2020年11月10日(火) 18:00
先週、地方競馬はJBCで盛り上がったが、その翌日、4日(水)に園田競馬場で行われた楠賞は、メンバーも揃って見応えのあるレースになった。
地方競馬の秋の3歳重賞といえば、『3歳秋のチャンピオンシップ』の最終戦としてボーナスがかかるダービーグランプリ(盛岡)が注目されるが、楠賞も存在感を増している。
その楠賞で、1番人気に支持されたのは、門別デビューから船橋に移籍して6戦全勝のサロルン。2歳時の門別では1000mの未勝利戦を大差で逃げ切り、移籍後は船橋1200m戦のみを5戦。前走では古馬とのB3特別戦を楽勝していたが、重賞は今回が挑戦。初めての遠征競馬に加え、コーナーを4つ回る小回りコースなど、未知の要素はいくつもあった。
鞍上は、これまた初騎乗となる高知の赤岡修次騎手。あおるような感じのスタートで、内目の3番枠だったこともあり、ラチ沿いで馬群に囲まれるような形になった。
ダービーグランプリ2着から参戦した浦和のティーズダンクが中団から向正面で早めに仕掛け、3コーナー過ぎで一気に先頭。サロルンも外に持ち出して追ってきたが、4コーナーでもまだ3〜4馬身ほどの位置。園田の短い直線ではさすがに無理。と思って見ていたのだが、赤岡騎手の激しいアクションにこたえ、ゴール前でティーズダンクをとらえると1馬身差をつけての勝利となった。これで無傷の7連勝。
もともと楠賞といえば、アラブだけで競馬が行われていた時代の園田競馬場の名物レース。『楠賞・全日本アラブ優駿』というアラブ系3歳馬による全国交流レースで、中央からの参戦もあった。
アラブ廃止後は、古馬(3歳以上)の中距離戦として“楠賞”というレース名が受け継がれてきたが、2012年をもって一時休止。一昨年から3歳馬による地方全国交流の1400m戦としてリニューアルされた。
その最初の年に勝ち馬となったのは、北海道から遠征のソイカウボーイ。2歳時にはJpnIIの兵庫ジュニアグランプリで3着の実績があった。そして5歳になった今年は、ウポポイオータムスプリント3着、道営スプリント4着と、層の厚い北海道の短距離路線で上位を争う実力。
昨年も勝ったのは北海道からの遠征馬で、北海道三冠を達成していたリンゾウチャネル。着差こそ2着のジンギに1馬身半だったが、ほとんど持ったままの楽勝だった。楠賞を勝って、その年は7戦全勝。NARグランプリ3歳最優秀牡馬に選出された。
そして今年の勝ち馬サロルンは、前述の通り連勝を継続してまだ底を見せていない。
驚くのは、その1着賞金が600万円、1000万円、2000万円と、ほぼ倍、倍で増額されたこと。昨年まで1000万円で今年は1500万円となったダービーグランプリを一気に超えてしまった。
理由はそれだけではない。昨年から『3歳秋のチャンピオンシップ』が過密日程になったことで、その一戦だった名古屋・秋の鞍が今年はシリーズから外れ、1400mの短距離にかじを切った。そして楠賞指定競走となり、その1、2着馬ヴァケーション(川崎)、ステラモナーク(兵庫)を含め3頭が楠賞に出走してきた。
方や東で2000mのダービーグランプリ、一方で西は1400mの楠賞。地方競馬の3歳戦線は、短距離路線も盛り上がっていきそうだ。
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斎藤修
1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。
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