まだまだ止まらない的場文男騎手

2020年05月05日(火) 18:00

今年また新たな目標ができた

 すでに報じられているとおり、船橋の佐藤賢二調教師が5月1日(金)早朝に亡くなられた。そのわずか3日前には東京プリンセス賞をアクアリーブルで制したばかり。コロナ禍の状況で現在現地取材は自粛しているのだが、笑顔で口取り写真に収まり、普通にインタビューにも応じておられたので、ほんとうに突然のことだったのだろう。東京プリンセス賞の翌日には羽田盃でもブラヴールが2着に健闘していた。

 管理した活躍馬についても報じられているとおり。トーシンブリザードは2001年に無敗のまま南関東四冠を制覇。当時は、羽田盃、東京王冠賞、東京ダービーという南関東限定の三冠のあと、JpnIのジャパンダートダービーが行われていた。東京王冠賞はその後廃止されたため、この四冠は不滅の記録といえる。

 2017年にはヒガシウィルウィン、2018年にはキタサンミカヅキが、2年連続でNARグランプリ年度代表馬に輝いている。

 また2006年、チャームアスリープによって達成された南関東牝馬三冠もここまでのところ唯一の記録。同じく師の管理馬で重賞4勝を挙げたセレンが種牡馬になり、チャームアスリープに付けて誕生した産駒がブラヴール。残念ながらその場には立ち会えなくなってしまったが、父には出走が叶わなかった東京ダービーに挑むことになる。

 南関東のクラシック戦線にはほぼ毎年のように有力馬を出走させていて、近年も前述のような地方競馬を代表するような馬たちを管理していただけに、あまりに突然のことで残念としかいいようがない。

 さて今回の本題は的場文男騎手。地方競馬の最多勝記録を更新(2018年8月12日)してからはあまりニュースなどにもならなくなったが、5月4日現在で地方通算7298勝(ほかに中央4勝、海外1勝)をマークし、7300勝も目前。佐々木竹見さんのそれまでの最多勝記録(地方7151勝、中央2勝)をすでに150勝近くも上回っている。

 その的場騎手が、“あっぱれ”なことに63歳の今年、成績を盛り返している。

 昨年は地方739戦68勝(ほかに中央6戦0勝)で、1984年以来35年ぶりに年間勝利数が100勝に届かなかった。そのままゆっくり下降線をたどるのかと思いきや、今年はまた100勝ペースで勝ち星を重ねているのだ。下記は近5年、元日から4月下旬もしくは5月上旬の羽田盃の開催最終日までの成績(地方のみ、カッコ内は勝率)。

 2016年 383戦33勝(8.6%)
 2017年 346戦45勝(13.0%)
 2018年 360戦40勝(11.1%)
 2019年 275戦22勝(8.0%)
 2020年 232戦31勝(13.4%)

 騎乗数こそ減ってきているものの、勝率は近5年で今年が最高の数字。3月までは昼間開催のため地元大井開催が少ないが、ナイターの季節になれば開催日数が増えるので、必然的にこれからは騎乗数も増えるものと思われる。

 的場騎手は常々「目標があるから頑張れる」と語っている。2018年までの2、3年は、通算7000勝と、それに続く地方競馬の通算最多勝記録の更新(7152勝)という目標があった。ところがそれを達成したあとの昨年、68勝まで勝利数を下げてしまったのは、目標をなくしたからではないかと勝手に思っていた。そうしたところでの、今年の活躍だ。

 東京ダービーという、本人曰く「人生の宿題」はまだ残されているものの、じつは的場騎手には今年また新たな目標ができた。

 今年3月限りで引退した川崎の森下博騎手が残した記録だ。現役最後の開催として臨んだ3月4日に勝利を上げ、自身のもつ地方競馬における最年長勝利記録を64歳10カ月に更新。また最終騎乗となった3月6日、最年長騎乗記録も64歳10カ月2日となった。

 的場騎手と森下元騎手は地方競馬教養センターの同期で、デビューの時期はほぼ一緒だが、いわゆる学年では森下元騎手が1つ上。年齢では1年4カ月ほど森下元騎手のほうが先輩。それゆえ、的場騎手が最年長勝利記録&最年長騎乗記録を更新するとなれば、2021年7月以降となる。当り前だがあと1年以上も先だ。

 残念ながらコロナ感染が心配される現状では取材に行くこともはばかられるので、直接話を聞くことはできないが、おそらくそのあらたな“目標”でモチベーションが上がっているのではないか。

 現在でもオープンクラスの有力馬の騎乗依頼がたびたびあるというのも、63歳という年齢を考えると驚くべきことで、今年4月2日、JpnIIIのマリーンC(船橋)では中央のメモリーコウに騎乗して2着と好走した。

 自身のもつ最年長重賞勝利記録は、2018年9月19日に東京記念をシュテルングランツで制した際の62歳12日で止まっているが、その記録を更新する可能性もおおいにある。

 的場騎手の活躍はまだまだ止まらない。

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斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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