン。そこには面倒見のいい先輩・松岡正海騎手の存在、受け入れてくれたオーナーや調教師、そして「GIに乗れるなら」と同馬のためだけに決めた栗東滞在など多くの要因がありました。

(取材・構成:大恵陽子)

騎乗のきっかけは松岡騎手

――今日12月4日、朝日杯FSに向けてプリンスリターンの1週前追い切りが行われました。

原田和真騎手(以下、原田騎手) 1週前なのである程度気合いをつけて、しまいは一杯にやりました。

――デビュー8年目でいよいよGI初騎乗のチャンスが巡ってきました。今のお気持ちはいかがですか?

原田騎手 すごい楽しみなんですけど、GIに乗れるだけで満足せずに、なんとか見せ場をつくりたいなと思っています。

――原田騎手は美浦所属。プリンスリターンは栗東・加用正厩舎所属ですが、どういったきっかけで出会ったんですか?

原田騎手 夏の北海道で乗り馬があまり集まらなかったのですが、攻め馬に乗っていれば名前も覚えてもらえるので、松岡さん(松岡正海騎手)が「じゃあ、攻め馬回してあげる」って言ってくださったんです。その中の1頭にプリンスリターンがいました。松岡さんにはお世話になりっぱなしです。

――松岡騎手、とても面倒見がいいですね。デビュー前から調教に乗られたんですか?

原田騎手 はい、入厩した初日から僕、跨ったんですけど、なかなか元気な馬で、乗る時に嫌がられて、振り落とされるみたいな感じでいきなり落馬しちゃったんです。

――では、第一印象というと…

原田騎手 なかなかのクセ馬だなって印象がありました。松岡さんから「乗れる?」と聞かれたんですが、「大丈夫です! しっかり新馬まで調教つけます!」と答えたら、松岡さんが「先生とオーナーにもお前が調教乗ってるってこと話通してやる」と言ってくださいました。

 社長と加用先生からも「原田でいいよ」と言っていただいて、新馬戦に僕が乗ることになったんですよ。

――デビュー前、追い切りでの手応えはいかがでしたか?

原田騎手 当該週の芝での追い切りはすごい良くて、手応えはめちゃめちゃありました。けど、乗り替わりが怖かったんで「良いです」とかは何も言わなかったです。あんまりいいこと言うと、「アイツで大丈夫か?」って思われちゃうんじゃないかなっていうのがあったんで(苦笑)。

 少し気の悪い部分もあったんで、追い切りがどうなるかなって思ったんですけど、走り出すと真面目でした。

――レース前にそれだけの手応えを感じていると、ワクワクしたでしょうね。

原田騎手 そうですね!「北海道に来て良かったな」って新馬戦を勝つ前から思いました。

――そして、結果も良かったです。

原田騎手 思った通りの競馬ができましたし、最後のひと伸び、併せてからの「抜かさせない」って根性がついていますね。

――続く函館2歳Sではプリンスリターンも好スタートを決めましたが、内から勝ち馬のビアンフェがダッシュよくハナを奪い、3着でした。

原田騎手 この時はめちゃめちゃ具合が良かったです。ただ、元々気合いのいい馬だったので、この頃はある程度折り合いに専念するように調教をつけようと思っていました。

 僕、その時から朝日杯とかその先のレースを考えて視野に入れていたので、ゲートが速くてそのままの勢いで行っちゃうと、血統が血統なだけにこなせる距離も限られてくるんじゃないかなって考えて慎重に進めていました。

――3戦目のすずらん賞では6着。道中も直線の伸びも、これまでの2戦に比べて少し物足りないように感じました。

原田騎手 調教も性格も、掴みどころがなかなか難しい馬で。この時は調教でキリッとして、追い切りの動きも申し分なく、「これで仕上がったかな」と思って競馬に行ったら、もう…意外とポケーッとしていたんです。「もう1本くらい足りなかったのかな」って。その失敗もあって、栗東に調教をつけに来させてもらっています。

――直談判をした、というわけですか?

