2020年03月28日(土) 12:00
先月27日、大井、名古屋、佐賀で無観客競馬が始まってから約1カ月が経過しました。
当初は、政府による2週間程度のイベント中止、延期、規模縮小の要請を受けて始められたもの。しかし、ここまで続けてきてもなお、通常開催に戻る見込みは全く立っていません。
競馬が開催できているだけマシ、と言い続けてきましたが、中止に追い込まれる可能性も大きくなってきたように思います。
理由は、関係者の感染リスクが高まっていることに加え、首都封鎖といった事態が現実味を帯びてきたから。そのくらい、新型コロナウイルスの感染拡大は深刻さを増しています。
先週の当コラムに書いたように、私は21日に行われた帯広競馬のばんえい記念を見に行ってきました(インターネット中継の仕事もありましたけどね)。
もちろん当日は無観客開催。スタジオにいた私はわからなかったのですが、競馬場に隣接する商業施設の「とかちむら」には、大勢のファンが集まっていたという報告を受けました。
施設の一角にコースを眺められるところがあって、どうしてもあの大一番をナマで見たいという方々が、そこから熱い視線を注いでいたそうです。
先日の阪神スプリングジャンプでも同じようなことがありました。オジュウチョウサンが出走するからには、何が何でもナマ観戦したい。そんな熱烈なファンが、競馬場を見下ろせる山(丘?)の上に陣取ってレースを見たとのこと。SNSには、その方が撮影したと思われる写真が載っていました。
ひょっとしたら、“非常事態”だからこそ、なのかもしれません。ばんえい記念や阪神スプリングジャンプを見に行った方々の場合は、そういう気持ちが“良い形”で表れたと言えそうです。
反対に、その思いが“良くない形”で表れると、買い占めや買いだめにつながってしまうような気もしてきました。できるだけ普段どおりの生活を続けたいという強い気持ちから、必要不可欠と思われるモノを身の回りに置いておきたくなる。それがそばにあることで安心感を得ようとする心理です。
だからこそ、いくらモノの生産は止まっていない、在庫は十分にあると言われても、いつも以上にそれらのモノを買ってしまうのではありませんか?
コロナ関連のニュースを見ると不安が募るばかり。私もたびたび心を揺り動かされています。こんな気持ちになったのは、東日本大震災直後に原発事故が起きたとき以来です。
あのときもそうでしたが、今回も競馬の開催が不安感や恐怖感をいくらか和らげてくれています。どうかこのまま中止されることなく、開催が続けられますように。
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矢野吉彦
テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。
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