【有馬記念予想】馬券的には興味をそそられるグランプリ!? “牝馬が強かった1年”を締めくくるのはやはり牝馬なのか?<前編>

2020年12月25日(金) 18:00

いよいよ、今週末27日(日)に迫った有馬記念。トリッキーといわれる中山競馬場2500mに、今年はフルゲート16頭が揃った。芝GI9勝の歴史的名牝アーモンドアイはターフを去り、今年の牡牝クラシックでともに無敗で3冠を達成したコントレイルとデアリングタクトの姿こそ見えないが、宝塚記念を圧勝したクロノジェネシス、大阪杯を制し、エリザベス女王杯を連覇したラッキーライラック、天皇賞・春を勝ち、秋も2着のフィエールマンなど、前述した3頭以外は現状で考えられる最高のメンバー揃ったといっていい。

馬券的にも興味をそそられる一戦となりそうだが、そんな今年のグランプリを、現場の記者たちはどのように見ているのか?福島民報・高橋利明、東京スポーツ・山河浩、スポーツ報知・坂本達洋という3人の記者に、今年の有馬記念を展望してもらった。

牝馬優勢の傾向は続くのか?

 今年の注目は、牡馬相手のGIを勝利したクロノジェネシス、ラッキーライラックという2頭の牝馬だろう。今年ここまで、古馬中長距離GI5戦のうち4戦を牝馬が奪取。しかも、短距離路線でもグランアレグリアが活躍し、まさに“牝馬の当たり年”というほかない。まずは、その牝馬の活躍の裏側について分析してもらった。

「年間の勝率は00年=6.5%→10年=5.9%→20年(先週終了時点)=6.5%と、10年スパンで見て大きな変動はない。一方で、最高賞金獲得馬(額・全体の順位)は00年トゥザヴィクトリー(1億8030万円・12位)→10年ブエナビスタ(5億1100万円・1位)→20年アーモンドアイ(6億700万円)と“地位”はグンと向上している。10年は4位にアパパネ、20年は3、4、5、6、10位も牝馬だ。つまり、牝馬全体が強くなったのではなく、『強い牝馬』が増えたことが実像といえよう。

 その理由のひとつは、牝馬が能力を発揮しやすい環境が整えられたことが挙げられる。新潟外回り、阪神外回りや新・中京といった直線の長いコースが増え、そこを舞台にしたヴィクトリアマイル、アルテミスSといった限定重賞で賞金加算の機会が増えた。また、主流となった“10日競馬”は負の部分が取り上げられることも多いが、メンタル面のリフレッシュが課題となりがちな牝馬にとっては理に叶った調整方法ともいえよう」

 そう語ったのは、山河記者。牝馬が活躍しやすい環境での牝馬限定戦の増設と、“10日競馬”が奏功していると踏んでいる。“強い牝馬が増えている”という見立ては、高橋記者も同様のようだ。

「今年は牡馬牝馬混合の古馬の芝GIで牝馬が10戦中9勝を挙げた。これほど極端に牝馬が強かったのは見たことがない。ウオッカやダイワスカーレットからブエナビスタ、ジェンティルドンナ、アーモンドアイと、確かに近年は強い牝馬が増えている。以前はスローの切れ味勝負への適性の高さで牝馬の活躍が増えたと考えていた。

 だが、もはやそれだけでは説明できない。まずは仕上げの技術の進歩だろう。繊細な牝馬を仕上げるノウハウが蓄積した。アーモンドアイは桜花賞から12戦連続でGIだけを使って結果を出した。常識破りのローテーションはグランアレグリアに受け継がれた。もはや牡馬との斤量2キロ差が適性なのか、考えさせられる。牝馬のレベルの高さと同時に牡馬の層が薄いことを感じる。コントレイルは別格だが、近年ダービー馬が早熟に終わるケースも目立つ。さまざまな要因がかみ合ったためだが、こうなると牝馬優勢の傾向は続くかもしれない」

 一方、世代層の厚さが世代レベルを強化し、牝馬特有のキレが馬場とマッチしている点も大きいと力説するのが坂本記者だ。

「牝馬の5歳世代はアーモンドアイとラッキーライラックがクラシック戦線でしのぎを削り、クロノジェネシスとグランアレグリア、そして昨年のジャパンC2着のカレンブーケドールら4歳世代も粒ぞろいです。能力の高い牝馬同士が戦うことで、世代レベルを押し上げる相乗効果があったのではないかと思います。