原田騎手 乗り替わりになってもしょうがない状況だと思っていたんですが、加用先生が「社長に言っといてやる」と言っていただいて、僕も直接、北海道に行って「お願いします。栗東に行きます」と伝えました。

――実際にはいつから栗東に来られたんですか?

原田騎手 ききょうSの2週間前から来させてもらいました。だから、勝った時はめちゃめちゃ嬉しかったです。

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▲乗り替わりも覚悟したところからの巻き返し、大きな一勝となったききょうS (C)netkeiba.com

今週のface

▲無事に勝利できたことで、安堵する原田騎手 (C)netkeiba.com

――原田騎手はこれまで障害レースに活路を求めたり、軌道に乗りかけた頃に落馬負傷もありました。それだけに嬉しい1勝だったでしょうね。

原田騎手 ずっと「自分は大器晩成」って言い聞かせていました。暇な時間があるといろいろと考えちゃうので、時間をつくらないようにひたすら攻め馬に乗っていました。

 なかなか騎乗馬が集まらなくて、元々所属していた先生から「障害に乗れ」と言われて障害も乗っていたんですけど、そこで得られるスキルもありました。よくクセ馬に乗っていたんで、騎乗に関してはかなり自信はあります。

――障害に騎乗したことでどんな面がプラスになりましたか?

原田騎手 障害を飛んだり躓いたり、一歩入れる時にスピードが落ちたりとかの馬の動きの中で人がどれだけついていけるか、というバランスや騎座が障害で培われて、プラスになりましたね。

まさかの「朝日杯、空いてます!」宣言!?

――話はプリンスリターンに戻りますが、担当の前田功士厩務員とは普段、どんなお話をされていますか?

原田騎手 北海道からずっとコンビでやってきて、「背腰が張ってきた」といった話も「この馬ならこれくらいでも大丈夫」って分かりやすく答えてくれます。だから僕も調教しやすいですし、馬に対して不透明な部分がない状態ですね。

 それでも生き物ですから、分からないところは分からないですし、もうちょっとできるんじゃないかって部分も出てきますが、あまり求めすぎても馬本来のいい部分を潰しちゃう可能性もあるので、ある程度バランスよく抜き差しするようにしています。ただでさえ、気合いの入りやすい馬なので。

――今回はいつから栗東に滞在しているんですか?

原田騎手 プリンスリターンが放牧から帰ってきた次の週くらいの11月19日からです。火曜日から金曜日までは毎日調教に乗って、先週と先々週はレースがなかったので土日も乗っていました。

――今週からGI登録馬用の特殊ゼッケンを着けての調教ですね。

原田騎手 攻め馬だけだと、このゼッケンで乗ったことはあるんですけど、いざ自分が競馬に乗る馬がそれを着けているとすごい嬉しいですよね。「乗せてもらえるんだな〜」って本当に感謝しかないです。

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▲GIゼッケンでの調教に、騎乗の実感と関係者への感謝を感じると原田騎手 (C)netkeiba.com

――GI初騎乗について松岡騎手から何か言葉はかけられましたか?

原田騎手 今回は特にないんですが、すずらん賞の後に「もし、ききょうSを勝てればGI」という話を社長がしてくださいました。その時に松岡さんが「お前、GI乗れるのか。社長、僕、朝日杯空いています!」って言っていました(笑)。やめてー! って思いましたね。

――死守できましたね(笑)。前走では1F(200m)の距離延長に対応しましたが、今回はさらに1F延長。どうでしょうか?

原田騎手 息の入りは新馬の頃から良かったんで、大丈夫だと思います。前回、1400mに乗って、直線の感じもある程度頭の中に入っているんで、1F延長で馬に対してのアプローチのかけ方とか、だいたいの構想はあります。

――いよいよ来週、楽しみですね!

原田騎手 あまり気負い過ぎて自分のことばかり考えると焦ったり緊張して良くないので、「馬の実力を100%出して、馬の名前を覚えてもらおう」と思っています。4コーナーでは名前を呼んでもらえる位置にいたいですね。

 今朝(12/4)、追い切りが終わったので、明日、馬の状態を見て、それで現状維持かもうワンギアを来週で上げるかを決めたいと思います。

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