【オークス】新たなる名牝誕生の予感

2020年05月23日(土) 12:00

次なる舞台は未知の領域

 風薫る季節、樹々はほほ笑み花々は笑い、せせらぎは踊っている。健やかな力が溢れこぼれ、未来をみつめる小さな願いがみずみずしくキラキラ輝やいているこのとき迎えるオークス。どれもが、遥かなる名牝への軌跡を想い、ひた走り続ける。血の宿命に立ち向うその姿に胸を突き上げられてきたが、今年は間近にすることはできなくなった。それでも、戦いの跡は永遠に消えることはなく、残っていく。今はただ、オークスの情緒にひたって盛大な拍手で迎えてやりたい。

 牝馬クラシックの第2ステージ、無敗の桜花賞馬デアリングタクトの63年ぶり2頭目の無敗の二冠達成なるかが最大の焦点。距離が一気に800米延びるが、全てが未知の領域だから、可能性の問題に尽きる。勝つために問われるのは「折り合い」と「脚力」、その点がどうなるのか考えてみた。

 新馬戦を勝ちエルフィンSも勝ったときに陣営は、自信が確信に変わったと述べていたが、重馬場の桜花賞ではさらに圧巻の走りを見せた。レースの上がり3ハロンが38秒1というタフな競馬の中、後方から外に出し、最速の36秒6で無傷の3連勝、40年ぶり3頭目の最少キャリアで勝っていた。この上がり3ハロンのタイムは、次位の上がりを0秒5も上回っており、桜花賞組との勝負づけはすんでいると言える。前向きすぎる気性で皐月賞もダービーも2着に終りながら、菊花賞、ジャパンCと勝ったエピファネイアの最初の世代の産駒で、母シーザリオから名牝の道を約束されていると言っていい。距離が延びてさらに本領発揮とみたい。

 若駒のうちは、どうダメージを少なく走らせるかがポイントであり、少ないキャリアでも負けていないことに価値がある。体力不足でデビューを遅らせたデゼルは、体がしっかりし調教を重ねるごとに良くなっていくのを見極め、この3月にレースに登場して2戦2勝で本番を迎えている。前走のスイートピーSでは、スローペースを後方から32秒5という次元の違う脚を披露、大物感あふれる勝ちっぷりだった。母がフランスの2冠牝馬でわずか2頭だけを残して他界しているので、デゼルの役割は大きい。

 同じく2戦2勝のアブレイズは、エピファネイアをダービーで下したキズナの産駒。カイ食いがいいので体の心配をすることなく調教でき、レース上手で根性がある。余裕のローテーションで前に行ける脚質から今の東京の馬場が味方しそうだ。

 これらに対して、他の馬はキャリアで対抗する。5戦全てがプラス体重だったミヤマザクラ、2月生まれでハーツクライ産駒のクラヴァシュドールなどだ。

 新たな牝馬の時代を予感できる面々だ。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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