【3歳未勝利/阪神大賞典】土日11勝!松山弘平騎手はなぜこんなに“乗れている”のか?

2021年03月25日(木) 18:00

哲三の眼

和田竜二騎手は2週連続の重賞制覇に(C)netkeiba.com

今週はふたつのレースをピックアップしてお届けします。まずは阪神大賞典。5馬身差で圧勝したディープボンド&和田竜二騎手のレースぶりに“100点満点”と絶賛です! さらに「先週の松山君のレースの中で一番好きな勝ち方」として、同日(3/21)の中京3R・3歳未勝利を振り返り、松山弘平騎手の絶好調のワケを哲三氏ならではの視点で分析します。

(構成=赤見千尋)

あの走り…やっぱり負けなかった、そんな完璧なレースぶり

 阪神大賞典は3番人気だったディープボンドが5馬身差で圧勝しました。長丁場が向くタイプだと思っていましたし、鞍上の和田(竜二)君は僕の中で阪神の内回り巧者というイメージがあるので、強い勝ち方をしたのも納得でした。

 どのコースでも巧いジョッキーですが、特に阪神内回り巧者のイメージがあるのは、基本的に末脚を溜めなくてもいい競馬を心がけているのではないかと感じていて。もちろん後方から脚を溜めるレースをすることもありますが、どちらかというと前々のいい位置で運ぶレースが多いですよね。そういう部分が阪神内回りコースに合っていると思います。

 今回は重で道悪の馬場状態でしたが、スタートから立ち回りから、完璧と言っていいほどずっと上手く進めたのではないでしょうか。スタートからのポジション取りと、馬の走りを邪魔しないでリズムを乱さない、というこの2点が完璧にいった中で、馬の力がより発揮されたのではないかと。

 1周目のゴール板を過ぎた辺りのリズムのいいディープボンドの走りを見たら、これを後ろから負かす馬、前で残る馬がもしもいたとしたら、相当強い馬だぞと。そんな想像もしていましたが、やっぱり負けなかったですね。春の天皇賞も楽しみに思える、100点満点のレースぶりだったと思います。

「松山君は本当に頼もしいジョッキーになった」

 もうひとつ目についたのが、日曜日の中京3レース。1番人気スズカルビコンが勝ったレースで、鞍上は松山(弘平)君でした。先週の土日で11勝を挙げた松山君のレースの中で、一番好きな勝ち方だなと思いました。

 とても乗れている松山君ですが、僕の中ではもっと乗れている時期が少し前にあったんです。誤解を恐れずに言うと、ここ2週くらいは「あれ?」「ん?」と思う場面があって。もちろんその中でも高いレベルの騎乗をしているわけですが、“乗れている時期と比べて”という意味です。でも先週はそこをしっかり修正してきました。ジョッキーはどうしても波がありますから、いい時もあればそうじゃない時もある。でもその中で修正する力も手の内に入れてきたなと。

哲三の眼

先週は土日で11勝を挙げ、JRA通算800勝も達成した松山弘平騎手(撮影:高橋正和)

 中京3レースに話を戻すと、走らせ方がすごく好みなんです。1、2コーナーは張られ気味で苦しい展開になり、3コーナーくらいからは手応えが怪しくなりました。そこから盛り返して勝ったわけですが、その盛り返した部分が、馬の力だけで勝ったと片づけてはいけないところです。

 気合を入れながら馬を前に走らせるよう促す、その時に手綱を持ち替えないんですよ。手綱の長さを変えず、自分の拳をちょっと上げながら、馬の肩とかクビを少しでも前にという感じで走らせているように見える。松山君がどういう風に思って動かしているかわからないけれど、僕にはそう見えました。

 レースの中でよく手綱を左右持ち替える場面があります。それが悪いわけではないし、有効な場面もありますが、コーナーを回っている時に手綱を左右に持ち替えてハミを掛け直すという動作は、苦しくなってきた馬に対して「がんばれ」という意図よりも、左右にバランスが崩れやすくなるのではないかと思っていて。苦しくなってきた馬に対しては、横の動きより縦の動きを大事にしてあげた方がいいのではないかと思います。

 よくよく見ると、2コーナーまでは手綱を横にちょっと動かしたりしているんですよ。その場面もすごく好きで。手綱を横に向けて馬をコントロールするのは整えるためであって、前に進むためには横にはしない方がいい、というのが僕の基本的な考え方。許容範囲の中で違うことをすることもあるけれど、松山君もそういうところが見えて、少頭数のレースだったのでそういう部分がより見やすいレースでした。

 松山君は馬の走りに自分を合わせたり、合わせてもらったり、試行錯誤の中で正解を出したり、正解が出ない時もあると思うけれど、先週は正解になることが多かったです。勝っておごらず、次に向けてしっかり考えて乗っているなと。本当に頼もしいジョッキーになったなと感心しています。

今週の注目コンビ

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初コンビとなる浜中俊騎手&レシステンシア(撮影:高橋正和、(C)netkeiba.com)

 今週の注目コンビは高松宮記念に出走するレシステンシアと浜中(俊)君です。今回は大きなチャンスですから、ぜひいい結果を出してチャンスを掴んで欲しいですね。どんなレースを見せてくれるか、楽しみにしています。

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佐藤哲三

1970年9月17日生まれ。1989年に騎手デビューを果たし、以降はJRA・地方問わずに活躍。2014年に引退し、競馬解説者に転身。通算勝利数は954勝、うちGI勝利は11勝(ともに地方含む)。

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