【菊花賞】コントレイルは我々に夢を抱かせてくれるのではないか

2020年10月24日(土) 12:00

父子無敗の三冠馬、これほどのドラマはない

 大記録目前の胸さわぎ。9年ぶり8頭目の三冠もすごいが、史上3頭目の無敗での達成となると、それは奇跡に近い。とにかく大記録なのだから、その瞬間が訪れるかどうかが脳裏からはなれない。

 過去偉業達成のシンボリルドルフは、1984年。秋はセントライト記念をレコードで勝ち、本番は完璧な強さ、感動の強さで日本の競馬史上初の不敗の三冠馬と称えられ、この馬を超えるものは出るだろうか。もし出るなら、その馬は世界の名馬に名を連ねること必至と言われていた。

 そしてそれから21年、あのディープインパクトは、並ぶ間もない圧倒的強さで三冠も通過点、夢は無限大と言われた。春のライバルなど本番と遜色ないメンバーの揃った神戸新聞杯で文句なし、圧巻の末脚で勝ったことで本番では単勝オッズ1.0倍(支持率79.3%)を記録、悠然と構えた武豊騎手との人馬一体の美を印象づけていた。

 そのディープを父に持つコントレイルが父子無敗の三冠馬の座を狙うのだから、これほどのドラマはない。

 神戸新聞杯では、直線馬群につつまれる厳しい態勢から、一瞬で突き抜け2馬身差の快勝。トモの使い方が良くなり加速がつきやすくなったと、パートナーの福永祐騎手は手応えを感じている。

 父ディープインパクトは、柔軟な背中が生んだ他馬より70センチ長い一完歩が最大の武器と言われていた。その父が他界した年にデビューしたコントレイルに、歴史を動かす運命的なものを覚えるのも自然な流れに思えてくる。夢は無限大、その中に8冠の壁を超えることも含まれている。

 菊花賞のこの10年を振り返ると、ダービー馬が出走したケースは少なく、9年前の三冠馬オルフェーヴルと、6年前に9着に終ったワンアンドオンリーの2頭だけ。大敗したワンアンドオンリーは、外枠で出負けし前にカベを作れず力んで直線の伸びを欠いていた。

 全馬が未知の3000米を走るので、どう自分のペースで走るかに苦慮している。京都の外回り、坂の下りを利用してロングスパートし、直線はスタミナ勝負が待っている。どの陣営も十分承知しているが、それに適応できるとは限らない。

 この3年の菊花賞馬は、いずれも春のクラシックには出ていなかった。毎年ダービー出走組が多く出ているのにだ。ここで求められているものが、それまでとは異なっていることが分かる。

 コントレイルの相手には、ヴェルトライゼンデ、ヴァルコス、ガロアクリーク、バビット、サトノフラッグの5頭が考えられるが、中でも神戸新聞杯では外枠で思うポジションが取れなかったヴェルトライゼンデが、この枠をどう生かせるか注目したい。

 いずれにせよ、コントレイルが大記録をつくり、さらなる夢を私どもに抱かせてくれるのではないか。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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