第241回を迎える伝統の一戦「英ダービー」展望

2020年07月01日(水) 12:00

1番人気は“驚異の末脚”を持つ新星

 先週お届けしたG1英国オークス(芝12F6y)に続き、同じく7月4日にエプソムで行われる第241回英国ダービー(芝12F6y)の展望をお届けしたい。

 ブックメーカー各社が3倍台のオッズをつけて1番人気に支持しているのが、イングリッシュキング(牡3、父キャメロット)だ。

 仏国産馬で、G1愛オークス(芝12F)勝ち馬チキータや、G1マッキノンS(芝2000m)勝ち馬マジックワンドらの甥にあたる本馬。アルカナ10月1歳市場にて21万ユーロ(当時のレートで約2744万円)で購買され、ランボーンを拠点とするエド・ウォーカー厩舎に入厩した。

 2歳10月にデビュー。初戦となったニューマーケットのメイドン(芝8F)は7着に大敗したが、続いて出走したニューキャッスルのメイドン(AW10F42y)では変わり身を見せ、後続に1.3/4馬身差をつけて初勝利を飾った。

 今季初戦となったのが、6月5日にリングフィールドで行われたLRダービートライアルS(芝11F133y)で、前半は最後方に位置した同馬は、徐々に進出して5番手で直線に向くと、強烈な末脚を繰り出し2.3/4馬身抜け出して快勝。勝ち時計の2分24秒36は、ここ30年の同競走では最速で、一気にダービー戦線の最前線に躍り出た。

 前走では若手のトム・マークアンドが騎乗したが、ダービーではフランキー・デットーリがブッキングされており、このあたりも人気を支える一因となっているようだ。

 続いてオッズ4.5〜5.5倍の2番人気に推されているのが、G1英二千ギニー(芝8F)に続く2冠を狙うカメコ(牡3、父キトゥンズジョイ)だ。

 米国産馬で、ハリウッドパークのG3セニョリータS(芝8F)勝ち馬スウィータースティルの5番仔となるカメコ。キーンランド9月1歳市場にてカタールレーシングの代理人に9万ドル(当時のレートで約1012万円)で購買され、ハンプシャー州のキングスクレアを拠点とするアンドリュー・ボールディング厩舎に入厩した。

 2歳7月にデビュー。サンダウンのメイドン(芝7F)を制し緒戦勝ちを飾った後、同じくサンダウンのG3ソラリオS(芝7F)2着、ニューマーケットのG2ロイヤルロッジS(芝8F)2着と重賞で惜敗が続いたが、ドンカスターの冠水でニューキャッスルに移設して施行されたG1フューチュリティトロフィー(AW8F)を快勝してG1制覇を果たしている。

 今季初戦となったのが6月6日にニューマーケットで行われたG1二千ギニー(芝8F)で、前半は中団で待機した同馬は、ゴール前で鋭い切れ味を発揮し、2度目のG1制覇を果たしている。

 父キトゥンズジョイの代表産駒であるロアリングライオンのように、10Fまでは楽にこなしそうだが、エプソムの12Fを乗り切るスタミナがあるかどうかは、走ってみないとわからないというのが正直なところだ。

 3〜5番人気には、最大で7頭出しの可能性があるエイダン・オブライエン厩舎の管理馬が並んでいる。

 1頭は、G1・2勝馬ジャパンの全弟で、タタソールズ10月1歳市場にて340万ギニー(当時のレートで約5億4193万円)という超高値でクールモアに購買されたモーグル(牡3、父ガリレオ)だ。

 2歳8月にカラのメイドン(芝8F)を制しデビュー2戦目で初勝利を挙げると、続いて出走したレパーズタウンのG2チャンピオンズジュヴェナイルS(芝8F)も制して重賞初制覇。しかし、続くG1フューチュリティトロフィーでは勝ち馬カメコに3.3/4馬身離された4着に終わっている。

 今季初戦となったのが、ロイヤルアスコット初日(6月16日)に行われたG2キングエドワード7世S(芝11F211y)で、1.91倍の1番人気に推された同馬はここでも4着に敗退したが、管理するオブライエン師からは、使っての変わり身を期待するコメントが出ている。

 同じロイヤルアスコット開催でも、開催2日目に行なわれたG3ハンプトンコートS(芝9F212y)に出走し、見事に勝利を挙げたのがラシアンエンペラー(牡3、父ガリレオ)だ。

 今年3月23日にナースで行われたメイドン(芝8F)を勝利しデビュー2戦目で初勝利を挙げると、次走は6月9日にレパーズタウンで行われたG3愛ダービートライアル(芝10F)に参戦。ここでは2着に終わると、中7日で出走したのがG3ハンプトンコートSで、道中後方待機から、直線大外一気の末脚を繰り出して優勝。見ていた者に強いインパクトを残した。

 もう1頭は、6月12日にカラで行われたG1愛二千ギニー(芝8F)で2着となったヴァティカンシティー(牡3、父ガリレオ)だ。

 G1二千ギニー(芝8F)など4つのG1を制したグレンイーグルス、G1愛千ギニー(芝8F)勝ち馬マーヴェラス、G1モイグレアスタッドS(芝7F)など2つのG1を制したハッピリーと、全兄姉に3頭ものG1勝ち馬がいる超良血馬がヴァティカンシティーだ。昨年10月、ダンドークのメイドン(AW7F)を制してデビュー2戦目で初勝利を挙げて2歳シーズンを終了。今季初戦となったのがG1愛二千ギニーで、勝ち馬シスキンから1.3/4馬身差の2着となっている。

 ポイントは、オブライエン厩舎の主戦ライアン・ムーアが、3頭の中でどの馬を選ぶかで、彼が騎乗する馬が3頭の中では最も上位の人気を集めることになりそうだ。

 英国ダービーの模様は、グリーンチャンネルで生中継(4日、24時30分〜25時30分)される予定で、日本の皆様もぜひご注目いただきたい。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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