フィエールマン、母がスタミナタイプのディープ産駒は異端

2020年05月04日(月) 18:00

先週の血統ピックアップ

・5/3 天皇賞・春(GI・京都・芝3200m)

 中団を進んだフィエールマンがゴール直前でスティッフェリオをハナ差とらえて2連覇を達成しました。これで京都芝3000m以上のGIで3戦全勝。有馬記念以来の実戦で体調は完璧とはいえず、なおかつ不利な大外枠。それでも負けないあたり、この距離における地力の高さは抜けていました。

 母リュヌドールはイタリアのエリザベス女王杯にあたるGIリディアテシオ賞の勝ち馬で、調教国である地元フランスでは芝2500mのG2を勝っています。父ディープインパクトはスピードタイプの母と相性がよく、これまでの代表産駒の配合はほとんどがこのパターンでした。母がスタミナタイプのフィエールマンは異端といえます。類まれなステイヤーとしての資質はここにあります。芝3000m以上のGIを3勝した馬は過去3頭(メジロマックイーン、ライスシャワー、キタサンブラック)いましたが、4勝馬はいません。フィエールマンは来年の当レースで新記録に挑みます。

・5/2 青葉賞(GII・東京・芝2400m)
 好位のインを追走したオーソリティが直線で外に持ち出し、ヴァルコスにクビ差競り勝ちました。勝ちタイムの2分23秒0はレースレコード。2017年にアドミラブルが記録した2分23秒6を0秒6更新しました。馬場が速かったとはいえラスト1000mの57秒9は優秀です。

 父オルフェーヴルは現在、総合種牡馬ランキングで第4位。先日の大阪杯を制したラッキーライラック(重賞5勝)も同産駒です。同馬が属する5歳世代は4頭の重賞勝ち馬が出ていますが、4歳世代はゼロ。しかし、現3歳世代はシャインガーネットとオーソリティが重賞を勝っています。同世代にはこのほかホウオウピースフル、ビターエンダー、ギベルティなどの素質馬を擁しています。

 母ロザリンドはJRAで未勝利に終わったものの、エピファネイア、リオンディーズ、サートゥルナーリアを兄弟に持つ超良血。つまり、名牝シーザリオの直系の孫です。母方にサドラーズウェルズを持つパターン、母の父がシンボリクリスエスであるパターンは父オルフェーヴルの代表的なニックスです。速いタイムで駆けた今回の反動がなく、さらにグンと上向くようだとコントレイルの強力なライバルに浮上します。

今週の血統注目馬は?

・5/9 鴨川特別(2勝クラス・京都・芝2000m)

 京都芝2000mに良績のある種牡馬はディープインパクト。2010年以降、当コースで産駒が20走以上した54頭の種牡馬のなかで連対率30.9%はトップ。当レースにはアドマイヤジョラスが登録しています。過去、京都芝2000mで[1-0-2-0]。2走前の稲荷特別はクビ、クビ差の3着でした。メンバー的にもここはチャンスでしょう。

今週の血統Tips

 先週土曜日の京都メインレース・天王山Sは、上位3頭をキンシャサノキセキ産駒が占め、1着サクセスエナジーと2着シュウジはいずれも59kgの別定重量でした。キンシャサノキセキ産駒は重い斤量に強いタイプなのだろうかと思い、それを確かめるために2010年以降、58.5kg以上を背負って平地競走で連対した馬を調べてみたところ、同産駒の連対例は今回の1、2着馬だけでした。最も多くの勝ち馬を出している種牡馬はキングカメハメハ。スズカデヴィアス(巴賞/59kg)、トゥザグローリー(日経新春杯/58.5kg)、ローズキングダム(京都大賞典/59kg)と3頭の勝ち馬の父となっています。

 重斤量で結果を残した種牡馬たちにこれといった血統的共通項があるわけではありませんが、馬格のある馬が有利なのは明らかで、天王山Sを勝ったサクセスエナジーは540kgの巨漢馬でした。馬格のない馬が重斤量を背負ったときは割り引くのが正しい作戦です。2010年以降、58.5kg以上を背負って平地競走で連対した馬は38頭いますが、うち37頭が馬体重462kg以上でした。

 ただ1頭の例外はドリームジャーニー。2010年のオールカマーで59kgを背負って2着のとき、同馬の馬体重はわずか422kgでした。2番目に軽い馬体重だった馬(18年ダイヤモンドSのフェイムゲーム、13年豊明Sのオリービン=いずれも462kg)と40kgの差があります。尋常でない何かを秘めた馬だと思うので、いずれ種牡馬として一発大物を出しそうな予感がします。

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栗山求

netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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