コロナ禍の先、競馬はどう変わるか

2020年04月28日(火) 18:00

無観客開催後に問われる各主催者の動き

 前回は今年2歳馬がデビューする新種牡馬について取り上げた。早い時期の新種牡馬の活躍なら2歳戦が充実しているホッカイドウ競馬だろうと考えてのことだったが、新種牡馬産駒の勝利第1号は、なんと、浦和だった。

 南関東で今年最初に行われた新馬戦、4月24日浦和のドリームチャレンジ(800m)を勝ったのは、今年の新種牡馬ではもっとも産駒数が多い(血統登録189頭)ドゥラメンテ産駒のトーセンウォーリア(牡・小久保智厩舎)。母はユニコーンS4着などがあるアンズチャン(その父フレンチデピュティ)という血統。スピードの違いで先頭に立つと、直線は手綱を抑えたままの楽勝で2着に5馬身差をつけた。

 さらに翌週、大井開催初日の27日に行われた新馬戦(1000m)でも新種牡馬産駒が勝利。マクフィ(父ドバウィ)産駒のマテーラフレイバー(牡・福永敏厩舎)で、2着には3馬身差だが、脚色を測りながらの楽勝だった。マクフィは2011年から英・仏・ニュージーランドなどで供用され、すでに産駒にはGI勝ち馬が5頭。日本で供用される以前に輸入された産駒にはJRAで4勝のアールブリュットがいる。

 さて、個人的なことではあるが、3月25日の浦和・桜花賞を取材したのを最後に競馬場には行っていない。競馬ライターを始める以前も含め、1カ月も競馬場に足を運んでいないというのは、少なくとも25年以上なかったのではないかと思われる。

 今は“感染しない・させない”ということを最優先に考えるならばそうするしかない。地方競馬の各主催者も限られた人数ながら、重賞レースなどでは写真や関係者コメントなどを提供してくれているので、可能なら電話取材などもして、それらをもとに記事を書くしかない。

 コロナ禍は先が見えず、いつかは“収束”するのだろうが、完全な“終息”は相当先になると思われる。そしてその先は、社会のあり方自体が変わるのではないかとも言われている。たとえば閉店・廃業などが増えると思われる飲食業などはその最たるものだろう。一般の企業でもテレワークやオンラインでの会議・打ち合わせが当たり前になるかもしれない。

 それは競馬も他人事ではない。今は無観客で滞りなく開催が続いているが、それも長く続けばどうなるか。厩舎関係者で集団感染が発生すれば競馬をストップしないわけにはいかず、経済基盤の大きくない地方競馬ではそのまま廃止ということにもなりかねない。

 そうした中で、4月24日(金)に開幕したばんえい競馬の売上には驚いた。その初日、1日の売上5億9033万8900円は、帯広市単独開催後の従来のレコードを1億6千万円以上、上回った。この日、ほかに開催されていたのは浦和、名古屋だけで、単独ナイターだったということはあっただろう。続く25日(土)〜27日(月)の3日間も、いずれも3億円を超えた。2019年度のばんえい競馬は、帯広単独開催後はじめて1日平均の売上が2億円を突破したが、それを考えると4日連続の3億円超えはすごい。

 2019年度の地方競馬は、売上全体に占めるネット(電話)投票の割合が78.0%だった。今、無観客でも地方競馬の売上がほとんど落ちていないことを考えると、無観客が解除となったあと、これまで以上にネット投票の占める割合が大きくなるものと思われる(無観客開催中はほぼ100%だが)。そうしたときに競馬はどう変わるか。

 コロナ禍とは関係なく、地方競馬は近い将来にさらなる変化がある。盛岡競馬場、佐賀競馬場では2018年秋に照明設備が設置され薄暮開催が始まり、佐賀では今年10月からナイター開催が予定されている。また名古屋競馬場は、2022年に現在の弥富トレセンに移転し、その後はナイター開催を実施するとされている。そうなると、地方競馬の13主催者のうち、通年ナイターではないにしても、ナイター開催可能な競馬場が、盛岡まで含めると10にもなる。

 ネット発売が馬券の売上全体の80%ほどを占めるようになった地方競馬では、売上が突出している南関東は別として、単独でのナイター開催日は確実に売れる。これは、馬券ファンにとって、もはや地方競馬が“地方”のものではないことを示している。

 コロナ禍による無観客が明けたとき、そしてさらにその先、ナイター開催が今以上に競合するようになったとき、地方競馬の各主催者がどのように他の競馬場と差別化を図って売上を伸ばすのか、今から考えておく必要はありそうだ。

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斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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