ハクサンアマゾネスの快挙

2020年12月08日(火) 18:00

数少ないシルポート産駒の活躍馬

 年末が近づいて、地方競馬では各地で1年を締めくくる注目のレースが行われる時期だが、12月6日には金沢で伝統の重賞・中日杯が行われた。

 中日杯は、90年代終盤から2000年代初期には12月20日前後の実施で、金沢の開催も正月松の内くらいまで行われていた。しかし年末年始の開催が雪で中止になることがたびたびあり、それで近年ではクリスマス前後にシーズンが終了するようになったと思われる。

 今年、その中日杯を勝ったのは、3歳牝馬のハクサンアマゾネス。今の金沢コースではラチ沿いを2、3頭分空けてレースが展開されることが常なのだが、この日はところどころ水が浮く不良馬場。2番手以下の馬たちが定石通りラチ沿いを空けて追走していたのに対して、ハクサンアマゾネスはラチ沿いぴったりのところを通って逃げた。ペースアップした勝負どころの3コーナー手前でもハクサンアマゾネスは後続に並びかけさせず、3〜4コーナーから徐々にその差を広げると、2着に4馬身差をつけて逃げ切った。

 鞍上の吉原寛人騎手は3歳牝馬ゆえ別定52kgでの騎乗には減量の苦労もあったようだが、それにしても「(他の馬に)被されるとやる気をなくしてしまうと思ったので、早めに動こうと思いました」という見事な、そして鮮やかな逃げ切りだった。

 1965年の第1回からシーズンを締めくくる重賞として行われてきた中日杯だが、3歳馬の勝利はたびたびあっても、3歳牝馬となると1971年のタイロンプ、73年のミスタマヨ以来、じつに47年ぶり、史上3頭目のことだった。

 これで重賞5勝目となったハクサンアマゾネスだが、春シーズンに注目となったのは、金沢生え抜きの3歳デビューで無敗のまま石川ダービーを制したということ。

 金沢には長らく“ダービー”と言われるレースがなく、地方競馬のダービーシリーズに合わせ石川ダービーが創設されて今年で4年目。それ以前は4月終わりから6月にかけて行われていた北日本新聞杯が“ダービー”の位置付けとされた(1999〜2004年には日本海ダービーというレースも行われたが)。

 2016年までの北日本新聞杯と、2017年以降の石川ダービーを金沢の“ダービー”とするならば、2000年までさかのぼっても3歳デビューで金沢のダービー馬となったのは2004年のロイヤルアタックがいるのみ。ただその年は年明けも開催が行われており、ロイヤルアタックは1月2日にデビュー戦を勝っていた。ハクサンアマゾネスのように、冬期休催が明けた3歳シーズンの4月にデビューした金沢生え抜きの馬が無敗のまま“ダービー”を制したというのは、きわめて珍しい快挙だった。

お松の方賞優勝時のハクサンアマゾネス(C)netkeiba.com、撮影:谷口浩

 ハクサンアマゾネスの父は、京都金杯勝ちにマイラーズC連覇のシルポート。馬主は“ハクサン”の冠号で知られる河崎五市さんで、2世代目の産駒ではハクサンフラワーが金沢プリンセスカップを制し、3世代目の産駒からハクサンアマゾネスが出た。5世代目となる現1歳世代までで血統登録されている産駒は計46頭。ハクサンアマゾネスは数少ないシルポート産駒の活躍馬ということにもなる。

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斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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