 そして牝馬特有の切れのある走りが、今の日本の芝の馬場にマッチしていることも見逃せません。マイルのJRAレコードは、牝馬のトロワゼトワルの1分30秒3ですが、その前のレコードホルダーは先日の香港カップを制した牝馬のノームコアでした。芝1700mは、この有馬記念に出走してくるディープインパクト産駒のサラキアですし、2400mもアーモンドアイの驚異的なレコード(2分20秒6)といったように、ここ一番のスピードでは牡馬も牝馬も差がなくなってきているのでしょう。

 海外をみてもエネイブルやゼニヤッタなど世界的な名牝の活躍が目立ち、日本でも先日引退したディアドラが息の長い活躍を見せています。競馬関係者からよく聞く「牝馬はピークが短い」という“定説”が、変わってきているのかもしれません。ここ最近の血統の進化により、400キロ台後半の立派な馬格を誇る牝馬が増えていること、また育成技術の向上が、心身両面で牝馬を強くしているのではと感じています」

ラッキーライラックとクロノジェネシスの牝馬2頭で決まった大阪杯(C)netkeiba.com

ジャパンC上位3頭不在の割には“揃った”

 では実際、今年の有馬記念のレベルをどう見ているのか。この点については、3人とも現状ではおおむねベストメンバーであるとの認識で共通しているが、3歳馬の層の薄さは認めざるを得ないようだ。高橋記者が

「ジャパンCの3冠馬3頭が不在だが、GI馬は8頭。GIを複数回勝った馬も3頭いる。コロナ禍のため、香港遠征馬が少なかったことも有馬記念には好影響となった。粒ぞろいと評価していいのではないか。ただ、3歳勢はタイトルを独占した2頭が不在で魅力のある馬が少ない。過去10年で5勝と良績を挙げているだけに、3歳勢の層が薄いのは残念」

 と話せば、山河記者も次のように追随する。

「ジャパンC上位3頭不在の割には“揃った”と誰もが思うのでは。ただし、前走ジャパンC組の勝利は過去10年で3例のみ。00年代と違い、二兎を追わない“分業制”が主流になっている。また、昨年は香港ヴァーズに3頭が遠征も今年はゼロ。メールドグラースのような大物の豪州遠征もなく、コロナ禍で国内に目標を定めざるを得なかったことで相応のレベルを保つことができた。とはいえ3歳勢が“弱い”面は否めない。5年連続で1頭は3番人気以内の支持を集めてきたが、今年は古馬(とくに牝馬)に比べインパクトを欠く」

 とはいえ、ジャパンCに出走した3頭の3冠馬が不在だからこそ、馬券妙味はいっそう増すというもの。坂本記者は、

「さすがにジャパンCほどの好メンバーとはいえませんが、このコロナ禍で海外遠征自体にリスクがあるぶん、面白いメンバーが揃ったといえます。昨年は香港ヴァーズに出走して2着に好走したラッキーライラックも、エリザベス女王杯前の時点で香港への予備登録を行わなかったように、二の脚を踏む陣営は多かった様子で、例年よりはメンバーが集まったと感じています。そして有力馬はそれぞれ脚質、得意な馬場など個性が分かれており、群雄割拠の“戦国有馬”だと思います」

 と、コロナ禍で海外遠征を手控えたことが、好メンバーが揃った要因と分析している。確かに、人気は分散しそうな気配のある今年のグランプリだが、記者たちが考えるように“馬券的な妙味のある”レースとなるのか。

例年3歳馬は支持を集めてきたが今年は…(撮影:下野雄規)

有馬記念を徹底攻略! 今年1年のGI傾向やイチオシ予想家をご紹介。週末には千鳥ノブや競馬好き芸能人も登場!ぜひご覧ください。

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ウマい予想家

高回収率をたたき出す馬券のプロたちは、どのような視点で重賞レースにアプローチをしているのか。ときに冷静に、ときに大胆に直球勝負で攻める予想家たちの熱き見解は必見。 関連サイト:ウマい馬券

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