2020年01月04日(土) 12:00
何にせよ、寒さに耐えたものには凛とした強さがある。ふきのとうの苦味、雪割草も若紫が五感に染みるのは、越冬の喜びと響き合うからではないか。新しい年を迎える心の中には、こうした新鮮な感覚が満ちている。
年明け初戦の中山金杯にはあらゆる経験を積んだ歴戦の古馬たち、新しい戦いの場に登場したばかりの4歳馬と、多士済々の顔ぶれが2000米を走る。一年の計は金杯にありではないが、最初の重賞という特別な思いはいつも一緒だ。ハンデ重賞だという点だけでなく、上がりのかかる冬の中山競馬場の馬場を乗り切らねばならず、どの馬にも他に負けない踏ん張りの強さがあって、それを見極めるレースだ。それには、近走、そういう力強さを感じるレースが出来ていたかを知らなければならない。
競馬では、強豪相手にもまれたり、GIのような大きな舞台を経験したことで、見違えるほどに強くなったりすることがある。タイトルのかかったレースや、強豪たちの凄いところは、最後の直線でのしのぎあいで、その踏ん張り合いの中でもまれたことで馬が目覚めることがあるのではないかと思ってきた。
万物が寒さに耐えるこの時期だからこそ、そうした凌ぎあいを経験してきた馬に心が引かれる。今年の中山金杯には、常連のディープインパクト産駒はともかく、ステイゴールド産駒が複数出走してきた。現役時代、4度のGI2着からシルバーメダリストとの異名をとり、50戦目の最終戦、香港でGIレースを初めて勝ったステイゴールドは、その産駒から多くのGI馬を輩出してきた。だが、その多くはレースを使い込むことで強さを増したものばかり。しのぎあい、踏ん張り合いを経て頭角をあらわすという特徴がある。
今年のクレッシェンドラヴもそうした一頭だ。オープン入りして七夕賞2着、オールカマー5着、そして福島記念で重賞初勝ちしたのが5歳秋、遅咲きであることは間違いない。昨年の1、2着ウインブライト、ステイフーリッシュもステイゴールド産駒で、5歳と4歳だった。ただこの2頭は、早くから重賞勝ちがあり、中山の実績もあった。粘り強くはい上がってきた努力型ではなく、可能性を秘めていた存在だったのだ。この2年で4歳馬が3頭も連対を果たしているが、どれも前年の3歳時に重賞を勝っていた。しのぎあい、踏ん張り合いを経て頭角をあらわすケースはそんなに多くはない。今年のクレッシェンドラヴは、数少ないケースだけに、どんな頑張りを見せるか注目している。
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長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。
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