【セレクトセール2020】新時代を迎えた当歳セッション

2020年07月23日(木) 18:00

ディープ&キンカメ産駒不在でも盛況ぶりは健在

 2日目の当歳セッションは、恒例の「比較展示」からのスタートである。午前8時〜10時の2時間をかけ、全馬が一斉に展示される光景はいつ見ても圧巻だ。早生まれの当歳馬の中にはすでに離乳を済ませて健気に1頭だけで立つ馬もいるが、大半はまだ母馬と一緒である。母子を合わせて約450頭もの一斉展示は、本当に見応えがあった。母馬の価値も加えると、いったい総額がどれくらいになるものか?などと考えてみたりした。

生産地便り

当歳セッション展示風景

 比較展示は制限なく見て歩けるので、開始早々から多くの購買関係者が目当ての上場馬を見に訪れて、ここかしこでじっくり品定めをする姿が見られた。

 セリ開始は前日と同様に午前10時。この日は226頭が上場され、203頭が落札、売却率は89.8%、総額83億3300万円(税抜き)を売り上げ、平均価格は4104万9261円と、史上最高額を記録した昨年の数字には及ばなかったものの、一昨年の231頭上場、205頭落札、売却率88.7%で82億5750万円を上回った。長らくリーディングサイアーランキングの1位と2位に君臨してきたディープインパクトとキングカメハメハの産駒が不在という新時代を迎えても、セレクトセールだけはコロナ禍の影響など全く感じさせないほどの健在ぶりであった。

 当歳セッションの1億円超えは11頭。因みに昨年は20頭が億を超えていたが、うちディープインパクト産駒が6頭、キングカメハメハ産駒が2頭で、これらを合わせると8頭になる。今年はその分がそっくりなくなった結果と言えなくもない。

 最高価格馬は365番ヒルダズパッションの2020(父ハーツクライ、牡栗毛)の3億8000万円(税抜き)。ノーザンファームが上場し、小笹芳央氏が落札した。次点は407番シーズアタイガーの2020で、同じく父ハーツクライの牡鹿毛馬、2億7000万円で(株)ダノックスが落札、3番目もハーツクライを父に持つ383番シーヴの2020(牡鹿毛)の2億1000万円で、三輪ホールディングが落札者であった。上位3頭がいずれもハーツクライ産駒で、ディープとキンカメ不在のセールでは実績のあるハーツクライ産駒が高評価を受けたということだろう。

生産地便り

ヒルダズパッションの2020

生産地便り

シーズアタイガーの2020

生産地便り

シーヴの2020

 ロードカナロア、キタサンブラックも存在を示した。316番ファイナルスコアの2020(牡鹿毛)がロードカナロア産駒としては最も高額の2億円で大塚亮一氏が、また334番マラコスタムブラダの2020は父キタサンブラックの牡鹿毛馬で、1億9000万円、麻布商事がそれぞれ落札した。ここまでが上位価格馬5傑である。

生産地便り

ファイナルスコアの2020

生産地便り

マラコスタムブラダの2020

 ところで、203頭の落札馬のうち、税抜き5000万円以上がざっと数えると51頭いたが、いわゆる「社台グループ」以外からの上場馬はわずか4頭にとどまった。ノーザンファーム、社台ファーム、追分ファーム以外で、最も高額だったのは397番ノットナウキャロラインの2020(父Justify、牝栗毛)の8000万円で、(有)下河辺牧場の上場馬、竹下浩一氏が落札した。また379番ダイワパッションの2020は、皐月賞馬エポカドーロの半弟で父ハーツクライの黒鹿毛馬だが、7200万円まで競り上がり、麻布商事によって落札された。上場者は田上徹牧場。

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ノットナウキャロラインの2020

生産地便り

ダイワパッションの2020

 さらに348番ミスパスカリの2020は、本セール唯一のエイシンヒカリ産駒の牡芦毛馬だったが、5200万円で金子真人ホールディングス(株)が落札した。上場者は(株)スマイルファーム。

生産地便り

ミスパスカリの2020

 もう1頭、322番エーシンベロシティの2020は父ハーツクライの牡鹿毛馬で下屋敷牧場が上場し、5000万円で尾上松寿氏が落札した。

生産地便り

エーシンベロシティの2020

 価格上位馬から51番目までのうち、日高産馬はわずか4頭である。一方、ノーザンファームと(有)ノーザンレーシングの上場馬は51頭中40頭を占める。毎年のことながら、この辺りに大きな格差が出てしまう。それとは逆に、23頭の主取り馬の大半が日高からの上場馬であった。好況の陰で、大きく明暗を分けるセールとなった。

 さて、セレクトセールの翌週は、日高でセレクションセールが開催される予定になっていたが、コロナウイルス感染拡大を受け、1ヶ月延期になったのは周知の通り。しかし、この措置が吉と出るか凶と出るか、今の段階では何とも予測できない。個人的には、当初の予定通りに開催した方が良かったのではないか、とも感じている。なぜならば、また感染拡大が顕著になってきているからだ。来月下旬には世の中がどうなっているのか、ちょっと気になる。首都圏や京阪神などの都市部での感染動向次第で再び移動や外出の自粛がより厳しく求められることになりそうな気配が漂う。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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