思わぬ原石が眠る「タタソールズ・ディセンバーセール当歳セッション」

2020年10月28日(水) 12:00

セール出身馬が日本で活躍を見せ、近年で最も注目すべき市場


 11月25日(水曜日)から28日(土曜日)まで、英国のニューマーケットで行われる、「タタソールズ・ディセンバーセール当歳セッション」の上場馬が出揃った。

 今年8月、前走の未勝利戦に続いてGIII新潟2歳S(芝1600m)を制し、来季のクラシック候補の一角に名乗りをあげたショックアクション(牡2、父グレンイーグルス)が、18年の当セールにて6万5千ギニー(当時のレートで約1022万円)で購買されていたり、今年2月にGIII共同通信杯(芝1800m)を制し、GI皐月賞、GI日本ダービーに駒を進めたダーリントンホール(牡3、父ニューアプローチ)が、17年の当セールにて7万ギニー(当時のレートで約1150万円)で購買されていたことから、日本でも急速に注目度が高まっている市場だ。

 欧州でも、9月に独国のG1バーデン大賞(芝2400m)を制し通算4度目のG1制覇を果たしたバーニーロイ(セン6、父エクセレブレーション)が、14年の当セールにて3万ギニー(当時のレートで約598万円)で購買されていたり、9月に英国のヘイドックで行われたG1スプリントC(芝6F)を制したドリームオブドリームス(セン6、父ドリームアヘッド)が、同じく14年の当セールにて3万7千ギニー(当時のレートで約736万円)で購買されていたりと、後のトップホースが思わぬ廉価で発掘されているケースが続出し、その有用性が再評価されているマーケットである。

 今年のカタログには、20年春に誕生した934頭の当歳馬が記載された。

 当歳セールを見る上で大きな楽しみの1つが、この世代が初年度産駒となる若手種牡馬がどんなタイプの仔を出しているかを観察する点にある。

 19年に種牡馬入りし、今年の春に初仔が生まれた種牡馬には、実に興味深い顔ぶれが揃っている。

 まずは、稀少価値という意味も含めて大注目なのが、18年のカルティエ賞欧州年度代表馬ロアリングライオン(父キトゥンズジョイ)だ。2歳時から世代のトップ戦線で活躍した同馬だが、本格化したのは3歳夏以降で、サンダウンのG1エクリプスS(芝9F209y)、ヨークのG1インターナショナルS(芝10F56y)、レパーズタウンのG1愛チャンピオンS(芝10F)、アスコットのG1クイーンエリザベス2世S(芝8F)と、8〜10F路線のG1を4連勝している。

 19年春に4万ポンドの種付け料を設定されてトゥイーンヒルスタッドで供用された後、シャトルで出向いたニュージーランドで疝痛の発作を発症。この年の8月に急逝したため、ロアリングライオンの子はたった一世代しか遺されていないのである。2歳戦から活躍する仕上がりの早さを持ち、配合次第では12Fのダービー・オークスも狙える産駒が出ることが期待される同馬の産駒は、7頭がディセンバー・フォールにエントリーしている。

 中でも、上場番号967番の牝馬(父ロアリングライオン)は、母がG1ブリティッシュチャンピオンズ・フィリーズ&メアズ(芝11F211y)やG1セントレジャー(芝14F115y)を制した名牝シンプルヴァーズで、同馬にマーケットがどんな評価を下すか、非常に興味深い。

 ロアリングライオンをイの一番に紹介したのならば、次は、現役時代に同馬のライバルとして鎬を削ったサクソンウォリアー(父ディープインパクト)の名を出さないわけにはいくまい。

 クールモアによる日本における自家生産馬として愛国のエイダン・オブライエン厩舎からデビューしたサクソンウォリアーは、2歳時、ロアリングライオンを2着に退けたG1レーシングポストトロフィー(芝8F)を含めて負け知らずの3連勝をマーク。さらに3歳緒戦となったG1英二千ギニー(芝8F)を制し、競馬発祥の地・英国のクラシックを制した初めての日本産馬となった。以降は、厩舎に蔓延したウイルス性疾患の影響でパフォーマンスが落ちたが、それでも、G1エクリプスS2着、G1愛チャンピオンS2着など、基幹G1で好走を続けた。

 19年春に3万ユーロの種付け料を設定されてクールモアで種牡馬入りしたサクソンウォリアーの初年度産駒は、11頭がタタソールズ・ディセンバーにエントリー。ディープインパクト産駒らしからぬ筋肉質の馬体をしたサクソンウォリアーだったが、これに似た仔を出しているのか、あるいはディープらしいシャープな仔を出しているのか、馬を見るのが非常に楽しみである。

 17年に、抜群のスピードを武器に、G1ジュライC(芝6F)とG1スプリントC(芝6F)を制し、欧州最優秀スプリンターのタイトルを獲得したハリーエンジェル(父ダークエンジェル)も、初年度産駒が今年の春に生まれている。

 19年春に2万ポンドの種付け料を設定されてダルハムホールスタッドで種牡馬入りしたハリーエンジェルの初年度産駒は、18頭がタタソールズ・フォールのカタログに記載されている。

 この他、18年のG1BCマイル(芝8F)勝ち馬エキスパートアイ(父アクラメーション)、16年のG1エクリプスSや18年のG1ドバイシーマクラシック(芝2410m)を制したホークビル(父キトゥンズジョイ)、18年にG1アルクオーツスプリント(芝1200m)やG1サールパートクラークS(芝1400m)を制したジャングルキャット(父イフラージ)、18年のG1サセックスS(芝8F)勝ち馬ライトニングスピア(父ピヴォタル)、18年にG1プリンスオヴウェールズS(芝9F212y)やG1キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(芝11F211y)を制したポエッツワード(父ポエッツヴォイス)、17年にG1ミドルパークS(芝6F)とG1デューハーストS(芝7F)を制しカルティエ賞欧州最優秀2歳牡馬に選出された他、18年にもG1ジュライCを制したユーエスネイビーフラッグ(父ウォーフロント)らの初年度産駒も、タタソールズ・ディセンバーセール当歳セッションに登場予定だ。

 血統の流行を先取りする意味でも、日本の競馬ファンの皆様にもぜひご注目いただきたい。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。<br>

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