ばんえい競馬低迷期の産駒が大活躍

2021年05月11日(火) 18:00

今後のばんえい競馬を盛り上げる中心的な存在に

 5月9日に行われた、ばんえい競馬の牝馬重賞カーネーションカップを勝ったのは、シンエイボブ(牝7)。重賞挑戦13回目、7歳にしての重賞初制覇となった。

 シンエイボブの2歳下の全弟にはメムロボブサップ(牡5)がいる。5月2日のばんえい十勝オッズパーク杯では、同期のライバル・アオノブラックの2着に敗れたものの、2歳シーズンにはナナカマド賞、イレネー記念の二冠を制し、3歳時には三冠(ばんえい大賞典、ばんえい菊花賞、ばんえいダービー)を、4歳シーズンにも三冠(柏林賞、銀河賞、天馬賞)を制して、これからのばんえい競馬を背負っていく存在となることは間違いない。

 このきょうだいの父は、重賞6勝を挙げたナリタボブサップ。2008〜13年に6年連続でばんえい記念に出走したが、2度の3着が最高という成績で、残念ながら頂点に立つことはできなかった。

 同時期に活躍したライバルが、同い年のカネサブラック、1歳上のニシキダイジンで、ニシキダイジンは10年と12年、カネサブラックは11年と13年に、それぞれ2度ずつばんえい記念を制した。

 このライバル関係にあった3頭は種牡馬となって、前述のとおりのナリタボブサップだけでなく、いずれも産駒が目覚ましい活躍を見せている。

 ニシキダイジン産駒の出世頭は、メジロゴーリキ(牡7)。17年にばんえいダービー、19年には天馬賞、チャンピオンカップ、ポプラ賞、20年に北見記念を制してここまで重賞5勝。先日のばんえい十勝オッズパーク杯は4着だったが、古馬戦線の中心的存在として期待されている。その1歳下の全弟には天馬賞兄弟制覇となったコウシュハレガシー(牡6)がいる。

 ほかにニシキダイジン産駒では、16年ナナカマド賞のゴールデンフウジン(牡7)、20年ヒロインズカップのアフロディーテ(牝6)がいる。ちなみに、ゴールデンフウジンは2日のばんえい十勝オッズパーク杯で9着、アフロディーテは9日のカーネーションカップで1番人気に支持されるもシンエイボブの4着だった。

 そしてカネサブラックの産駒では、18年イレネー記念のカネサダイマオー(牡6)、18年柏林賞のジェイワン(引退)、20年ばんえいオークスのアバシリルビー(牝4)、21年黒ユリ賞のイオン(牝3)が、それぞれ重賞勝ち馬となっている。

 ばんえい競馬は2007年度から帯広市の単独開催となり、その後11年度には1日平均の売上で6700万円余りにまで落ち込んだ。そのばんえい競馬がいちばん厳しかった時代に、頂点を争っていたのが、ニシキダイジン、カネサブラック、そしてナリタボブサップということになる。

 その後、ネットでの馬券発売が好調になったことなどで徐々に馬券の売上が上昇。20年度は1日平均で3億2千万円余りとなり、どん底だった時代のじつに5倍近くまでになった。

 ばんえい競馬のどん底時代にトップクラスでしのぎを削った馬たちが種牡馬となり、その産駒たちがまさにいま、ライバルとなってばんえい競馬を盛り上げ、今後の中心的な存在となろうとしている。

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斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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