川田将雅騎手『京都の思い出は……学校生の頃までさかのぼっていいですか?』 /「さようなら京都競馬場特集」(3)

2020年10月21日(水) 18:02

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▲京都での勝利数が断然トップ! 勝ち星量産の秘密は? (C)netkeiba.com

京都競馬場開設100周年を迎える2025年の記念事業の一環として、今開催を最後に2024年3月までの大規模改修に入る京都競馬場。そこで、現在の京都競馬場の思い出を3名のジョッキーたちにお聞きします。

前回の松山騎手に続いて登場するのは川田将雅騎手です。過去10年の京都での勝利数が断然トップ。百戦錬磨の川田騎手が感じる、京都コースの面白さとは? さらに、競馬学校生時代の京都競馬場での思い出も明かしてくれました!

(取材・文=不破由妃子)

※このインタビューは電話取材で行いました。

過去10年で415勝! 勝ち星量産の秘密は?

──今回の企画にあたって過去10年(2010年1月5日〜2020年5月31日)のデータを調べたところ、京都競馬場での勝利数は川田騎手が断然トップ。芝で233勝、ダートで182勝、計415勝を挙げています。

川田 415勝? そんなに勝ってます?

──はい。2位の福永騎手が339勝ですから、圧倒的な数字です。

川田 そうかぁ…、そんなに勝たせてもらっているんですね。それだけ有力馬の騎乗依頼を数多くいただいている証であり、本当にありがたく思っています。たくさんチャンスをいただいたからこそ残せた数字です。それに尽きます。

──そんな百戦錬磨の川田騎手が感じる、京都コースの面白さとは?

川田 やはり、能力通りには勝てないところでしょう。たとえ力が足りないかなと思う馬でも手段があるというか、展開やレースの組み立て方によって、強い馬に一矢報いるチャンスが生まれる。能力のある馬を能力通りに勝たせることもそうですが、僕にとってはどちらも“難しさ”ということになりますが。

──そんな京都コースで、(過去10年で)Gl2勝を含む重賞20勝をマーク。能力のある馬を能力通りに勝たせたレースでは2018年の京都大賞典(サトノダイヤモンド)、有力馬に一矢報いたレースでは2010年の菊花賞(ビッグウィーク)が思い浮かびます。

川田 ああ、どちらも思い出深いレースですね。サトノダイヤモンドでいえば、グランプリホースがあれだけ勝てない時間を過ごしているなかで(前年の阪神大賞典以降、フランス2戦を含めて6戦未勝利)、騎乗依頼をいただいて。なんとかあの馬本来の走りができるようにという思いで、追い切り以外の日もずっとダイヤモンドに乗って、少しでも改善できるようにと時間を過ごしました。

 そういう過程があったので、深く関わっている分、より大きな責任を感じていましたし、結果を出せたことにすごくホッとしたのを覚えています。お客さんもすごく盛り上がっていて、Gl並みの歓声だったのが印象的です。やはりグランプリホースの復活には、大きな意味があったと思いますね。

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▲「なんとか本来の走りができるように…」グランプリホースが見事復活 (C)netkeiba.com

──「能力通りには勝てない」という京都コースではありますが、あの京都大賞典は、強い馬が強い競馬をしての勝利だったと思います。それを可能にしたポイントはどこだったのでしょうか?

川田 まずはゲートをスムーズに出て、リズムに乗りながらシュヴァルグラン(1番人気)の真後ろを取った時点で、前半のポイントはクリアできたと思いました。そこからの道中は、リズムを重視しながらダイヤモンドが動ける準備をしながら走るだけでした。

──4コーナーでは、シュヴァルグランより早めに動きましたね。あのあたりも作戦のひとつ?

川田 3〜4コーナーの下りで、思っていたほどシュヴァルグランが動かなかったので、それなら早めに動いてセーフティーリードを取ろうと思いました。きさらぎ賞を勝ったとき、下りで加速していくような競馬をクリストフがしていたので、そのイメージで。動かし過ぎず、かといってセーブし過ぎず、リズムよく徐々に加速させていくという競馬を選択しました。

──それは、スピードに乗ったまま4コーナーに入る京都の外回りならではの運び方ですか?

川田 そうですね。3コーナー前後のアップダウンもポイントですが、それ以上に、外回りは4コーナーの出口の角度がすごくきつくて、急激に曲げないと曲がらない角度なんですよ。

 急激に曲げずに回ろうとすると、今度は遠心力で外に流れて行ってしまう。上手く回らなければ馬の身体を痛めることもあるので、そこをいかにリズムよく走れるかが大事なんです。しかも、能力のある馬ほどスピードとパワーがありますから。さらに気を遣うポイントです。

ビッグウィークには精神的に救ってもらった

──3〜4コーナーの下りを使って、有力馬に一矢報いたのがビッグウィークの菊花賞でしたね。

川田 そうでしたね。前走の神戸新聞杯が初めての重賞だったのですが、そこではあえて普通の競馬をして、能力差を確認したんです。3着には入れたのですが、ローズキングダム(1着)とエイシンフラッシュ(2着)には3馬身の差をつけられて、これは普通の競馬をしていたら敵わないなと思いました。

 そこで、一発を狙うとしたら、リズム良く競馬をした上で、下りで早めに動くしかないと。トップスピードでは劣ってもスピードの持続力はありましたから、その能力を生かすために、3コーナーの下りから行ってしまうという競馬を選択しました。

──大逃げをしていたコスモラピュタを直線半ばで捉えたとき、有力馬たちは、まだはるか後方。まさにドンピシャでしたよね。胸のすく一戦でした。

川田 あの秋は、ダッシャーゴーゴーで騎乗停止になり(スプリンターズSで2着入線も、斜行により4着降着)、復帰したのが菊花賞の週だったんです。とても大きな迷惑をかけた直後だったので、ビッグウィークには精神的に救ってもらいました。そういう意味でも、忘れられない勝利です。

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▲ビッグウィークで制した菊花賞、この勝利には深い意味が… (C)netkeiba.com

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▲川田騎手にとって初めての京都でのGl勝利となった (C)netkeiba.com

──レース以外で、京都競馬場にまつわる思い出はありますか? また、2年5カ月の長きにわたり開催がないことについて、なにか思うところはありますか?

川田 京都競馬場はトレセンから一番近いので、移動が楽で、すごくありがたい競馬場です。人間にとってもそうですが、馬も輸送時間が短いぶん、ストレスが少ないだろうなと思っていました。

 だから、2年半近く開催がないことでどういう影響があるのか、代替場所も含め、気になるところではあります。レース以外の思い出は……競馬学校生の頃までさかのぼっていいですか?

──もちろんです(笑)。懐かしい思い出話をぜひお聞きしたい。

川田 京都ならではの円形のパドックがなくなるのは、お客さんにとっては寂しいことかもしれませんが、あの円形のパドックで馬を引っ張るのは大変なんですよ(苦笑)。

 学校生の頃、所属の安田厩舎の馬を引っ張っていましたが、厩務員さんは内側で、僕は外側の手綱を引っ張っていたんです。外側の場合、ずーっと大きく外を回らなくてはいけなくて、しかも馬より速く歩かなくちゃいけない。ものすごくきつかったのを覚えてます(笑)。

(※文中敬称略、次回は明日22日(木)に坂井瑠星騎手が登場します)

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