息子と娘でキャラクターが違うクロフネ産駒

2021年05月17日(月) 18:00

先週の血統ピックアップ

・5/16 ヴィクトリアマイル(GI・東京・芝1600m)

 中団の外を追走したグランアレグリアが直線で力強く伸び、ランブリングアレー以下に4馬身差をつけて楽勝しました。昨年の優勝馬アーモンドアイと同じ着差です。多くのファンが想像したとおり、牡馬の一線級相手に安田記念、スプリンターズS、マイルチャンピオンシップとGIを3連勝した女傑ですから、牝馬同士のここでは能力が違いました。

 ディープインパクト産駒のなかで最も多くのGIを勝った馬はジェンティルドンナで、ドバイでの1勝を含めて計7勝しました。本馬は今回の勝利で「5勝」となり、同産駒のなかで単独2位に浮上しました。このあと安田記念に出走し、秋は3戦ぐらいするはずです。どこまで記録を伸ばせるか注目です。

 母タピッツフライはアメリカでマイルの芝G1を2勝し、1分32秒34という持ち時計があります。高速決着に強い血統といえます。母の父タピットは3年連続米リーディングサイアーとなった名種牡馬。

 どちらかといえばダート向きなので、芝競馬が主体の日本ではその能力を認識しづらいところがあるのですが、偉大な女傑の構成要素となったことで、血の非凡さを証明したといえるでしょう。

 母タピッツフライは早世し、その血を受け継ぐ馬は娘のグランアレグリアしかいないので、無事に繁殖牝馬となってほしいものです。

・5/15 京王杯スプリングC(GII・東京・芝1400m)
 2番手を追走したラウダシオンが直線で抜け出し、トゥラヴェスーラの追い込みをクビ差抑えました。昨年のNHKマイルC以来の重賞制覇で、富士Sでは2着となっています。

 東京芝は[3-1-0-0]。父リアルインパクトはディープインパクトの初年度産駒で、3歳春に安田記念を勝ちました。産駒は東京芝で連対率24.7%と優秀な成績を残しています。ちなみに、中山芝では11.8%なので、馬券は東京で買って中山で手控える、というリズムがいいでしょう。

 母の父ソングアンドアプレイヤーはケンタッキーダービーに出走した際、6ハロン通過1分09秒25という、同レース史上最速のペース(当時)で逃げまくった快速馬。本馬はインリアリティとアンブライドルドのニックスを抱えた好配合馬なので、まだまだタイトルを上積みできるのではないかと思います。

 リアルインパクトは昨年まで社台スタリオンステーションに繋養されていましたが、今年から新冠の優駿スタリオンステーションに移動しました。シャトルで供用されたオーストラリアで、GIII勝ち馬とGIで2着した馬を出しており、可能性を感じさせます。

今週の血統注目馬は?

・5/23 フリーウェイS(3勝クラス・東京・芝1400m)

 東京芝1400mと相性がいい種牡馬はロードカナロア。連対率27.5%は、2011年以降、当コースで産駒が20走以上した109頭の種牡馬のなかで第1位。なおかつ、2位ローズキングダム(23.8%)に3ポイント以上の差をつけて断然トップです。

 当レースにはカヌメラビーチとペコリーノロマーノの2頭が登録しています。前者はグローリーヴェイズの半弟にあたる良血で、当コースで走った前走、昇級緒戦で7番人気だったにもかかわらず勝ち馬から0秒2差の4着と健闘しました。クラス2戦目の今回は楽しみです。

今週の血統Tips

 クロフネは息子と娘で産駒のキャラクターが違います。ザックリいえば、牡馬はダート中距離タイプ。牝馬は芝のスピードタイプ。

 これまでにクロフネ牝馬は、スリープレスナイトとカレンチャンがJRA賞最優秀短距離馬のタイトルを獲得し、ホエールキャプチャ、アエロリットが芝のマイルGIを制覇しています。

 もちろん例外もいますが、トップクラスのほとんどは芝のスピードタイプに出ています。オークスに断然人気で出走するであろうソダシはクロフネ牝馬。距離延びてどうか、という議論になるのは当然です。

 母ブチコはダート1800mがベストでした。その全弟シロニイは芝3000mの阪神大賞典で4着、芝3200mの松籟Sで4着という実績を残したステイヤーで、ソダシと4分の3同血(父が同じで母同士が親子)のユキチャンはダート2100mの関東オークスを制覇しました。スタミナ面には問題ない一族です。

 もし仮にスタミナに不安があるならば、2歳夏の新馬戦に芝1800mは選択しないでしょうし、同距離の札幌2歳Sにも向かわなかったでしょう。

 重箱の隅をつついて不安点を挙げるとすれば、ここ3戦、速いペースのマイル戦を走っていることでしょう。前走の桜花賞は800m通過45秒2の超ハイペース。ソダシはその3番手を追走しました。

 今回のオークスは2400m戦なので、ゆっくり走らなければなりません。鞍上の指示に従ってそれができるかどうか、でしょう。

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栗山求

netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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