ホースマンを目指す研修生たちの修了式と開講式

2021年04月21日(水) 18:00

年齢制限の撤廃により実に様々な新入生が

 4月16日(金)、BTC育成調教技術者養成研修第38期生16名の修了式が行われた。まず午前10時より、研修所内800m馬場にて、実技査閲からスタート。16名がそれぞれ騎乗し、コースを周回して、1年間の訓練の成果を披露した。

 これに先立ち、13日(火)に開催されたJRA育成馬展示会(日高育成牧場)では、16名中14名が、JRA育成馬(27日中山競馬場で開催予定のブリーズアップセールに上場される)に騎乗して、JRA職員とともに2頭併走で1600mダートコースを走った。

生産地便り

今年の育成馬展示会で最速タイムを出したスノーボードロマンの2019

 メニューとしては、こちらの方がずっと難易度が高く、向正面からキャンターでスタートした各馬が、4コーナーを曲がる地点に向かって徐々に速度を上げると、残り2ハロン地点より計時が始まり、多くが12秒台から11秒台でゴール地点に向かって疾走するハイレベルな騎乗供覧である。幸い、落馬もなく、騎乗した14名全員が無事に任務を果たしていた。

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ハイレベルな騎乗供覧を披露する38期の研修生

 38期生の16名はすでに全員が就職先を決めている。修了式の際に配付された資料によれば、ノーザンファーム3名、追分ファーム2名、社台ファーム1名、ビッグレッドファーム2名、ダーレー・ジャパン・ファーム2名。コスモヴューファーム1名など、いわゆる大手志向が一段と鮮明になった印象である。

 騎乗者不足は今や全国どこでも深刻だが、とりわけ多くの牧場がひしめくBTC周辺の育成牧場は、このところインド人騎乗者が急増しており、浦河町だけでも200人を超えている。かつては日本人騎乗者を主体にしていた育成牧場が、相次ぐ日本人の離職により、やむを得ず外国人騎乗者に頼らざるを得なくなってきている。その主流が、現在インド人騎乗者ということになる。

 本来ならば、BTCのある地元浦河に残ってくれる研修生がいることが望ましいのだが、残念ながら今期はついに全員が町を出て行くことになった。最も人材を欲しているはずの地元の育成牧場に、若者が定着しにくくなっているのは事実で、今後の大きな課題のひとつと言えるだろう。

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修了した第38期生16名

 19日(月)、第39期生の開講式が行われた。昨年までは先に開講式を実施してまず新入生を受け入れ、1週間程度、1期先輩と同じ部屋に同居し、作業手順などの指導を受けた後で先輩を送り出す、という形式であったが、新型コロナ禍により、密を避けるために、今年は先に修了式、その後に開講式という順となった。

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第39期の新入生25名

 39期生は、25名に及び、過去最多人数である。男子19名、女子6名。多くが高校卒業したばかりの18歳だが、年齢制限を撤廃したことによって、今期には、39歳と34歳という社会人枠?での入所者がいる。

 出身地は九州こそいないものの、全国各地に散らばっており、地元北海道からはわずか1人である。最も遠くは山口県で、島根県、愛媛県などからも来ている。

 最年長の39歳は男性。埼玉県出身の西潟行博さん。(とても君づけでは呼べない)。小学校教諭を退職し、夫人を埼玉に残して単身入所してきた。他の研修生はほとんどが自身の教え子と言っても差し支えないくらいの年齢差だが、ここでは同じ39期生である。若者たちに交じって、何とか1年間の研修を乗り切って頂きたいと願うばかりだ。

 開講式の式典終了後、部屋全体を使って大きな輪を作っての自己紹介が行われた。25名がそれぞれ一人ずつ簡単に自分のことを皆に紹介していくのである。25名もいると、出身地から経歴から実に様々だ。高校まで野球部で汗を流していた男子、柔道を9年間続けてきた男子、農業高校で畜産を学んできた子もいれば、家族に連れられて行った競馬場で厩務員が馬を引く姿に魅せられ馬の世界を目指すことになった子もいる。将来は厩務員から調教師になりたいという男子もいた。

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大きな輪を作っての自己紹介

 今回縁あって研修所の門をくぐってきた25名である。ぜひ来春、この25名が揃って無事に修了式を迎えてくれるように、と心から祈っている。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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