「過渡期」の香港競馬 次世代担うニュースター候補に注目

2021年04月28日(水) 12:00

「チャンピオンズデイ」に期待の若手3頭出走

 シーズン後半のメインイベントである「チャンピオンズデイ」が25日に行われた香港の競馬界は、各距離路線において一流馬の層が薄い、いわゆる「過渡期」にあると言われている。

 次世代を担う新たなスター誕生が待望されているわけだが、そんな中、「チャンピオンズデイ」のアンダーカードには、うまく化ければ大物になる気配を漂わせた、期待の若手が3頭ほど出走し、ファンの熱い注目を集めた。

 3頭は、いずれもトップトレーナーであるジョン・サイズの管理馬で、手綱をとったのは日本でもお馴染みのジョアン・モレイラである。

 最初に登場したのは、第3競走に組まれたクラス3のハンデ戦(芝1200m)に出走したファンタスティックウェイ(セン3、父スイスエース)だった。

 ニュージーランド産馬で、G3ウエスタンオーストラリアンオークス(芝2400m)勝ち馬モレイシュの甥にあたる同馬。ニュージーランドブラッドストックのカラカ1歳市場にて、10万ドル(当時のレートで約768万円)で香港人馬主の代理人に購買されている。

 今年1月31日にデビューし、無敗の3連勝をマーク。4戦目となったのが、25日のレースで、ファンタスティックウェイはオッズ1.7倍の1番人気に推された。

 だが同馬は、道中7番手から直線でよく伸びたものの、自身より16ポンド(約7.3キロ)斤量の軽かったウォーオブカレッジ(セン4、父デクラレーションオヴウオー)を半馬身捉えることが出来ず、2着に敗退。レース内容は悪いものではなかったが、連勝は途切れてしまった。

 次に登場したのが、第6競走に組まれたクラス3のハンデ戦(芝1400m)に出走したギャラントエクスプレス(セン3、父アイアムインヴィンシブル)だ。

 母ダンスウィズハーが2つの準重賞を含む12勝を挙げた他、G2ブリスベンC(芝2400m)2着などの実績を残した活躍馬で、叔父にG2クープランズベーカリーマイルH(芝1600m)勝ち馬で、G1レヴィンクラシック(芝1600m)2着などの実績を残したサンオヴマハーがいるという、なかなかの良血馬がギャラントエクスプレスである。

 マジックミリオン・ゴールドコースト1歳市場にて48万ドル(当時のレートで約3821万円)で香港人馬主に購入され、昨年5月に香港入り。サイズ師がじっくりと仕上げた同馬は、今年3月28日にシャティンで行われたクラス4のハンデ戦(芝1200m)でデビューし、ここを1.3/4馬身差で制して緒戦勝ちを飾った。

 2戦目となったのが25日のレースで、ギャラントエクスプレスはオッズ1.3倍という圧倒的1番人気に推された。だが、中団で競馬をした同馬は、直線で思ったほど伸びず、4着に敗退。早くも土がつくことになった。

 3頭目にして、ようやくファンの期待に応えたのが、25日の最終競走に組まれたクラス2のハンデ戦(芝1200m)に出走したクーリエワンダー(セン3、父セイクリッドフォールス)だった。

 実は、レース前々日に香港ジョッキークラブが発行したプレスリリースの中でも、「期待の若手がアンダーカードに登場」と、紹介されていたのがクーリエワンダーだった。

 ニュージーランド産馬で、祖母フォンテイヌがG3デザートゴールドS(芝1500m)3着馬という血統背景を持つ同馬。ニュージーランドブラッドストックのカラカ1歳市場にて15万ドル(当時のレートで約1148万円)で香港人馬主の代理人に購買され、香港に渡っている。

 セール後に、同馬の1歳年上の全兄アイスバスが豪州で出世し、4月10日にランドウィックで行われたG1ドンカスターマイル(芝1600m)で2着に好走。この血統の価値を飛躍的に高めている。

 クーリエワンダーは、昨年10月にデビュー。シャティンのクラス4のハンデ戦(芝1200m)を5.1/4馬身差で制してデビュー勝ち。5か月の休養をはさみ、今年3月にシャティンで行われたクラス3のハンデ戦(芝1200m)に出走し、ここも3.1/2馬身差で制して連勝。前走4月11日にシャティンで行われたクラス3のハンデ戦(芝1200m)では、133ポンド(約60.3キロ)のトップハンデを背負いながらも1/2馬身差で制し、3連勝を飾った。

 デビュー4戦目となった25日のレースには、今年元旦に行われたG3ボーヒニアスプリント(芝1000m)勝ち馬エクスプローシヴウイットネス(セン6、父スターウイットネス)らも出走しており、これまでの3戦よりはだいぶ骨っぽい馬たちが相手だったが、オッズ1.7倍の1番人気に推されたクーリエワンダーは、2着以下に2馬身差をつけて快勝。無敗の4連勝を飾った。

 しかも、勝ち時計の1分8秒24は、同日のG1チェマンズスプリントプライズより、0秒4も速いものだったのだ。

 どうやらこの馬は本物だというのが、現地における競馬関係者のほぼ一致した見解で、待望久しいニュースター候補として、益々注目度が上がることになった。

 クーリエワンダーは、暮れの香港スプリントへ向けて、日本の競馬ファンも記憶に留めておくべき馬と言えそうだ。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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