拍手で迎える「競馬の祭典」

2021年05月20日(木) 12:00

 これを書いている5月19日、水曜日の午後、東京地方には雨が降っている。府中市の予報を見ると、木、金、土も傘マークがついており、オークスが行われる日曜日にようやくお日様マークが現れる。それでもピーカンではなく、「曇り時々晴れ」となっている。ただ、気温が26度ほどまで上がりそうなので、稍重からスタートして、昼ごろには良に回復する――という感じだろうか。

 真っ白なソダシが主役なので、やはり、青空をバックにした、綺麗な緑の芝の上でのレースになってほしい。

 先週から東京競馬場で有観客競馬が再開された。去年、初めて無観客競馬が行われてからしばらくは、「○週目の無観客競馬」と原稿に記すなどしていた。今はしかし、先々週のNHKマイルカップまでの無観客競馬が通算で何週目だったかも忘れてしまったし、有観客競馬の再開がいつ以来だったかも記憶がゴチャゴチャになってしまった。

 このところ、インド変異株の危険性が喧伝されているが、去年の今ごろは、「インドでコロナ感染者が少ないのはカレーを食べているからではないか」という噂がひろまり、カレー店に行列ができていたのではなかったか。

 ほかにも、BCGを接種している世代は感染しづらいとか、うがい薬がいいらしいとか、いろいろな話が出ては消えた。

 また、昨春、戦時中の無観客ダービーを学生時代に観戦したというジャーナリストの矢崎泰久さん(88)に、都内のカフェで話を聞いたときのことだった。矢崎さんは、「タバコを吸ってるとコロナにかかりにくいらしいよ」と笑い、『タバコ天国――素晴らしき不健康ライフ』(径書房)という著書をプレゼントしてくださった。タバコがコロナにいいということのエビデンスは、おそらく本人だけである。その店は禁煙だったので吸っていなかったが、サッとお腹にインスリンを注射し、大好きだというパンケーキを食べていた。

 コントレイルが勝った昨年のダービーは、矢崎さんが見た1944年のダービー以来、76年ぶり、2度目の無観客ダービーとなった。レースそのものは素晴らしかったが、やはり寂しかった。

 今年は制限付きではあるが、観客のいるところでの開催となってよかった。大歓声はなくても、数千人の拍手で勝者を迎える「競馬の祭典」というのがどんな空気感なのか、非常に興味がある。もともと、ダービーというのは、検量室前に戻ってきた勝ち馬を、他馬の関係者もマスコミ関係者も主催者もみな拍手で迎える特別なレースだ。そうした雰囲気も含めて「競馬の祭典」なのだと思う。

 本稿がアップされる5月20日、スポーツ誌「ナンバー」の競馬特集号が発売される。特集タイトルは「ウマい騎手ってなんだ? 〜日本ダービー直前競馬総力特集〜」である。私は「エフフォーリア&横山武史『無敗二冠へ、怖いものなし』」「松山弘平を変えた3頭の馬『勝てる騎手へのステップアップ』」「ジャングルポケット&角田晃一『師の執念を実らせた一発の鞭』」の3本を執筆した。

 表紙は、横山武史騎手を背にしたエフフォーリア、いや、騎手特集なのだから、エフフォーリアに乗る横山武史騎手、というべきなのか。ともかく、綺麗な写真である。

 この時期は毎日〆切があるのだが、あまりそれを言うと「忙しい自慢」としてウザがられるらしい。今「忙しい自慢」で検索してみると、「忙しいアピール」をする人の問題点を指摘するページがズラッと出てきた。「忙しいアピール」をする人への上手な対処法まで紹介されている。

「忙しいアピール」をする人の特徴や問題点は、「承認欲求が強い」「優越感が強い」「自分はできると思いたい」「見栄を張りたい」「実は逆に仕事ができない」「要領が悪い」「周囲への依存度が強い」など、言いたい放題である。

 で、そういう人への対処法は「真に受けない」「距離を置く」「なるべく関わらない」「もっと忙しい人の話をする」「褒めておだてる」など、こちらも笑ってしまうほどキツい。

 特徴や問題点は、どれもうっすらと自分に当てはまるような気がするし、対処法も、周りからそんなふうに扱われているような気がまったくしないわけではない。

 ともかく、世の中に「忙しい自慢」や「忙しいアピール」をする人を煙たがっている人がこんなにいる、ということだけは、知っておいたほうがよさそうだ。

 しかし、だからといって、「ああ暇だ〜」と言うと、売れていないと思われて損をしそうだし、いわゆる「かまってちゃん」だと思われるのも困る。

 つまり、「何も言うな」ということか。いや、人からどう見られようが気にしなければ、すべて解決するという、きわめてシンプルな事実に今気がついた。

 話は変わるが、去年の8月からつづけている発毛剤リアップが10本目に突入した。いつか、使用前・使用後の衝撃的な写真を紹介できる日を夢見て、治療にいそしみたい。

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島田明宏

作家。1964年札幌生まれ。Number、優駿、うまレターほかに寄稿。著書に『誰も書かなかった武豊 決断』『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』(2011年度JRA賞馬事文化賞受賞作)など多数。netkeiba初出の小説『絆〜走れ奇跡の子馬〜』が2017年にドラマ化された。最新刊は競馬ミステリーシリーズ第6弾『ブリーダーズ・ロマン』。プロフィールイラストはよしだみほ画伯。バナーのポートレート撮影は桂伸也カメラマン。

関連サイト:島田明宏Web事務所

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