【ヴィクトリアマイル】清新爽快の趣きの中でも荒々しい場面を想定

2021年05月15日(土) 12:00

期待は大きな可能性を秘めた4歳馬

 第一回のヴィクトリアマイルを勝ったダンスインザムードは、その2年前の桜花賞の優勝馬だった。上半期のこの時期に牝馬のGIレースが出来たことで、牝馬の重賞路線が充実し、これによって長く競走馬として活躍できる牝馬が多くなったと言っていい。今言う牝馬の時代という現象は、こうした背景もひとつにはあると言っていいだろう。昨年のアーモンドアイに続いて、今年はグランアレグリアが大きな存在になっているが、ともに時代をリードしてきた。

 果して、頂点に君臨した女王の座をグランアレグリアがはっきり受け継ぐことができるかどうか、今年の最大の焦点だ。2年前の桜花賞馬であり、昨年は安田記念、スプリンターズS、マイルCSとGI3連勝。得意のマイルで牝馬限定戦ならと考えたくなる。これまで牝馬に先着を許したのは2度、昨年の高松宮記念のモズスーパーフレアと前走大阪杯のレイパパレだが、どちらも重馬場で瞬発力を生かせなかった。特に前走は4コーナーまで馬なりで2番手まできていたのに、そこからの伸びが見られなかった。距離もあったようだ。

 全11戦のうち7戦がマイルで、全7勝のうち5勝を上げている。東京のマイルは4戦して3勝と脚質にぴったりと言っていい。ルメール騎手が、アーモンドアイに続いて女王の手綱を印象づけることになるかどうか。

 ただこの季節、薫風と言うにはちょっと強い青嵐(あおあらし)が青葉をゆるがすことがあるので、清新爽快の趣きの中でも荒々しい場面も想定しておきたい。

 その場合、8頭出ている4歳馬から選んでみたい。頂点をめざすには、伸び代の期待できるものがいい。まず、キャリア7戦のデゼルを。けがや故障でデビューが遅れ、3歳の3月から走り出して2連勝でスイートピーSを勝ちオークスに出走している。母が仏オークス、1000ギニーを勝っていて、ずっと期待されていた。今年に入りようやく軌道に乗ってきたこれからの馬。前走、阪神牝馬Sで初重賞制覇、速い芝でもしぶとく脚を使えるので魅力ある。

 これと前走クビ差の勝負をしたマジックキャッスルは、最速の上がり32秒4をマークしていた。左回りは、中京の愛知杯の勝利があるし、広い東京ならのびのびと走れる。ヴィクトリアマイルは、速いタイムの決着が多いが、今週からBコースが設定されるから、十分にスピードに乗れるコンディションで、逃げ、先行馬が面白い。その点、阪神JFレコード勝ち、桜花賞、NHKマイルCいずれも2着のレシステンシア、脚質は異なるが、キャリア6戦でマイルは無敗で4連勝中のテルツェットの末脚も可能性を秘めている。これら4歳馬たちには、この場が唯一のチャンスと走ってもらいたい。

「初夏や 明日は来たらず 待ったなし」

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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