サウジC目前! ドバイ・カタール・サウジアラビア…それぞれの道を模索する中東の競馬情勢

2020年02月24日(月) 18:01

教えてノモケン

▲チャンピオンズCの1・2着、クリソベリルとゴールドドリームが参戦(C)netkeiba.com

 高額賞金で注目を集める新設国際競走、サウジカップ(ダート1800m)が2月29日、サウジアラビア・リヤドのキングアブドゥルアジズ競馬場で行われる。メーンカードの同レースが賞金総額2000万ドル(約22億円)。1着賞金が1000万ドルで、5着でも100万ドルだから、フェブラリーS(2月23日東京・GI)の1着賞金より多い。6つの前座レースを含めた賞金総額は2920万ドル(32億1200万円)に上る。

 日本からも昨年のチャンピオンズC(GI)1、2着のクリソベリル、ゴールドドリームが参戦。欧州長期遠征中のディアドラも、ネオムターフC(芝2100m=賞金総額100万ドル)に参戦する。中東ではドバイW杯デーが定着して久しいが、この時期にサウジアラビアが大イベントを新設した背景や、国内競馬界との関連について考える。

観光ビザも解禁 ドバイの後を追う?

 ドバイ国際競走は1996年に創設され、今年で25回目となる。北米の祭典、ブリーダーズカップ(BC)と競うように賞金額をつり上げ、上半期の大型イベントとして定着した。中東の盟主の座をイランと争うサウジアラビアは、競馬に関してはそれなりの歴史を持つ一方で、国自体が厳しい戒律で知られ、外との交流自体が少ない状況だった。

 ところが、昨年9月末に観光ビザの発給が解禁され、現在は日本を含む世界49カ国に申請資格を認めている。石油産業に依存する従来の経済構造を改め、観光振興へカジを切るという意志の表明だった。

 ドバイ国際競走も、思えば同様の文脈で新設された。実際、新設当時の96年は、競馬場の周囲は何もないような状況だったが、今日では高層ビルが立ち並び、交通網などのインフラ整備も一気に進んだ。サウジアラビアは人口約3370万人(18年、世界銀行調べ)と、UAEの3.6倍の規模で、若年層が多い。UAEの場合は、将来的に地下資源が枯渇することを見据えた布石だった。

 四半世紀近くを経た今日、サウジアラビアが観光にカジを切ったのは、世界的に温暖化対策が叫ばれ、化石燃料の使用抑制の流れが広がりつつある点や、米国を中心にシェールオイル開発が進んだ結果、原油価格が抑制される基調が続くことを意識した結果と思われる。

カタール ドバイとの連携は挫折

 サウジCの施行時期が2月末に設定されたのも、当然ながら3月末のドバイ国際競走との連携を意識したものだ。実は、カタールも似た方向を模索した経緯がある。昨年2月、栗東・森秀行厩舎のユウチェンジが、アイリッシュ・サラブレッドマーケティングC(カタール・アルライヤン=GII、芝1600m)に参戦して9着と敗れたが、同レースはカタールが2月3週に設定した国際競走の1つだった。・・・

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野元賢一

1964年1月19日、東京都出身。87年4月、毎日新聞に入社。長野支局を経て、91年から東京本社運動部に移り、競馬のほか一般スポーツ、プロ野球、サッカーなどを担当。96年から日本経済新聞東京本社運動部に移り、関東の競馬担当記者として現在に至る。ラジオNIKKEIの中央競馬実況中継(土曜日)解説。著書に「競馬よ」(日本経済新聞出版)。

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