【高松宮記念】シヴァージ、芝転向で金星を! 野中厩舎の秘蔵っ子がベールを脱ぐ

2020年03月24日(火) 18:01

GIドキュメント

▲オープン入りと同時に芝に転向したシヴァージ (撮影:大恵陽子)

ダートで堅実な走りを続けてきたシヴァージが、オープン入りと同時に芝に転向。前走・北九州短距離Sでは大外から見事な差し切り勝ちを決め、GI・高松宮記念に駒を進めます。

芝・ダートを超えての活躍といえば、芝のGI馬・モズアスコットが先月、フェブラリーSを制覇しましたが、シヴァージは逆パターン。セリで落札時から「朝日杯FSに出走させたいと思っていました」と野中賢二調教師は早くから芝への適性を感じ、ダートで惜敗を続けた1年間は「こんなものじゃない」と歯がゆさを抱き続けたといいます。

なぜ、このタイミングでの芝転向だったのか、また芝への可能性について伺いました。

(取材・構成:大恵陽子)

「溜めたら弾けるはず」悩み続けた準OP時代

――前走の北九州短距離Sは重馬場の中、見事な大外からの差し切り勝ちでした。

野中賢二調教師(以下、野中師) ありがとうございます。時計がかかっている馬場も良かったのかなと思います。

――デビューはダート1200mで、昨年10月に神無月S(3勝クラス)を勝つまでの13戦すべてがダート。4勝、2着5回、3着3回、4着1回と掲示板を外したことは1度もありませんでした。しかし、オープン初戦は芝の重賞・阪神カップ。なぜ芝に転向したのでしょうか?

野中師 元々、芝デビューのつもりで買ってきた馬だったんです。アメリカのトレーニングセールでたくさん馬を見た中で、一番調教の動きが良く、チームみんなで意見が一致した馬でした。朝日杯FSに行けたらな、と思ったんですが、デビュー前に骨瘤が出て、焦らず1回休ませたので3歳1月にデビューが遅れました。

――芝での素質を感じながらも、体質のためダートデビューだったんですね。

野中師 ダートでもと思っていましたが、やっぱり走りましたね。

――3歳のうちに3勝を挙げて1600万下(現3勝クラス)に上がると、昇級初戦でいきなり2着。その後もずっと2、3着と、クラスが上がっても堅実な走りを見せました。

野中師 堅実だけど、人気ばかり背負って勝ちきれないレースが1年続きました。負けている相手はホウショウナウとかヤマニンアンプリメなど強い相手ばっかりなんですけどね。

 福永祐一騎手が乗った時(2019年3月2日播磨S)、中団くらいから脚を使う競馬をさせようと思ったんですけど、パサパサの馬場で思ったより脚を使えず、「あれ? 溜めたら弾けるイメージがあるんだけど、うーん……」ってモヤモヤがずっとあって、条件を合わせてあげたらもっと走るはずだと思っていました。

――その頃から芝への転向は考えてらしたんですね。

野中師 私の中ではもうずっと「芝にいきたい」っていうのはあったんですけど、ダートでそこそこ結果も出ちゃうので。でも、内容が面白くないと感じていました。勝った時のパフォーマンスや調教の動きからすると、「シヴァージはこんなもんじゃないよな」と負けるたびに思っていました。

GIドキュメント

▲「こんなもんじゃない」シヴァージの力を信じ続けた野中調教師 (撮影:大恵陽子)

――悔しさや歯がゆさを感じ続けていたのですね。

野中師 この馬には期待していて、私が気に入って選んだ馬を初めてオーナーに買っていただきました。1000万下(現2勝クラス)とはいえ、青梅特別(2018年6月17日)を勝った時は最後は持ったままの余裕でめちゃくちゃ強かったです。あの時はまさかその後1年も勝てないなんて思っていませんでした。

鍵は芝の速いタイムへの対応

――結果的に、3勝クラスをダートで勝ち上がって、オープン昇級初戦から芝に転向しました。

野中師 オープンに上がって持っている賞金の問題や、体質もだいぶ強くなってきたのでそこで芝にいこうという話になりました。もっと早くから芝に転向できたら良かったという考えもありますけど、タイミングってこんなものなんでしょうね。馬って本当に難しいです。

――初芝となった阪神Cは7着。

野中師 前目の位置を取りにいってしまいましたが、内容は悪くありませんでした。

――続く淀短距離Sは3コーナーで進路がなくなったり、直線もズラッと前が壁で外まで出さざるを得ませんでしたが、最後は脚を伸ばして4着と見せ場がありましたね。

野中師 芝の短距離の方がレース内容は良くなってきています。前に行って抜かれるんじゃなくて、後ろから差して届かなかった、という方がメンバーや展開次第で何とかなる感じがします。それは勝ちきれない面もありますけど、シヴァージは脚をちゃんと使うようになっているので、ハマれば面白いと思います。

GIドキュメント

▲「脚をちゃんと使うようになっているので、ハマれば面白い」と陣営も期待 (撮影:大恵陽子)

――まさに前走の北九州短距離Sは道中の不利もなく、末脚を発揮してゴール寸前で差し切りました。

野中師 あとは時計ですね。ダートで勝った時は軽くて時計が出る馬場でしたが、芝だとこないだの小倉は時計のかかる馬場でしたし、2走前の淀短距離Sも京都にしては時計のかかる馬場でしたから。

――速いタイムへの対応や高松宮記念当日の馬場状態などがポイントになりそうですね。状態はいかがですか?

野中師 1週前追い切りは18日に坂路で行って、いい動きでした。メンバーも強いですが、ここでどのくらいで走れるのかなって楽しみを持っています。

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

netkeiba特派員

有名予想家・ライターによるGIスペシャルコラムや、有力馬密着レポート、1週前からの調教レポートなど、GIレースの攻略情報をどこよりも詳しく、より濃密にお届けします。公開はプレミアムサービス限定となります。

関連情報

新着コラム

コラムを探す